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パートも厚生年金、iDeCoは使いやすく 変わる社会保障

2022年 マネーの世界の変化予想(4)

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2022年「マネーの世界の変化予想」、4つめは社会保障制度の変化です。中でも年金制度が見直され、100年人生の時代に対応した仕組みに変化していきます。

101人以上の会社で社会保険が適用拡大

雇用されたときの区切りとしてパート等の非正規社員として雇用されている人の多くは、勤務先の健康保険や厚生年金保険の対象となっていません。家族が加入している健康保険の扶養家族となったり、厚生年金に加入する人に扶養される第3号被保険者となったりして、自らは社会保険料を納めていません(独身者など自ら国民健康保険料、国民年金保険料を納める場合もある)。

年金については、厚生年金の適用の有無が老後の安心づくりにとって大きな差を生みます。その社会保険の適用拡大が22年10月に一歩前進します。現在は501人以上としている従業員数の規模の要件が101人以上となり、多くの人たちが対象に含まれるようになるからです(24年10月には51人以上まで拡大する予定)。

また、勤務期間は「継続して1年以上働く見込み」を適用の要件としていますが、これは2カ月超に短縮され「フルタイムに近い形で雇ったら、基本的には厚生年金に加入し会社も保険料負担をする」ということになります。

これによって、より多くの人が将来、厚生年金を受け取るチャンスを得られることになり、かつ保険料を納める担い手も増えることになります。一見すると、健康保険と厚生年金の保険料が負担増になる分、手取りの減少が気になりますが、トータルでは個人にプラスの多い改正といえます。

公的年金は人生100年時代へ対応し変化

公的年金制度は人生が100年続く時代へ適応しようとしています。

ひとつは「働きながら年金を受け取る」仕組みの修正です。公的年金の受給開始は65歳が標準となり、シニアの雇用が一般的になってきたことから60代前半の在職老齢年金について見直しが行われます。

興味深いのは、65歳以降の年金に関する改正です。22年4月に働きながら年金を受け取っている人の年金額が毎年改定に変わります。

現役世代にとって今納めている厚生年金保険料は、未来の年金額を増やす仕組みですが、65歳以降で年金をもらいつつ働いている人にとっては「今納めている厚生年金保険料は、今もらう自分の年金を増やす力」になっています。

今まではシステムの問題もあったのでしょう、仕事を辞めるまでは(あるいは70歳になるまでは)、年金額の増額が反映できなかったのですが、これからは定期的に(年1回)、年金額を見直すことになります。9月1日時点で働き続けている場合、10月分の年金(振り込みは12月)から増額される仕組みです。

また、年金を受け取る年齢を遅らせて、働くなどして年金額を増額する繰り下げ受給は、長寿社会を反映する形で上限年齢が70歳から75歳に拡大します。

65歳時点の年金水準を100とすると、70歳まで繰り下げれば142、75歳まで繰り下げると184の年金を受け取れる仕組みです。無年金の期間があるので、その間の生活の備えは必要ですが、平均寿命に近い長生きをすればほぼトントン、それ以上長生きすればするほどお得になる仕組みです。

年金をもらわなくても十分に収入がある、あるいは資産がある人は、繰り下げ受給を検討してみるといいでしょう。特に男性より長生きをする女性にメリットがあります。

どちらの改正も、人生100年時代を見据えて、シニア期の雇用と年金の関係を見直していくものです。

iDeCoの法改正も順次施行

確定拠出年金制度(DC、企業型と個人型=iDeCo)についても改正法が施行されます。人生100年時代への対応としての2つの改正に注目です。

4月からは、DCの受け取り開始年齢の上限が5年延長され「60歳~75歳になるまで」になります。公的年金が75歳まで繰り下げ受給できるようになることに合わせるわけです。

実は20年前にDCの法律が作られたときには「70歳まで受け取らないのは実質的には相続財産である(生きているうちに使うつもりがないから)」ため、70歳を受け取り年齢の上限としていました。100年人生の時代を国も受け止めて改正したことがわかります。

5月からはiDeCoに65歳まで加入できるようになります(企業型は70歳まで可能に。対応は各企業が判断)。こちらも、これまでは国民年金に保険料を納付するのが60歳まで、老後の備えはそれくらいまでという20年前の考え方が法律になっていたことが、今回改正される理由です。

65歳までのシニア雇用あるいはそれ以降も働ける社会の実現を、法律が後追いすることになりました。iDeCoに加入するには公的年金の保険料を納付していることが条件なので、会社員で60歳以降も働いている人や国民年金に任意加入している人がメーンターゲットになります。

また、10月からは企業型の確定拠出年金とiDeCoが同時加入可能となります。限度額は抑えられるものの、「会社の退職金制度として確定拠出年金に入っているのでiDeCoには加入できなかった」と気を落としていた人たちも自助努力で老後資産形成を行えることになるわけです。750万人近い会社員が対象となるとみられ、iDeCoの普及に期待が集まります。

老後を支える制度の手直しは続く

22年の年金改正は受給開始年齢の引き上げほど抜本的というわけではありません。しかし、パートの厚生年金適用拡大、公的年金の受け取り方の見直し、そしてiDeCoの改正が立て続けに行われ、いずれも私たちのマネープランに影響を及ぼします。

パートといえば退職金も厚生年金も無関係というイメージがありましたが、まずは厚生年金をもらえる老後が開かれます。特に単身者にとってはありがたい変化です。

公的年金制度は、働きながらもらう人も、あえてもらわず繰り下げる人も、仕事と年金のバランスを自分なりに考えて選択する時代に入ります。65歳だから年金をもらうという決まりはなく、自分で考えるのです。

そしてiDeCoの改正も、豊かな老後デザインのためにがんばる人にとってチャンスが膨らむ見直しとなります。

自分に影響がある制度改正を把握し、ぜひあなたのマネープランに組み入れてみてください。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp

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