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出遅れ感強まる日本株、バリュー株に上昇期待

エミン・ユルマズの未来観測

政治リスクが日本株の重しに

2021年の東証マザーズ指数は、通年ベースで3年ぶりに下落して終えました。22年4月の東京証券取引所の市場区分再編を控え、投資家が中小型株を手掛けづらかったことに加え、政治経済リスクや需給悪化が警戒されたことが大きな要因でした。

21年10月に発足した岸田文雄政権は、あまりマーケットフレンドリー(市場に友好的)とは言えません。岸田首相は株式の配当や譲渡益にかかる金融所得課税の強化を政策の一つに掲げたほか、企業が株主に利益を還元する自社株買いについて、規制とも解釈できる「ガイドライン」に言及し、日本株売りを招きました。個別株のパフォーマンスを見ても、岸田政権発足後は株価が下落している銘柄が目立ちます。

岸田首相は、アベノミクスを継承した菅義偉前首相と異なる政策を目指す、緊縮財政路線が強い政権だと私はみています。政治リスクは引き続き22年相場の重荷になるでしょう。夏に予定される参院選で自民党が負けた場合は、政治基盤の脆弱性が懸念されそうですが、勝った場合も増税などが警戒され、相場にとって喜ばしい材料ではありません。

中国経済の減速に引き続き警戒

中国経済の減速も引き続きリスクです。中国不動産大手、中国恒大集団の経営危機を引き起こした不動産市場の過熱は政府の施策により現状抑えられてはいますが、何らかのきっかけで崩壊に向かう可能性には注意が必要です。

中国人民銀行(中央銀行)は21年12月、実質的な政策金利であるLPR(ローンプライムレート、最優遇貸出金利)の1年物を1年8カ月ぶりに引き下げました。この利下げは非常に象徴的で、世界的にインフレ圧力が高まる中、中国景気の弱さをかえって意識させたものになりました。中国経済の先行き懸念もまた、外需関連を中心とする日本株売りに拍車をかけました。22年2月の北京冬季五輪終了後には、中国経済の綻びが顕在化する危うさがあります。

21年の日本株市場ではIPO(新規株式公開)の企業数が06年以来、15年ぶりの高水準となりました。新たに公開された株を買うために、保有銘柄の換金売りを出し、資金を捻出する動きが出るなど需給悪化が指数を押し下げた面もあります。20年後半から21年にかけて上場した銘柄の中には、現状、株価が半値以下まで調整したものも散見されます。

需給悪化は日本だけの現象ではありません。米国ではSPAC(特別買収目的会社)の上場が相次いだほか、企業オーナーや関係者の株式売却がさらなる売りを呼びました。例えば、テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は自身が保有するテスラ株を一部売却。米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏なども保有株を売却し、市場では需給の緩みを嫌気した売りが広がりました。

結果的に21年は日米株とも割高な新興市場の成長株から資金が流出する一方、指数連動型商品やコモディティー(商品)に投資家の買いが集まり、ある意味、分かりやすい相場と言えました。

しかし22年は、北京冬季五輪が終了して間もない3月に米連邦準備理事会(FRB)がテーパリング(量的緩和縮小)を終了させ、利上げに向かうとされています。3~5月には相場が大きく下に振れる可能性が高く、その後は9月頃まで断続的な下げ相場が続くとみています。株価指数そのものより好業績株が上昇する、本来あるべき株式市場の姿に戻るでしょう。その意味で事業内容を分析し、銘柄を選定していかなければならない1年となりそうです。 

人材派遣やサイバーセキュリティーに注目

中でも人材派遣やIT(情報技術)コンサルティング、サイバーセキュリティー関連などは注目したい業種です。半導体関連株は割高な銘柄が多いものの、引き続き買いが入るでしょう。

底入れ感が強まっているのは三菱自動車などの自動車関連株。22年のみならず、長期的に上昇が期待されるのは防衛関連や食料・飲料関連株でしょう。米国と中国の対立が深まるにつれ、三菱重工業川崎重工業などの重工大手や中小型の防衛関連株の割安感が解消されそうです。

地政学リスクが高まれば、食料難への備えが意識されます。食料輸入に依存する日本ですが、自給も可能な水産関連株では、日本水産などが注目されそうです。日本マクドナルドは12月、全国の店舗でフライドポテトの一部サイズの販売の一時休止を発表しました(一旦再開するも1月9日から再び休止)。物流混乱の影響とされており、有事の際の輸入停滞が既に身近で起こっていることがうかがえます。

22年は米国で3回の利上げが見込まれていますが、私は5回を予想しています。FOMC参加者が予想する利上げ回数の引き上げは続いており、今後も増える可能性は高そうです。利上げ加速が示されれば、医薬品などディフェンシブ株に見直し買いが入るでしょう。安定したバリュー(割安)株をコツコツ買うのが22年はよさそうです。コモディティーは、アルミ、小麦、原油が底堅い一方、銅、天然ガス、コーヒー豆の変動率は高くなるなど選別が進むでしょう。

日本では携帯電話料金の値下げの影響を除けば、CPI(消費者物価指数)が足元で1%台半ばまで高まっており、日銀が目標とする物価上昇率2%の達成に近づいています。外国為替市場では円安・ドル高が進んでおり、輸入コストが増加。原材料価格の上昇が業績を圧迫し、様々な企業で値上げが相次ぐとみています。

エミン・ユルマズ
トルコ出身。16歳で国際生物学オリンピックで優勝した後、奨学金で日本に留学。留学後わずか1年で、日本語で東京大学を受験し合格。卒業後は野村証券でM&A関連業務などに従事。2016年から複眼経済塾の取締役。ポーカープレーヤーとしての顔も持つ。
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著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/1/20)
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