/

鈍い需要、日銀「慢性緩和」に限界 経済の構造改革急務

金融政策決定会合を終えて記者会見する日銀の黒田東彦総裁(18日、日銀本店)

日銀の金融緩和政策の出口が見えない。米連邦準備理事会(FRB)は2023年の利上げを視野に入れる一方、日銀は新型コロナウイルスの収束後も大規模緩和を粘り強く続ける構えだ。低成長の日本は物価の伸びも鈍いままで、慢性的な金融緩和策の限界が浮かぶ。

日銀は18日の金融政策決定会合で、コロナ対応の資金繰り支援策を22年3月末まで半年間延長することを決めた。延長は3度目。コロナ対応融資を手掛ける金融機関への資金供給と、コマーシャルペーパー(CP)や社債を計20兆円を上限に買い入れる措置を継続する。

黒田東彦総裁は会合後の記者会見で「対面型サービスを中心に売り上げ減などによる資金繰りの厳しさがまだ残っている」と説明した。足元の物価上昇の弱さを念頭に「コロナが収束した後も2%の物価安定目標の実現を目指して金融緩和を当分続ける必要がある」と強調した。

緩和の出口が見えない日銀に対し、先進国の中銀は「コロナ後」を見据えた金融政策の正常化を探り始めている。

FRBは16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、これまで24年以降としていた利上げ時期の見通しを23年に前倒しした。国債などを買い入れる量的緩和の縮小についても、市場では今夏に検討開始を表明するとの見方が強まっている。カナダやノルウェー、英国でも21年後半から22年にかけて利上げ観測が高まっている。

背景にあるのが経済の回復に伴う物価の上昇だ。5月の米消費者物価指数(CPI)の前年同月比の上昇率は5.0%とおよそ13年ぶりの高い伸びになった。日本はなおデフレ再燃の懸念がくすぶる。総務省が18日発表した日本の5月のCPIは0.1%下落と8カ月連続でマイナスだった。

経済全体の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」が経済回復の違いを象徴する。コロナの影響が大きかった20年4~6月期から今年1~3月期にかけた改善幅をみると、米国の8.5ポイントに対し、日本は5.1ポイント。米国は近く需給ギャップがプラスに浮上する可能性も指摘される。

米経済の強さの一因は大規模な財政出動にある。22会計年度(21年10月~22年9月)の歳出規模は6兆ドルとコロナ危機前を3割上回る水準になる可能性がある。すでに公的債務の国内総生産(GDP)比が先進国で最悪の水準にある日本は財政政策に限りがある。

13年に黒田総裁が就任した後の日銀は当初、大規模な金融緩和で物価の底上げを狙ったが、2%目標を達成できないままの状態に陥っている。金融緩和の限界があらわになるなか、低成長・低インフレの悪循環を抜け出すカギになるのが経済の構造改革だ。

規制緩和や産業政策で新たな需要をつくり出し、企業が投資の拡大や賃上げなどに動きやすくなる環境を整えることが急務だ。学び直し(リカレント)を通じた人材力の強化や、生産性が低い産業から高い産業への労働移転などが必要になる。

金融緩和の長期化は企業活動を下支えする一方、資産バブルの助長や債務の拡大といった副作用も強める。UBS証券の足立正道チーフエコノミストは「日銀も財政との連携強化を進めながら気候変動や低成長・人口減といった課題について提言し、成長戦略づくりにも関与していくべきだ」と指摘する。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

企業:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン