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ウクライナ危機で新潮流 浮上する6つの投資テーマ

ニューノーマル相場に勝つ(中)

ロシアのウクライナ侵攻が収束した後もニューノーマル(新常態)が続く可能性がある株式市場。そこで求められる投資のあり方を探るシリーズの2回目は、新たな潮流になりそうな6つの投資テーマを取り上げる。

ウクライナ危機は世界経済に大小様々な影響を及ぼしている。中には、これまでの常識がひっくり返る「ゲームチェンジ」が起きる分野があるかもしれない。こうした変化は、株式投資にとっては大きなチャンスになり得る。ウクライナ危機で浮上した6つのテーマに注目しよう。

最初のテーマは「インフレ」だ。ロシアからの輸入制限によって、資源・エネルギー価格が急上昇。サプライチェーン(供給網)の混乱が生じるリスクも高まり、世界的にインフレ傾向が続く公算が大きくなっている。長くデフレに苦しんだ日本だが、いよいよインフレ下で強い企業が主役になるかもしれない。

3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比で0.8%上昇し、約2年ぶりの高い伸びになった。4月には日銀の目標である2%に迫るとの見方も多い。「バブル崩壊以来、日本が初めてインフレに直面するという意味で大きな転換点を迎えた」(エフピーアイ代表取締役の藤ノ井俊樹さん)

インフレで株価上昇が期待できる業種として、株式投資のプロたちは資源、金融、不動産などを挙げる。株式アナリストの鈴木一之さんは、「業種全体が上昇する局面では、時価総額の小さい銘柄が大きく値上がりしやすい」と補足する。

2つ目のテーマは「円安」。資源価格の上昇で日本の貿易赤字が拡大。さらに、日米の金融政策の差から長期的な円安・ドル高が続く可能性がある。輸出企業をはじめ、円安で輝く企業が有望だ。

円安の恩恵を受けるのはどんな銘柄か。まずは、海外売上高比率が高く、業績が好調な銘柄が候補になる。ただ、今回は原材料価格も大きく上昇しているため、コスト高の悪影響が大きい銘柄は利益が伸びない可能性もある。

エフピーアイの藤ノ井さんは「高いブランド力や圧倒的なシェアを持ち、製品の値上げができる銘柄を選ぶのが得策」と指摘する。海外売上高比率が高い銘柄のうち、12月期決算の銘柄に着目する声もある。円安が進む前に今期の業績予想を発表したため、想定為替レートが実勢よりも大幅に円高になっている銘柄があるからだ。

見逃せないのはインバウンド関連。入国が解禁されれば大きな恩恵が見込める。証券アナリストの宇野沢茂樹さんは「コロナ禍の苦境期に構造改革を進めた銘柄が有望」と語る。

オンショアリングの狙い目は2つ

3つ目のテーマは「オンショアリング」。ウクライナ危機で、海外に依存するリスクが露呈した。2022年3月、欧米や日本は半導体や工作機械の輸出を停止し、4月にロシア産製品の輸入も禁止した。これを受けて、工場が国内回帰する形のオンショアリングが進むとの見方も出ている。

中国の人件費高騰やコロナ禍のサプライチェーンの混乱も、その動きを後押ししそうだ。恩恵を受ける注目銘柄は、2つある。1つ目は、設備投資の強化で恩恵を受ける企業。2つ目は国内で今後需要が増える分野の関連銘柄だ。

4つ目のテーマは「安全保障」。ウクライナ危機を機に、防衛費を大幅増額する議論が高まっており、関連産業には追い風になる。サイバー攻撃の増加で、サイバーセキュリティーの強化も必須だ。

「ロシアによるサイバー攻撃の懸念が高まっているが、以前から日本の情報セキュリティーの脆弱性は指摘されてきた」とマーケット・キャスターの叶内文子さんは話す。今年に入っても、取引先の部品メーカーがサイバー攻撃を受けたトヨタ自動車が、国内工場の稼働の停止を余儀なくされた。

5つ目のテーマは「」。2021年から起きていた食品の値上げ。北米や欧州で続いた天候不順に加え、コロナ禍でサプライチェーンが混乱したことが原因だ。日本でも様々な食品の値上げが発表されている。

そこに起きたロシアによるウクライナへの軍事侵攻。欧州連合(EU)と日本などによる経済制裁と、それを受けたロシアの対抗措置とで、食品の流通に大きな変化が生じた。ロシアやウクライナに依存する1次産品の価格はさらに高騰。「食の安全保障」がささやかれるようになり、有事で食料を確保する重要性が浮き彫りになった。

価格決定力を持つ企業が有力に

とりわけ食料自給率が37%(20年度、農林水産省発表。カロリーベース)と低い日本にとって、食料自給率の向上につながる技術や製品を有する企業の注目度が高まることは想像に難くない。特にインフレ下では、仕入れ価格の上昇分を販売価格に転嫁できる価格決定力を持つ企業が有力だ。

もう一つの注目点は農薬関連の銘柄だ。各国で穀物などを増産する動きが見られ、農薬の需要は世界的に増加すると予測されている。一気に注目度が高まりそうだ。

また可処分所得の減少で、6つ目のテーマとして「生活防衛」も意識されそうだ。低価格品が充実している小売りが消費者の支持を集めそうだ。

エネルギー価格の上昇はここから本格化するとの指摘もある。さらなる光熱費増が見通せるのならば、省エネ家電への買い替え需要も期待できるだろう。家電の買い替えを促進してきた「家電エコポイント制度」の創設から10年余りがたち、新たな買い替え需要も発生しそうだ。

一方、支出増が避けられないのなら、収入を増やす、つまり共働きに移行する世帯が今以上に増えるとの見方もある。保育関連にも注目だ。

(市田憲司、佐藤由紀子、大松佳代)

[日経マネー2022年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年7月号 ウクライナ危機後も続く ニューノーマル相場に勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/5/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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