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「利上げ7回」の誤解、FOMC内部亀裂が鮮明

16日は引け前に米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見が開催されたので、市場も騒然とした雰囲気の中で一日の取引を終えた。そして17日。時間の経過とともに市場の吟味も進んだ。

改めてドットチャート(FOMC参加者の金利予測分布を示す)を見ると、まず、前回(2021年12月)に比べ、明らかに、長細くなり、予測値が大きく割れている。

まず、2022年利上げ回数の予測値と人数をまとめてみた。

5回1人、6回3人、7回5人、8回2人、9回3人、10回1人、12回1人、となる。(1回0.25%刻みで回数を計算しており、0.5%刻みだと2回分となる)。ちなみに前回は、1回1人、2回2人、3回10人、4回2人であった。

わずか3か月で、これほどまでに予測値の水準が様変わりになったことに驚く. 当然ながら米国のインフレ率急騰を映す現象だ。

次に、2022年7回予測が中心値といっても、16人中、5人にすぎない。

FOMC内部の見解は、かくも割れているのだ。

しかし、メディアでは利上げ7回が強調され見出しになるので、市場は、これがFOMCのコンセンサスと誤解してしまう。

ウォール街では、このドットチャートに示される各ドット(点)が誰か、当て推量ゲームが人気だ。まず、1票を持つパウエル議長は、中庸派ゆえ、7回説が妥当か。

ブレイナード副議長候補(議会承認待ち)は、超ハト派であったが、議会公聴会では、指名したバイデン大統領を意識してか、インフレ退治に全力と語っていたので、本音は5回でも、書き入れたのは7回ではないか、と言われる。

その他、有力なハト派のウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁と、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁は、穏健に6回か。デイリー氏は、まず3月、5月、6月3回利上げ後、点検するとの意見を述べていた。そうなると5回は誰だ、となるが、この隠れハト派は謎の存在だ。

対してタカ派では、なんといっても、利上げは0.5%刻みという反対意見が記されたブラード・セントルイス連銀総裁が、10回あるいは11回ではないか。

次に、メスター・クリーブランド連銀総裁とジョージ・カンザスシティー連銀総裁が8ないし9回程度か。ボスティック・アトランタ連銀総裁は8回か。ただ、メスター氏は、3回利上げして、資産圧縮による引き締め効果も加味したうえで、追加利上げを決めたいとの意向も示していた。

さらにウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事は、3月0.5%利上げ議論を望むとも発言して注目されていた。

結局、同氏の0.5%の反対意見は記されていないが、10回、ないし11回と書き入れた可能性はある。

かくして、これまでの発言録を読み直しながら、当て推量されている。

それにしても、パウエル氏が、これほどまでに割れる見解をいかに調整してゆくのか。容易ではあるまい。ブラード氏は「最後はパウエル氏に一任する」と殊勝なことを言っていたが、反旗を翻した。

FRB周辺では、インフレ対応が遅れたと批判され、FOMC内部では、調整に手間取り、なかなかにご苦労なお役目ではある。誰がなっても、未体験ゾーンでの海図なき航海のごとき現在の金融政策ナビゲートは難しかろう。ご同情申しあげる。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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