なぜあの会社は儲かるか ビジネスモデルを知って投資

株価は長期的な企業価値を反映するもの。日本経済全体が縮小する中で伸びる企業を探すには、「ビジネスモデル」の分析眼が必要だ。
収益の源泉は何か、市場環境はどうか、競合他社との違いは――。決算説明資料や公式サイトなどをしっかりと深読みしていけば、その企業の「儲ける仕組み」が見えてくる。ビジネスモデルを理解すれば、好業績企業がなぜ好調なのか、その好調は長続きするものなのかを、根拠を持って予測できるようになるのだ。
日経マネー23年3月号では、ビジネスモデルを分析する目を養うために、業績が好調で、儲かる仕組みがやや特殊な8社に焦点を当てた。
なぜ入居率99.9%を続けられるのか
例えば、運営する賃貸住宅が長期にわたり、入居率約99.9%という驚きの数字を出し続けている企業がジェイ・エス・ビー。物件数が少ないわけではなく、毎年新たな物件を増やし続けているのに、それでも常時満室に近い状態なのだ。「物件が運営当初から満室になるのは、当社としては当たり前のこと」と同社取締役の林健児氏は自信たっぷりにコメントする。
実は、同社の賃貸住宅の特色は「学生専用」であることで、それが常時満室の理由でもある。一見すると、「子供が減っているのに、ターゲットを学生に絞ることが好調の理由?」と、むしろ疑問に感じるかもしれない。しかし、そこには納得できる理由がある。

学生専用であることの意外なメリットの一つが、「学生はほぼ、退去する時期が読める」という点だ。「推薦入試やAO入試などで進学先の決定が早い学生もいるが、当社はそうした学生向けに秋の時点で営業を始められる。学生専用でなければ4月に部屋が空くかどうかは分からず、その時期は完全にブルーオーシャン市場」(林氏)
コロナ禍で企業向け研修ビジネスが伸びた理由
また例えば、従業員向けの研修を請け負う事業で急成長中の会社がインソースだ。研修が激減したはずのコロナ禍でむしろ成長が加速し、老舗大手を短期間で抜いて業界2位に浮上する見込みだ。取材してみると、従来の研修業界が抱えていた構造問題を、同社が新しいアプローチで解決していることが分かる。それは「講師と教材作成の完全分業」だ。「当社の特長は、研修業を『コンテンツビジネス』に変えたことです」(舟橋孝之社長)
「従来の研修業は、実質的に『講師派遣業』。やりたい研修に合わせて専門の講師を探す形式です」。教材は講師が自作するため、教材づくりに時間を取られ、登壇回数は限られる。優れた教材があっても、別の講師が使うことはできない。
対するインソースは教材を作成するチームと講師が完全に分業制で、得意な仕事に専念できる。話の上手な人気講師は年200回でも登壇でき、ニーズの高い研修は同じ教材で多数の講師が稼働可能。結果として講師の人件費高騰は抑えられ、売り上げも最大化できる。専門チーム方式は教材の質も上がり、それがコロナ禍にむしろ急成長できた理由にもなっている。

多くの企業のビジネスモデルを理解すれば、あなたの視野は確実に広がり、「投資力」が上がっているはずだ。日経マネー23年3月号では上記の2社の詳細に加えて、ユニークなビジネスモデルを持つ8社を分析している。他の顔ぶれはKeePer技研、BuySell Technologies、NexTone、メドピア、SHIFT、Recovery Internationalだ。
(臼田正彦)
[日経マネー2023年3月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2023/1/20)
価格 : 800円(税込み)
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