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日銀総裁「値上げ許容は不適切/長期金利の上限上げず」

会見要旨

 今回の決定内容について。

 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)のもとでの金融市場調節方針について指し値オペの運用も含め現状維持を賛成多数で決定した。景気は一部に弱めの動きも見られるが、基調としては持ち直している。消費者物価の上昇率は当面、エネルギーや食料品価格の上昇で2%程度で推移するが、その後はエネルギーの押し上げ効果が薄れ、プラス幅を縮小していく。

 6日の講演で「家計が値上げを受け入れている」と発言し、撤回した。

 家計が自主的に値上げを受け入れているのではなく、苦渋の選択としてやむを得ず受け入れていることは十分に認識している。「家計の値上げ許容度が高まっている」という表現は全く適切ではなかった。最近の物価上昇が家計に及ぼす影響を一層きめ細かく把握するとともに真意が適切に伝わるよう丁寧な情報発信に努める。

 物価上昇は消費者からの反発が大きいが、経済にプラスなのか。

 現在の物価上昇は国際的な資源価格上昇によるコストプッシュ型のインフレだ。日本の交易条件が悪化して所得が海外に流出しており、我々が目指す物価上昇とは異なる。経済が持続的に成長して労働市場が十分タイトになり、賃金と物価が共に上昇していく形を目指して金融政策を運営しなければならない。

 外国為替市場で円安が進んでいる。

 為替相場は経済・金融のファンダメンタルズ(基礎的条件)に沿って安定的に推移することが重要だ。最近の急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど経済にマイナスであり望ましくない。円安で収益の改善した企業が設備投資を増加させたり、賃金を上げたりすることで所得から支出への前向きな循環が強まることが大事だ。

 「円安は日本経済にプラス」との見解を変えたのか。

 足元の急速な円安の進行は安定的な推移に反しており、経済にマイナスになる。今後とも金融・為替市場を注視して経済・物価への影響をみていく必要がある。

 急速な円安ですでに悪影響が起きているのではないか。

 企業の設備投資に影響がでているかというと、今のところ企業収益は高水準で推移しており、為替の変動が企業の心理などに大きな影響は与えていない。ただ、急激な変動が好ましくないのは全くその通りだ。

 日銀の金融緩和が急速な円安の原因になっているのでは。

 為替は色々な要因で動いており、現在の海外との金利差の背景にはインフレ状況の違いがある。現在は市場が特に金利差の方に注目している状況だと思う。どの要因が為替相場に影響を与えるかはその時々の経済・金融情勢によって変わりうる。

 急速な円安が続く場合に金融政策を見直す余地はあるのか。

 中央銀行が為替をターゲットにして金融政策を運営することはない。あくまでも物価の安定を目標にして金融政策を運営するということに尽きる。

 債券市場で金利上昇圧力が高まっている。

 米欧の長期金利の上昇を背景に金利上昇圧力が生じている。10年物国債に加え、先物に対応する7年ゾーンでも連続指し値オペを実施した結果、長期金利は金融市場調節方針と整合的な水準で推移している。先物市場で投機的な動きが続き、流動性が低いもとで裁定取引が働きにくくなり、現物と先物の値動きのかい離や変動率の高まりが生じていることは認識している。

 長期金利が0.25%を超える場面が増えている。 

 海外金利の上昇や日銀が金融政策に何らかの変更を加えるという思惑もあって0.25%を上回る局面もあったが、ごくわずかのことで、現在はまた0.25%以内にしっかり収まっている。

 国債市場の流動性を懸念する声が出ている。

 十分注視して適切な対応をとっていく。例えば、以前から日銀の買い入れで特定の銘柄の流動性が低下した場合には国債補完供給制度などを通じて対応してきた。

 7~9年の金利と10年金利が逆転する現象が起きている。

 海外の長期金利高騰を反映して長期金利に上昇圧力が生じたので、連続指し値オペを行って全体のイールドカーブを低位に安定させている。今後も10年物国債がゼロ%程度で推移し、整合的なイールドカーブが実現するように指し値オペや国債買い入れの増額・追加など必要な措置を講じる。

 長期金利の変動幅をプラスマイナス0.25%から拡大する余地は。

 プラスマイナス0.25%のレンジは2021年3月の点検で金融緩和効果を損なわず、市場機能にプラスに作用すると確認したことを踏まえたものだ。長期金利に上昇圧力がかかり変動幅の上限に近い水準で推移するなかで上限を引き上げれば、長期金利は0.25%を超えて上昇すると予想され、金融緩和効果が弱まるので考えていない。

 長短金利操作はこの先も維持できるのか。

 理論的には可能だ。海外金利の上昇による金利上昇圧力に対しては国債買い入れの増額や指し値オペなど色々な形でイールドカーブ・コントロールを維持できる。

 現時点で金融緩和を正常化する選択肢はないのか。

 いまの物価上昇は景気に対する下押し圧力になっている。そういう時に金利を上げたり、金融を引き締めたりするとさらに景気に下押し圧力を加えてしまう。それは日本経済が新型コロナウイルス禍から回復しつつあるのを否定してしまう。

 経済が悪化した場合には追加緩和を検討するのか。

 追加の金融緩和をしなければいけない状況ではないが、必要があればやる。

 金融緩和の持続性を高めるために政策の点検を現時点で計画しているか。

 現時点でさらなる点検が必要とは考えていないが、常に世界の経済・金融情勢の変化に応じて適切な金融政策を行っていく必要がある。

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