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予想される市場の変化とブレ それでもやることは同じ

積立王子への道(45)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

コロナ禍での適温相場環境は終わる

2022年は「アフターコロナ社会」の本格的幕開けになるだろう。昨年までの新型コロナウイルス禍を前提とした適温相場環境、すなわち先進主要国挙げての財政支出と金融緩和政策によってもたらされた金利の低位安定――は終焉に向かっている。

この先はまずテーパリング(量的緩和の段階的縮小)の早期完了、そして間をおかず利上げの実施、さらには中央銀行のバランスシート圧縮へと米国の金融政策が抜本的に大転換するだろう。欧州も同様だ。今年は年間を通じて金融政策の動向に一喜一憂して、世界の株式市場が乱高下する可能性が高そうだ。また米欧ともに物価が上昇しインフレ高進懸念が高まっている。長期金利がインフレ率へ収れんして上昇軌道を描く可能性も小さくない。

実体経済が回復すれば金利は上がる

実体経済はといえば、コロナ後の経済回復基調が定着するかにかかっている。変異型「オミクロン型」の感染拡大が収束して、3回目のワクチン接種と飲み薬の治療薬が普及していけば、コロナはインフルエンザのような通常のはやり病へと収まっていくだろう。そうなれば海外渡航や旅行・レジャーの需要も以前の水準に向けてきっと急回復する。景気回復が加速し順調に拡大する兆しが見えれば、株価は値動きこそ大きくなっても下値は底堅く推移するはずだ。金利上昇も一定範囲に収まれば、債券市場から株式市場への資金シフトにつながる。こうした資金フローはセオリー通りの健全な金融市場のメカニズムが回復することを意味し、悪いことではない。

「前提」の変化に適応できるか?

とはいえ別の懸念もある。長期間、超低金利環境に慣れ過ぎてしまった我々全員、金融界だけでなく産業界も生活者も、金利上昇という環境変化に冷静に対応できるかどうかだ。リーマン・ショック以来、10年超にわたる超低金利政策が続いた。その間、低金利だからと安易に負債を増やした企業は金利上昇による利払い負担増に耐えられるだろうか? あるいは、個人も住宅ローン金利が上昇することで生活が圧迫され消費減退につながらないか? 金利上昇が結果として実体経済活動をシュリンクさせてしまうリスクも考慮せざるを得ない。

このように足元の金融環境は大きく変わる転換の1年となろうが、何度も言っている通り、長期投資家はこうした環境変化に決して動ずることなく、相場が上がっても下がっても泰然自若と投資行動を変えないことが大切だ。

コロナ禍はより普遍的な変化をもたらした

その理由がいろはちゃんの関心事、20~30年後の将来社会への洞察だ。コロナ禍は景気後退を招いただけでなく、より大きな社会活動に対する価値観の転換を後押しした。マネー資本主義、つまり過剰なまでの短期利益至上主義への反省だ。もうけた者勝ちの弱肉強食経済が生み出した格差や人権問題、あるいは環境破壊や天然資源の枯渇……。人類だけでなく地球そのものの存続を危うくする行き過ぎへの懸念が世界全体で認識され、是正の必要性が共有され始めた。この持続可能性に力点を置く新たなイデオロギーは、これからの長い期間にわたって普遍的な価値観になるだろう。この課題への地球規模での取り組みは、数十年先の経済社会の構築に向けて新たな成長軌道の源泉になるに違いない。だから積立王子と呼ばれる私は楽観的に捉えているんだ。このテーマは改めて深く話をしていこう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会副会長。積み立てによる長期投資を広く説き続け「積立王子」と呼ばれる。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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