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石油製品の需給 ガソリンや重油が原油価格に影響

キソから!投資アカデミー 商品④

原油は製油所で精製し、石油製品として使うケースがほとんどです。代表的なのは自動車に使うガソリンやストーブに入れる灯油などです。船舶や工場ボイラーは重油を燃料にします。ナフサ(粗製ガソリン)は石油化学製品の原料としても使われます。石油製品の需要構成は国や地域ごとに特性があり、原油の価格形成にも影響を与えています。

米国は世界最大の石油消費国で、世界需要の5分の1を占めています。米国の石油消費の4割がガソリンで、2021年時点で日量800万バレル程度です。米国のガソリン需要だけで、日本の石油需要の2倍超に相当します。

ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油はロシアのウクライナ侵攻による供給懸念から22年3月には一時、1バレル130ドル台まで急騰しました。その後は徐々に値を下げ、8月には80ドル台まで下落しました。

理由の一つとして挙げられるのが米国のガソリン需要の低迷です。米国ではドライブシーズンを迎える夏場に需要が伸びますが、22年は価格の高騰を受けて7〜8月のガソリン需要が21年同期と比べ1割ほど落ち込む局面がありました。

ガソリンに次ぐのが軽油やジェット燃料、暖房油を総称した「中間留分」で、米国の消費量は日量500万バレル程度です。軽油やジェット燃料は景気動向の影響を受けやすい特徴があります。暖房油は冬場に需要が増えます。22年末には米国を襲った記録的な寒波で暖房需要が増えるとの観測が広がり、原油価格上昇の要因となりました。

一方、日量1350万バレル程度の石油需要がある欧州は軽油の消費量がガソリンより多いのが特徴です。ガソリンに比べ燃費効率が高い軽油を使う自動車の普及率が高いためです。ガソリンの消費量は軽油の3割程度にすぎません。

では、石油製品の価格はどれくらいするのでしょうか。アジア指標のシンガポール相場で比較してみましょう。23年2月上旬で見ると、ジェット燃料や軽油はドバイ原油より1バレル20〜30ドル程度高くなっています。

脱炭素の流れが加速し、各国の精製能力は年々低下しています。ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する制裁措置が発動され、世界シェアの1割を占めていたロシア産石油製品の供給が減るとの懸念もあります。

一方、中国は新型コロナウイルスを封じ込めるゼロコロナ政策を撤廃し、経済活動の回復でガソリンやジェット燃料の需要が増えるとの観測が広がっています。国際エネルギー機関(IEA)によると、23年の世界の石油需要は過去最高になる見通しです。石油製品の需給逼迫への懸念は強く、原油相場にも大きく影響を与える可能性があります。

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