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FIREをものにする資産運用 リスク取り過ぎは致命傷

日本版FIREを考える(4)

今月はFIRE(Financial Independence, Retire Early)というキーワードを取り上げています。経済的な独立と早期リタイアという困難にも思えるチャレンジを実現するために欠かせないのは、やはり「資産運用」というリスクテークです。

ハイリスク投資が報われれば一気に近づける

FIREという壮大な夢を実現するためには、しっかり稼ぎ、できるだけ多くの収入を得ること、そして節約と無駄のない消費によって収入の多くを資産形成に回すことが欠かせません。

しかしもう一つのステップも重要です。一般的にFIRE関連書籍が取り上げるのは「資産運用」です。つまり資産の利回りを向上させる試みです。

しっかり稼ぎ、かつ堅実に節約して「月10万円・20年」の積み立てをしたとします。20年後には元本として2400万円が積み上がりますが、これではFIREには及びません。

このとき、年12%で回すことができれば約1億円弱になります。年12%というのは正直かなりリスキーな運用方法となりますが、高い利回りを実現すれば元本の倍以上に資産を増やすことができます。とはいえ、高いリスクも抱え込むことになります。

どこまでリスクを取れるか それはあなたの能力次第

基本的に高いリターンを獲得しようとするなら、高いリスクを受け入れる必要があります(このような説明を省いたり、リスクは存在しないと説明したりするような金融商品は詐欺の類いなので注意してください)。運用はリスクとリターンのバランスを慎重に判断し、決断する必要があります。

そして、高いリスクが必ずしも高いリターンをもたらすわけではなく、失敗すると致命的な損失となることもあります。「ハイリスク=ハイリターン」ではないわけです。リーマン・ショック後の株式市場はおおむね右肩上がりですから、FIREチャレンジャーはしばしばリスクを過小評価しています。

また、外国為替証拠金(FX)取引やビットコイン相場などレバレッジをかけた投資の失敗、単一資産に高額をつぎ込んだ場合の失敗(不動産投資や個別株への集中投資)などは、一歩コースアウトするといきなり資産が減少し、ゴールから遠ざかります。

どれくらいのリスクを取るのか、そのリスクを理解しているのか、適切な管理が自分には可能なのか、真剣に考えてみてください(売り手がコントロール可能だというのはセールストークなので当然です)。基本的にリスクの取り過ぎはおすすめしません。

インデックスの利回りなら誰でも確実に取れる

FIREが一部の意識が高い人たちのものにとどまるのであれば、高リスク商品に自分の才覚と責任でチャレンジするのもよいでしょう。リスクの高さをさておけば、高いリターンの可能性は確かに存在します。

しかし、より多くの人々がFIREへのチャレンジを志すのであれば、インデックス運用を活用し、確実に市場全体の平均リターンを獲得するほうがいいと思います。

たとえば、毎月同額の積み立てで分散投資(国内外の債券・株式へ4分の1ずつ)を20年行ったというモデルを過去にさかのぼって検証したところ、どの期間であっても元本割れすることはありませんでした。むしろ約60%の確率で年4~6%の収益率に収まっています(金融庁つみたてNISA資料などから)。

このリターンを獲得する方法は簡単です。「国内外に分散投資する投資信託などを、毎月自動的に積み立て購入し、中断をせず継続する」という仕掛けをスタートさせるだけですみます。投資の負担(毎日株価をウオッチするなど)はほとんどありません。

また、インデックス投資が有用なのは、仕事に集中して生産性を高める「リターン」に集中できることです。個別銘柄選びや株価の分析をする時間を減らし、例えば国家資格の取得の勉強に充てるなどの方が、キャリアアップによる長期的なリターン獲得に寄与します。あるいはオフタイムを休息に使うことで、仕事に集中する活力を養うことも本業でのパフォーマンスを高めます。

ここ数年、インデックス投資のコストは大きく下がり、余計にメリットが高まっています。何せ年0.2%程度のコストで世界中の株式市場へ分散投資ができるのですから、これを利用してFIREにチャレンジする方が合理性は高いように思われます。

ゴールのために目標リターンを設定しないこと

今回はFIREの運用方法として、高利回り獲得を目指すシナリオと、標準的な分散投資モデルの利回り獲得を目指すシナリオを提示しましたが、気をつけるべきは「ゴールのための利回り設定」をしないことです。「シミュレーション上、X歳のFIRE実現のためには年10%が必要だから、10%稼げる投資方法を探そう」と考えることがありますがこれは本末転倒です。

投資理解度も浅いのに、高リスク商品に手を出す人がしばしばいますが、これは目標利回りの設定に自分自身のリスク許容度を加味していないことから起こるミスです。

また、私たちはおおむねオーバーコンフィデンス(自信過剰)の状態にあることも考慮すべきです。投資をするとき「自分はうまくいかない」と考えている人はいないので、リスク評価は意図的に厳しめに行うくらいがいいでしょう。

FIREを目指す試みはマネープラン上きわめて前向きな取り組みですし、資産運用の力を借りることも間違っているわけではありません。自分自身がどれくらいリスクテークできるのか、またしてもいいと考えているのか、しっかり考えたうえで、資産運用と向かい合ってみてください。

 ◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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