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有事相場が常態化する? ウクライナ危機後のシナリオ

ニューノーマル相場に勝つ(上)

ロシアのウクライナ侵攻で世界の経済と市場は様変わりした。ロシアの蛮行を非難して経済制裁を科す日米欧諸国と、ロシアやロシアの侵攻を黙認する国々との溝が深まっている。侵攻が収束しても世界はそれ以前の姿には戻らず、侵攻後に立ち現れた姿が「ニューノーマル(新たな常態)」として定着するという見方も出ている。ニューノーマルの世界ではどのような投資が求められるのか、3回連載で紹介する。今回は識者の見解をまとめた。

2月に起きたロシアのウクライナ侵攻で世界の秩序が覆り始めた。それまでの世界では、1989年の冷戦の終結をきっかけにグローバリゼーションが進展。国家間の交易が盛んになり、ヒトやモノ、マネーが国境を越えて行き交うようになった。先進国では様々な作業を労働コストの低い国にアウトソーシングするオフショアリング(業務の海外委託)が拡大した。

2020年に新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が起きてヒトやモノの往来がストップしたが、ワクチンの接種が広がって経済の正常化へ向けた動きが進んでいた。その矢先に起きた今回の危機。ロシアの侵攻を非難して経済制裁を科す日米欧諸国と、ロシアと同国の侵攻を黙認する中国などの対立が鮮明となり、新たな冷戦の様相を呈し始めている。

この危機でサプライチェーン(供給網)の混乱や資源価格の高騰を背景とした世界的なインフレに拍車がかかり、世界の経済や市場を揺るがしている。危機が収束するメドが立たない中、グローバリゼーションが逆回転し始め、危機が終わっても世界は元の姿には戻らずに様変わりした状態が続くという観測も浮上している。

そこで、日経マネー編集部はウクライナ危機を受けて今後現実のものになる可能性のある10のシナリオを作成。7人の識者に実現の可能性を「YES」「NO」の2択で判定してもらった。回答結果は以下の表の通りだ。

「脱グローバリゼーション」で全員一致

日経マネー2022年7月号(5月20日発売)では、回答の背景にある識者の見解や、回答が現実のものとなった場合に新たな投資妙味が生じる業種・銘柄を詳しく紹介している。ここでは、1番目と2番目のシナリオについての回答の概要を披露しよう。

1つ目のシナリオは「ロシアのウクライナ侵攻が終結しても、それをきっかけに始まった脱グローバリゼーションの波は止まらずに広がる」。これに対し、7人全員が「YES」と回答した。

冷戦が終結して、国家間の交易や相互依存が深まり、国や地域の垣根を越えてヒト・モノ・マネーが行き交うようになった。そして、グローバル化した世界を前提にビジネスを展開することが大企業に限らず、中小企業にとっても普通のことになってきていた。

こうした世界が後戻りしようとしている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘さんは「世界のグローバル化は平和と国際協調体制が前提であり、今回のロシア軍によるウクライナ侵攻は、根底から秩序を崩壊させてしまった」と回答。他の6人も共通の認識を持ち、脱グローバリゼーションの流れは加速するとみている。

2つ目のシナリオは「オフショアリングに代わりオンショアリングが注目を集め、日本の製造業が復活する」。業務の海外移転、いわゆる「オフショアリング」はグローバル化とともに進展した。しかしウクライナ危機をきっかけに、オフショアリングに代わって、業務が国内に回帰する「オンショアリング」が進むとの見方が出ている。

ではオンショアリングが現実となり、日本の製造業が復活するのか。7人の答えはそろって「NO」。進行する円安に伴うコストの増加や日本企業の生産性の低さから、全面的な国内回帰には否定的だ。

ただし「一部では製造業が復活する」という見方もある。「米中貿易摩擦がいまだ横たわる。また経済安全保障に関する意識も強まり、今は生産拠点の在り方を見直しているさなか。全体で見ればNOだが、一部では復活もあるだろう」(ピクテ投信投資顧問の糸島孝俊さん)

この他、脱グローバリゼーションによるブロック経済圏で体制を再構築するため、海外で生産拠点を新設する可能性もあり、工作用機械や産業用ロボットは恩恵を受けるとの意見もあった。

(佐藤由紀子)

日経マネー 2022年7月号 ウクライナ危機後も続く ニューノーマル相場に勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/5/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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