「日銀は永遠のハト派」ヘッジファンドは140円狙い
振り返ると、2021年10月15日付本欄で「円安も外国人主導の展開、118円オーバーシュートも視野」と書いた時点では、中期的に110円程度に収れんすると筆者は見ていた。
しかし、22年1月4日付で「米市場で狙われる円、タカ派色強めるFOMC」と書いた頃には、中期的に円安のエスカレートとの見解に変わっていた。
円を売っては買い戻す短期的売買を繰り返すヘッジファンドたちが、連戦連勝の勢いに乗って大胆に仕掛けてくる事例が急増し始めたからだ。「日銀は永遠のハト派」と語り、日銀に打つ手なしと読み切っていた。
さらに、筆者のプライベート面では、個人的に親しい日銀OBたちが、虎の子の退職金でドルや金を買うためのアドバイスを求めて来た。円という通貨の番人を40年以上勤めあげた人たちが、個人的な資産運用で円を持ちたがらないという傾向はショッキングであった。
実は、この傾向は10年ほど前から始まり、筆者個人も資産の半分はドルで持つようになった。それをセミナーでも公言してきた。今週月曜日にyoutubeライブ配信した日経電子版「マネーのまなび」のゴールド編でも、円が130円を超え、筆者の個人的ドル保有がポートフォリオの7割を超えたので、リバランスで5割に戻すべきか思案中と率直に語った。
日本人は外貨建て資産保有を警戒するが、円だけを持つリスクも考えるべきだとも語った。「為替変動リスクには注意しましょう」と多くのファイナンシャルプランナー(FP)たちは警告するが、円だけで持つリスクも開示すべきだと思う。
ここで、話をヘッジファンドの円売りに戻すが、日銀が無制限に国債を買い入れる「指し値オペ(公開市場操作)」の毎日実施に踏み切ったことも、結果的に「寝た子を起こす」ことになった。それまで日銀の動きには無関心であった外国人投機家たちまでが、円売りトレードに新規参入するキッカケになったのだ。
低金利の円を調達通貨とする「円キャリートレード」という懐かしい言葉まで「復活」した。
これまで毎回スルーしてきた日銀金融政策決定会合も注目されるようになった。今は、日銀が語れば語るほど、円安に打つ手なしの実態があらわになるからだ。可能性は極めて低いが「万が一、日銀が介入してくれたら、チャンス」と身構えている。
日銀金融政策決定会合の日の日本時間昼すぎ(声明文発表)と午後3時半すぎ(総裁会見)には、深夜のNYからヘッジファンドのチェックが入ることも常態化してきた。
中央銀行の利上げドミノも、我が道を行かねばならぬ日銀の姿を浮き彫りにするばかりだ。
FRBの利上げが0.75%から1%になれば140円も視野に入る。

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