住宅ローン金利、「我が家の最適」を考えてみる - 日本経済新聞
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住宅ローン金利、「我が家の最適」を考えてみる

FPキャスターのマネー手帳(5)

昨年12月、日銀が長期金利の変動幅の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げたことで、一部の住宅ローン金利が上昇しました。住宅ローン金利には固定金利型と変動金利型があり、金融機関が相次いで発表した金利の上げは主に固定金利型です。

低金利の時代が長く続いてきましたが、今後どうなっていくのか不安に思う方も少なくないのではないでしょうか。

固定と変動、金利はどう決まる?

ここで改めて住宅ローン金利の決まり方を確認しておきます。固定金利型は、10年物国債の利回りなど長期金利を基に決まります。昨年末、日銀が上限を引き上げたのは長期金利で、これを受け10年国債の利回りが上昇し、固定金利型が上がったという流れです。

一方、変動金利は日銀の政策金利の影響を受ける短期金利を基準に決まります。日銀がマイナス金利政策を継続しているため、変動金利型は歴史的な低水準の状態に据え置かれています。

従来以上に変動型の相対的な魅力が高まっている格好ですが、これから住宅ローンを組む人はどのような考え方で金利のタイプを選ぶべきでしょうか。

住宅ローンは返済期間が長く、その期間中、変動金利が低いままで推移するのかどうか予測することは専門家だとしても難しいことです。ですので、今回は、金利タイプはどう選べばいいのか、また変動型を選択し金利が上がったときのためにどのような備えが必要なのかなどについてポイントをいくつかお伝えできればと思います。

家計の許容度を見極める

住宅ローンを組む際、固定型よりも金利が低い変動型の方が魅力的に映ります。家計に余裕がない家庭ほど、同じ金額を借り入れた場合に毎月の返済額が小さくなる変動金利を選びたくなるかもしれません。ただし、現在の金利水準だけで考えるのは少々危険だと思います。

固定型にするのか変動型にするのかは、自身の家計が返済額の増加をどこまで許容できるかという観点で選択すべきだと考えます。

変動型を選択し金利が上がった場合、返済額は増えます。どれくらい増えるのでしょうか。3000万円借りた場合、毎月の返済額は下の図のようになります。

例えば、借入期間30年、0.5%で借りたとしましょう。金利が1%上昇し、1.5%になると月々の返済額は8万9756円から10万3536円に増え、1万3780円の負担増になります。金利が2.5%に上昇した場合は2万8780円の増額です。家計に影響はないでしょうか。

変動金利を選択するということは、金利の上昇リスクを負うということです。夫婦共働きで2人とも収入がある、または預金など手元資金がたくさんあるなど家計に余裕があれば支払額が増えても対応できるでしょう。

一方で家計に余裕がない世帯は、金利と毎月の返済額が一定の固定型を選びリスクを回避するほうがいいかもしれません。金利の変動パターンを想定し、返済額の増額にどれくらいまで耐えられるか具体的にシミュレーションすることは非常に大切です。

変動型なら金利上昇に備えて貯蓄を

ここで押さえておきたいのが、変動金利型には「5年ルール」と「125%ルール」があるということです。金利が上昇しても5年間は毎月の支払額が変わらず、また、返済額が増える場合は変更前の返済額の125%が上限となるというルールです。

金利が上昇しても返済額は急激に上昇しないようになっているということです。ただし、金利上昇分の返済が先送りされるだけで返済総額は増えることになります。また、多くの金融機関がこのルールを採用していますが、適用されない金融機関もありますので確認してみてください。

そして、金利の変動リスクを理解した上で変動金利型を選択した方は、固定金利で借りたつもりで変動との差額分を積み立てておくことをおすすめします。金利が上がったときの備えです。

固定金利の代表格であるフラット35の1月の金利が1.68〜3.27%ですので、わかりやすく2%、30年固定でローンを組んだとすると、月々の返済額は11万884円になります。変動金利は0.5%とすると、図のように毎月の支払額は8万9756円になります。

11万884円-8万9756円=2万1128円

この分を毎月積み立てていきます。5年ルールがあれば金利が上昇しても5年間は返済額が変わらないのでその期間積み立てるとして、5年後は126万7680円になっている計算です。金利が上昇し、約5年後に返済額が増えることになっても、積み立てた分を繰り上げ返済に回し借入残高を減らすことで家計への影響を小さくすることができます。

金利がそのままであれば積み立てを続け、金利の変動を見ながら5年おきに繰り上げ返済を検討するといいのではないかと思います。

ミックス型も選択肢に

さて、ここまで変動型か固定型かの話をしてきましたが、ローンの組み方はこの2択だけではありません。

例えば3000万円の借り入れをするとき、ローンを2本に分けて半分(1500万円)は固定金利、もう半分(1500万円)は変動金利を選ぶというミックスローンにして金利上昇のリスクを軽減する方法もあります。

また、3000万円のうち1000万円は返済期間10年で変動金利、残りの2000万円は30年固定というように返済期間の異なるローンを組み合わせるという方法もあります。

ローンを2本に分けるということは手数料が2本分かかるなどコストが増えるというデメリットがありますが、こういった選択肢も自身のライフプランに照らし合わせて考えてみるといいのではないでしょうか。

住宅ローンは金額が大きく、また長きにわたって家計やライフプランに影響を与えるものです。長らく、金利はゼロに近くこの状況がこの先も続くだろうという見方でした。そんな中で変動型の利用者は年々増え、現在は7割を超えています。

しかし、こういった常識が少し変わり始めたという声も聞かれます。実際のところどうなるかは分かりませんが、これまで以上に慎重にシミュレーションを行い、自分に最適なローンの組み方を考えること、そして変動型を選択する場合は金利上昇への備えをしっかりしていくことが大切です。

すでにローンを組まれている方も、現在のローンがご自身の家計やライフプランに合ったものであるのか、今一度検討してみるきっかけにしていただけたら幸いです。

有地佐哉香(ありち・さやか)
慶應義塾大学経済学部卒。富山テレビ放送にアナウンサーとして勤務後、「TBSニュースバード」のキャスターとして東証アローズからの場況中継を経験。その後、「TOKYO MXニュース」のキャスターを経て、2018年6月から「日経CNBC」キャスター。ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)。

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