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物価基調、過去20年で最高 日銀が認識を微修正

刈り込み平均1.8%上昇、企業と家計の取引環境に変化

(更新)
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物価の基調が上昇している。日銀が23日発表した7月の消費者物価指数(CPI)の「刈り込み平均値」は前年同月比1.8%上昇し、データが遡れる2001年以降の約20年間で過去最高となった。CPIの上昇率と下落率の上位品目を除いた基本的な方向性を示すことから、値上げ品目の広がりを映している。足元の物価上昇が長引くとの予想が消費者の間でも強まってきており、日銀もインフレの評価の修正に動きつつある。

総務省が19日に発表した生鮮食品を除くコアCPIは2.4%上昇し、日銀の物価目標2%を4カ月連続で超えた。日銀は物価の基調を正確につかむため、コアCPIのほかに刈り込み平均値や加重中央値、最頻値といった指標を独自に算出して政策判断の材料にしている。

刈り込み平均値は上昇率と下落率の上位10%の品目を除いて算出する。加重中央値は上昇率の高い品目の順に並べ、上から品目のウエートを足していったときに50%近辺に位置する値、最頻値は品目数が最も多い上昇率を指す。

7月の最頻値の上昇率は0.7%と過去最高だった。加重中央値は0.3%と6月(0.5%)からやや減速したが、6月に過去最高だった。

需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」は22年1~3月期でマイナス3.6%だった。年換算で20兆円の需要不足にもかかわらず物価の基調が上昇しているのは、過去22年間でみられなかったほど幅広い品目で値上げが進み、品目の価格変化の分布全体が上昇方向にシフトしているためだ。

みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏は「資源高や円安、サプライチェーン(供給網)の回復の遅れといった複合要因が背景にある。輸入価格の高騰で企業は値上げに動かざるを得ず、当面は高い状態が続く」との見方を示す。

日銀の6月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、販売価格について「上昇」と回答した企業の割合から「下落」の割合を引いた「販売価格判断指数(DI)」は大企業製造業で10ポイント上昇のプラス34と、1980年5月以来の高水準だった。食品や飲料などに加え、家事雑貨などにも値上げが広がっている。これまで値上げをためらってきた企業も「他社が値上げに動けば上げやすくなる側面もある」(第一生命経済研究所の新家義貴氏)。

企業にとって値上げは「需要減につながる」のが一般的な認識だが、変わりつつある。食用油最大手の日清オイリオグループは食用油を中心に値上げを複数回進めてきたが、2022年4~6月期の連結決算では純利益が前年同期比56%増の43億円だった。デフレに慣れた消費マインドが変化してきた可能性がある。

企業と家計は物価高が長引くとの予想を強めている。6月短観では、企業の3年後の物価見通しが全規模全産業で前年比2.0%上昇となり、調査を始めた14年以降で最高。日銀の生活意識調査では個人の5年後の物価見通し(中央値)が5.0%上昇と、データを遡れる06年6月以降の最高値(08年6月、9月調査の5.0%)に並んだ。

大和証券の岩下真理氏は「値上げ報道が増えたことなどで消費者の物価予想にも徐々に変化が起きており、価格転嫁を避けてきた企業も値上げに踏み切りやすい環境に変わりつつある」と話す。企業と家計の取引環境は新たな局面を迎えようとしている。

政府も価格転嫁しやすい環境整備に取り組む。経済産業省は5月、下請けの原材料高などを考慮して価格改定の交渉に応じるよう発注企業に求める方針を発表した。岸田文雄首相も21年末に「地域経済の雇用を支える中小企業が適切に価格転嫁を行い、適正な利益を得られるよう環境整備を行っていく」と述べた。

物価の変化には賃金が大きく影響する。22年度の最低賃金の目安は全国平均で31円引き上げと、過去最大の上げ幅になった。ただ賃上げが十分に進まなければ家計が物価高で消費を抑え「企業が再び価格引き下げを迫られる可能性がある」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との見方もある。

日銀は物価の見方について表現を微修正している。人々のインフレ予想は「短期を中心に上昇」と評価していたが7月に表現を変更し、中長期でも上昇している認識を示した。物価上昇の要因についても、値上げ品目の広がりを反映するように見方を軌道修正している。4月には「エネルギー価格上昇の影響」としていたが、6月には食料品の影響、7月には耐久財の影響もあると要因を追加している。

(本多史、小野沢健一、秋田咲)

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