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日銀総裁、対ロ制裁でも金融システム揺るがず

総裁会見要旨

 本日の決定内容について。

 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の下での金融市場調節方針と、長期国債以外の資産の買い入れ方針の現状維持を決定した。コマーシャルペーパー(CP)や社債は3月末までは合計で約20兆円の残高を上限として買い入れる。4月以降は感染症拡大前と同程度のペースに落とし買い入れ残高を感染症拡大前の水準に徐々に戻していく。

我が国の景気の現状は感染症の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直していると判断した。物価は当面、プラス幅をはっきりと拡大していくと予想される。需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調的な物価上昇圧力は高まる。ウクライナ情勢が金融市場や資源価格、海外経済の動向等を通じて日本の経済・物価に及ぼす影響も極めて不確実性が高い。

 ウクライナ情勢の影響をどう想定しているのか。

 対ロシア制裁も含めさまざまな経路を通じて世界の経済物価動向に影響を及ぼす。第1にエネルギーや穀物、金属を中心に国際商品市況が大幅に上昇している。第2にロシア関連の貿易取引の縮小や、サプライチェーン(供給網)への悪影響が予想される。第3に金融市場における不安定な動きや先行きの不確実性の高まりは家計や企業の景況感悪化をもたらす可能性がある。

日本は資源の大半を輸入に頼り、当面は資源価格の上昇の影響が最も大きい。コストプッシュ型の物価上昇は企業収益悪化や家計の実質所得の減少を通じて景気の下押し要因として作用する。必需品の価格上昇が家計の支出意欲に悪影響を及ぼすことも考えられる。ロシアやウクライナとの貿易量は小さいため、貿易による直接的な影響は限定的だろう。ただ極めて不確実性が大きく、情勢を注視する。

 日本の物価上昇は望ましい形なのか。

 物価上昇要因としてはエネルギーや食料品など国際商品価格の上昇が非常に大きい。金融緩和で企業収益が大幅に拡大し賃金も上がり、新型コロナウイルスの下でも基調的な物価上昇要因が少しずつ上がっていた。急激な輸入物価上昇は資源輸入国の日本には好ましい物価上昇ではない。ただスタグフレーションの恐れが日米欧にあるとは思っていない。欧米も日本も潜在成長率をかなり上回る成長が続くとみられている。

 2%の物価上昇を見込んでも金融緩和を続けるのか。

 金融緩和による需要の増加を背景に、企業収益や賃金が上昇するなかで物価も基調として緩やかに上昇していく姿を目標としている。持続的な物価上昇をめざし、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることが適当だ。

物価上昇の大半が輸入価格で、金融を引き締める必要もないし適切でもない。予想物価上昇率や賃金の上昇がさらに物価の上昇をもたらす二次的な波及があれば金融政策の変更もあり得るが、日本はそういう状況に全くない。物価が2%程度になる可能性もあるが、現在の金融政策を修正する必要性を意味していない。

 物価上昇が期待インフレに与える影響は。

 短期の期待インフレは上がっているが、中長期の期待インフレは全然上がっていない。ただ少しずつ価格転嫁に前向きになっているという企業の声は聞かれる。

 賃上げ動向に関して春闘も含めた見解を。

 まだ春闘は終わっていないが、製造業を中心に大企業の賃上げはかなり高めだ。経済が基調的に回復してくる中で、企業収益も伸びている。全体の評価は時期尚早だと思うが、現状では比較的順調に賃上げが進んでいるとみている。

 円安をどう考えるか。

 為替はファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映し安定的に推移することが極めて重要だ。円安が経済・物価を押し上げ、日本経済にプラスに作用する基本は変わらない。ただ輸入物価の上昇が家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて、経済の下押し要因にもなり得るが、最近の輸入物価上昇は円安よりもドル建てでみた原油などの資源価格上昇の影響の方が圧倒的に大きい。

円安には輸出価格の上昇もある。(輸出品の)数量効果は最近は小さくなっているが、日本企業が本社に送金する海外収益の円建て金額は円安によって拡大する。安定的な推移のなかでの円安が経済・物価にプラスとなる基本的な構図は変わっていない。

 円安に対して日銀は対応できるのか。

 介入や外貨準備の運用など為替政策は財務省の権限であり責任だ。日銀が為替相場が上下するような政策をとる必要も権限もない。

 米国の利上げで円安が加速する可能性もある。

 金利差と為替相場の相関関係ははっきりしているわけではない。金利差が拡大したら直ちに円安になることもないし、日本が金利を上げる必要は全くない。日米欧の通貨の為替相場が安定的に推移しているのは、日米欧の中央銀行が2%の物価安定目標を掲げて金融政策を運営していることが一因とされている。

 前向きな循環メカニズムという表現が消えた。

 基調が変化しているとは思っていない。今後の中長期的な経済・物価の見通しについては、4月の展望リポートで示すことになる。ウクライナ情勢がどのように展開していくかは実際のところ見通しがたいところもある。ただ現時点で前向きの循環メカニズムが損なわれてしまったということではないと思っている。

 対ロシア制裁で世界の金融システムに変調が起きるリスクは。

 可能性は極めて低い。2014年のクリミア半島侵攻から日米欧とも金融機関が対ロシアのエクスポージャーを相当減らしている。ロシア国債がデフォルトする可能性はあるとは思うが、日米欧の金融システムに相応の影響があるとは思っていない。もはやロシアの金融システムと日米欧のシステムとは極めて縁が薄くなっている。

 賃金や物価が上がり日銀が政策変更を強いられる可能性は。

 それはちょっとなさそうだ。

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