黒田総裁、国債大量購入「特別なリスクない」 会見要旨 - 日本経済新聞
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黒田総裁、国債大量購入「特別なリスクない」 会見要旨

 今回の決定内容について。

 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の運用について現状維持を全員一致で決めた。また、貸出増加を支援するための資金供給の貸付実行期限を1年間延長する。気候変動対応オペの対象先を拡大し、共通担保オペを拡充することも決定した。

 物価の現状と見通しは。

 生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は3%台後半となっている。先行きは輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から高めの伸びとなった後、そうした影響の減衰に加え、政府のエネルギー対策の押し下げ効果もあり、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していく。

 「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」について。

 2022年度と23年度の成長率は政府の経済対策が押し上げに寄与するが、海外経済の下振れなどからやや下振れし、24年度も経済対策の効果の反動で下振れする。物価は22、23年度は経済対策がエネルギー価格を押し下げる一方、価格転嫁の影響もあり、おおむね変わらない。24年度は経済対策の反動から上振れする。

 金融緩和を継続する必要が本当にあるのか。

 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、来年度半ばにかけて2%を下回る水準までプラス幅を縮小していく。物価目標を持続的・安定的に達成できる状況が見通せるようになったとは考えていない。金融緩和を継続し、賃金上昇を伴う形で物価目標の実現を目指す考えだ。

 長期金利の上限を再拡大する必要はないか。

 10年物国債金利について0.5%の利回りで指し値オペを毎営業日実施している。経済合理性の観点から0.5%を超える利回りでの取引が継続的に行われることはない。今回拡充した共通担保オペも活用しながら、機動的な市場調節運営を行っていく。長期金利の変動幅をさらに拡大する必要があるとは考えていない。

 前回の変動幅拡大で市場機能は改善したか。

 前回の決定会合で長期金利の変動幅拡大と同時に、国債買い入れ額の大幅な増加や指し値オペを機動的に実施することを決めた。見直しからさほど時間がたっていないので影響を評価するには時間がかかるが、市場機能は改善するとみている。

 YCCの持続可能性は。

 新たな運営方針のもとで市場の金利形成が定着していくには相応の時間を要する。だが、機動的な市場調節運営により市場の機能度は高まっていく。YCCの持続可能性は十分担保される。

 共通担保オペを拡充した狙いは。

 金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促す手段として、より弾力的な資金供給を可能とするために拡充を決定した。オペを利用した金融機関が様々な裁定行動を行うことを通じて、現物国債の需給に直接的な影響を与えずに長めの金利の低下を促すことができる。

 共通担保オペの位置付けに変化は。

 金融政策のツールとしてもともとある。拡充したのはその通りだが、YCCの限界を示しているというようなことではない。むしろイールドカーブを適正にするための一つのツールとして使えるということだ。

 変動幅の拡大が金利上昇を招き、緩和効果を弱めたのか。

 緩和効果は実質金利で見る必要があるが、ずっと下がっており、緩和効果はむしろ大きくなっている。変動幅の拡大は債券市場の機能度を改善する観点から行ったが、必ずしもその趣旨が反映されていない面があったから市場調節の方法を拡充した。

 大手銀行の一部が住宅ローン金利を引き上げた。

 住宅ローン金利については前回会合以降、一部の金融機関で引き上げる動きも見られているが、住宅ローンの大半を占める変動金利型は適用金利に変化は生じていない。いずれにしても住宅ローン金利の動向やその影響は丹念に点検していく。

 国債の大量購入に問題はないか。

 国債購入額については、YCCのもとで従属変数としてそうなっているが、現在のような保有量の増加が何か特別なリスクがあるとは考えていない。ただ、特定の銘柄について需給が非常に逼迫すると問題なので、国債補完供給の条件緩和とか様々な措置を講じているし、大きな問題は生じていない。

 市場との対話に問題はないか。

 金融政策については非常にオープンに申し上げており、年に4回、展望リポートで経済・物価の見通しも示している。マーケットの人が色々な見方をするのは自然な話で、金融政策当局とマーケットが全く同じ考えでないといけないわけではない。日銀として緩和的な金融政策を維持することは申し上げてきており、市場が金融政策の変更を期待して動いていたのであれば、それは是正されたということだ。

 市場との対話を改める気はないか。

 次回の会合で何をするか、事前に市場に対して話すことはどこの国の中銀もしていない。全ての中銀は、経済・物価の見通しを示しつつ、どういう金融政策運営をするかの方向を示しているだけだ。

 YCCの操作対象の短期化の可能性は。

 国際通貨基金(IMF)が一時、短い国債の金利をターゲットにするのが望ましいと言ったが、日銀としては短期の政策金利と最も代表的な長期金利である10年債の金利をターゲットにしてイールドカーブを適切な形に維持するのが最も適切だと思っている。一切いかなる変更も検討しないわけではないが、今のYCCはそういった考え方に基づいてしている。

 金利上昇で銀行に含み損が出ている。

 金融機関が海外金利の大幅な上昇で有価証券ポートフォリオの評価損が拡大しているのは事実だが、十分な自己資本を持っている。金融仲介機能や金融システムへの影響は限定的とみている。あまり心配していないが、丁寧にモニタリングしていきたい。

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