米中の景気刺激策で相場上昇 日銀保有ETFの活用も
プロが直言 「骨太の方針」のインパクトと年後半の投資戦略(3)

――「骨太の方針」の注目点は。
「資産所得倍増プラン」です。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の抜本的な拡充で個人の投資を促す計画です。
具体的な内容の検討はこれからですが、今まで「貯蓄から投資へ」の旗を振っても動かなかった層を動かすには、大きなインセンティブが必要。一つの案として、日銀が保有するETF(上場投資信託)を格安で購入できるようにする施策が考えられます。

例えば、個人がNISA口座で日銀からETFを簿価で購入できる代わりに、65歳まで売却できない制限を設ける。こうすれば、「貯蓄から投資へ」と日銀のETFの出口戦略が一気に進みます。
また、海外投資家が日本株を敬遠する理由として、「日本人が買わない日本株をなぜ我々が買う必要があるのか」「日銀のETFがいつ売却されるか分からない」といった声を聞きます。こうした不満も解消できるので、海外投資家の買い需要も高まります。
――他の注目点は。
自民党の総合政策集「J-ファイル」にある政策ですが、国土強靭化や都市防災の推進に注目しています。1950~70年代に造られた都市部のインフラは老朽化が進み、その再構築は待ったなしの状況です。昨年の東京オリンピックで東京周辺は整備されましたが、その他の都市部はこれから。関連銘柄は恩恵が大きいでしょう。
米金融政策の転換に期待
――今後の相場見通しは。
年後半に米国と中国が共に景気刺激策を打つことで、世界的にリスクオンになるとみています。米国では大統領選挙の前年のGDP成長率がプラスにならないと再選が難しくなるので、今年の後半から景気刺激策を打つ必要があります。中国も秋の共産党大会に向けてゼロコロナ政策を終了し、景気浮揚に努めると考えられます。

――米国はインフレ懸念が残りますが。
米国のインフレ率はピークアウトし、過度な引き締め策は転換するとみています。それがリスクオンの合図になります。1回の利上げ幅を縮小するだけでなく、場合によってはインフレ目標自体を現在の2%から3%程度に引き上げるかもしれません。8月のジャクソンホール会議に注目です。
日経平均株価は来年3月に3万2000円が目標です。特に運輸をはじめとする観光関連が期待できます。
(聞き手は市田憲司)
[日経マネー2022年9月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2022/7/21)
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