日銀、大規模緩和を維持 為替の物価への影響注視

日銀は16~17日に開いた金融政策決定会合で、大規模緩和を継続する方針を決めた。新型コロナウイルス禍による供給制約やウクライナ危機などが影を落とすなか、低金利環境の維持で景気を下支えする。公表文には為替市場の動向が経済・物価に与える影響を注視すると盛り込んだ。海外の中央銀行はインフレ抑制で金融引き締めを急いでおり、政策の違いが際立っている。
黒田東彦総裁が17日午後に記者会見を開き、決定内容を説明する。
日銀は長期金利を0%程度、短期金利をマイナス0.1%に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を柱とした金融緩和政策を続けている。会合ではこうした大規模な金融緩和政策を継続することを確認した。年12兆円を上限に、必要に応じて上場投資信託(ETF)を買い入れる措置も維持する。

4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、日銀が目標とする2%台に乗せた。ただ、エネルギー価格の上昇など外的要因が主因で持続力がないとして、緩和路線を堅持する。
景気の総括判断は据え置いた。中国のロックダウン(都市封鎖)などを理由に「供給制約の影響が強まっている」として、海外経済や輸出・生産の判断は下方修正した。サービス産業を中心に持ち直しているとして個人消費の判断は引き上げた。

日銀は10日、財務省、金融庁と国際金融資本市場に関する3者会合を開くなど、足元の急速な円安に警戒感を強めている。こうした状況を踏まえ、公表文には「金融・為替市場の動向や、その我が国経済・物価への影響を十分注視する必要がある」との文言を盛り込んだ。
10年物国債を0.25%の固定利回りで無制限に買う「指し値オペ」を毎営業日実施する方針も引き続き明記した。
日銀は新型コロナの感染拡大を受け、金融機関向けの特別オペ(コロナオペ)などを通じて企業の資金繰りを支えてきた。足元でコロナの影響が和らいでいることから、3月に支援策を縮小した。9月末に終了予定の中小企業向け支援策の延長の是非については、判断を見送った。
日銀の金融緩和が長期化するなか、債券市場にはひずみが生じている。金融政策に変更の可能性があるとみた海外勢が日本国債を売り浴びせており、残存7〜9年の国債の利回りが一時、10年債利回りを上回るいびつな状況になっている。市場では、日銀がイールドカーブ・コントロールの見直しに動くとの観測がでていた。
黒田総裁は「日本の家計の値上げ許容度が高まってきている」と発言し、国会などで非難を浴びた。ウクライナ危機に伴う物価上昇に家計の不満が募っていることもあり、急速な円安や金利のゆがみといった副作用が日銀を追い込む可能性もくすぶる。
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