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日本は技術で脱炭素を 普及に「炭素の価格付け」必須

アセットマネジメントOne・菅野暁社長

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世界中の投資家が投資先の温暖化ガス排出量の実質ゼロに向けて動き出した。アセットマネジメントOneは日本の資産運用会社として最初に投資先の排出ゼロ目標を掲げた。脱炭素を目指す世界的な投資家団体の一員でもあるアセマネOneの菅野暁社長に、ESG(環境・社会・企業統治)投資の潮流や日本の課題を聞いた。

世界で薄れる日本の存在感

――2050年までに投資先の排出実質ゼロを目指す世界的な資産運用会社の団体「ネットゼロ・アセットマネジャーズ・イニシアチブ(NZAM)」の創設メンバー30社の1社です。

「20年12月の設立時は日本から唯一の参加だった。現在、NZAMの加盟運用会社の合計運用資産は57兆ドル(約6500兆円)で、世界の投資マネーの約6割にのぼる」

BSテレビ東京「日経スペシャル SDGsが変えるミライ」19日午後9時放送
 ・機関投資家が注視、脱炭素マネーの運用先は「脱日本」
 ・世界はどこへ? 日本がすべきことは? COP26合意の裏側に迫る
 ・30年前に炭素税導入。環境先進国スウェーデンの新常識とは?
本記事の関連映像も紹介します。

――第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に合わせて開かれた「ザ・インベストメントCOP(投資のCOP)」にも登壇しました。

「正式には『ワールド・クライメート・サミット』という。COP26の会場近くのホテルに世界中の投資家や非政府組織(NGO)が集まり、気候変動について2日にわたって議論した。投資先の排出実質ゼロの達成のために具体的に何をやるのかが議論の中心だった」

「参加者の9割は欧州の投資家で、日本からは資産運用会社3社だけだった。欧州と比べると日本は年金基金など資金の出し手(アセットオーナー)の動きが遅い。排出ゼロを目指すのが大事との認識はあるが、多くのアセットオーナーが目標を掲げるには至っていない。COP26の会場にも足を運んだが、残念ながら日本の存在感はあまり高くなかった」

1970年代の石油ショックを想起

――脱炭素の潮流は日本企業に不利になりませんか。

「脱炭素の動きに対して日本企業が受け身になると、競争力が下がるだけでなく、投資家からの資金が回らないリスクがある。欧米は排出実質ゼロを目指すアセットオーナーと資産運用会社がかなり増えている。日本でも両者が歩調を合わせて企業に脱炭素への取り組みを促さないと、結果的に日本企業が不利になる可能性がある」

「日本企業は高い技術力を持っており、排出実質ゼロの達成も可能だ。ただ、技術を普及させるには、温暖化ガス排出に値段をつける『カーボンプライシング(炭素価格)』の導入が欠かせない。炭素価格が上がれば、日本企業が持つ技術の価値が高くなる。うまく使えば収益性は高まり、脱炭素化の動きも加速するだろう」

「1970年代の石油ショックで原油価格が急騰する中、日本企業は歯を食いしばってエネルギー効率の向上や環境対応を進めた。このことが世界的な競争力強化につながった。今回も似ている。グローバル主導で炭素価格がつくと受け身の対応になる。日本として炭素価格を導入し、再生可能エネルギーへのシフトや技術革新を起こすことが必要だ」

「ダイベストメント」より対話を優先

――投資家として企業に脱炭素の取り組みをどうやって促しますか。

「欧州では脱炭素化を進めない企業から投資資金を引き揚げる『ダイベストメント(投資撤退)』を実施するところが多い。だが、世界全体で実質ゼロにするには、『エンゲージメント(対話)』が重要だ。脱炭素化に向けてなかなか動かない企業にも粘り強く、リスクや事業機会を説明すべきだ。対話を重ねても変わらない場合は、取締役の選任議案に反対票を投じる」

「ただ、将来的にはダイベストメントも選択肢になる。今、投資撤退をしても、排出実質ゼロを掲げていない4割の投資家が買うだけで株価は下がらない。だが、これらの投資家が8割や9割になれば効果が出る。かなり先になると思うが、最終的にはダイベストメントも実施し、投資先の排出量を実質ゼロにする」

「日本企業の環境対応が世界に通じない『ガラパゴス化』を避けるのも投資家の役目だ。グローバル対応が遅れている企業にその点を伝えたり、企業が持っている技術が課題解決に役立つと助言したりできるよう、知識を高めないといけない」

(聞き手はESGエディター 松本裕子)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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