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3年ぶり円安時代に考える外貨投資のキホン

知っ得・お金のトリセツ(66)

「悪い円安」「インフレ懸念」さらには物価上昇と景気低迷が同時進行する「スタグフレーション」――。家計にとって気になる単語が外国為替市場発でささやかれ始めた。過去1カ月で急速に円安・ドル高が進んだ結果、足元では1ドル=114円台前半と3年ぶりの円安水準にある。年初の1ドル=102円台からは1割強の下落だ。やっかいなのは、長らく日本マーケットでおなじみの「円安=株高、ゆえに善」という構図ごと変わる気配があること。そもそも為替の動きは株価などと比べても読みにくく「当てる」投資は危険だ。これを機に分散投資、そして資産防衛の観点から外貨建て投資とどう向き合うべきか、基本を押さえておこう。

上昇方向の米金利 vs ゼロに張り付く円金利

基本のキとして為替相場の「適正価格」は読みにくい。そういうものだ。ある通貨と別の通貨の交換の比率が為替相場である以上、一方が上がれば一方が下がるゼロサムゲーム。上下どちらに動くかを決めるのは、双方の決定要因間の綱引き次第だ。

短期的にはイベントでよく動く。今回の場合は9月22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)がきっかけ。米国の金融緩和の正常化に伴う金利上昇が意識されたことでドルを買う動きが強まった。金利がゼロ%に張り付き続ける見通しの円を売ってドルを買えば利回りが取れる。金利差は中長期的に影響する為替の決定要因の1つだ。FOMC後わずか3週間で円は対ドルで109円台から114円台まで4%下落した。

「当てない」 でも「備える」

当面は日米の金利差拡大が意識されやすいことから、年内に115円台の円安を見込む声は少なくない。その先はチャート的にも120円台まで節目に乏しくドル円のレンジが115~120円へと移動する展開も予想される。一方、為替の見通しが一筋縄でいかないのは、より長期的な購買力平価の視点に立ち、日米両国の物価差を反映した購買力が指し示すドル円の均衡点を見ると90円台の円高水準という見方もあるからだ。

いずれにしても個人の資産形成の心得としては為替の水準を「当てる」のではなく、将来的なインフレや円の長期的な減価というシナリオにも配慮して、ポートフォリオの一部を外貨に振り向けるのが正しい姿勢だ。

外貨建て資産を増やしてみる

どのくらいか? 答えはもちろんリスク許容度で異なるがザックリ「結構多めに」とは言える。多くの日本の生活者は円建てで給与をもらい、その大部分を自宅という円建て資産に投じている。どの国でも母国通貨建て資産の比率が高い「ホームカントリーバイアス」はあるものだが、野村総合研究所の試算によると日本の家計金融資産に占める外貨建て資産比率は2%台とごく低位にとどまる。

同列には比べられないが、個人のポートフォリオの「お手本」としてもしばしば言及される年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオは今や半分が外貨建てだ。リスクのとれる20~30代であれば数%は明らかに少なすぎで、半分に近づける意識があってもいい。

外貨預金、FX、外債、外国株…

具体的投資方法としては大きく2つに分けて理解しよう。1つは外貨預金や外国為替証拠金(FX)取引など、いわば通貨そのものへの投資。もう一つが外国債券、外国株式に代表される金融商品への投資だ。それ自体に価値がある原資産を対象に外貨建てで取引する。金融商品そのものの値動きに加え、為替の差損益を勘案する必要がある。

最も手掛けやすいのは外貨預金だろう。メガバンクの円の定期預金金利は0.002%だが、ドル預金であれば0.1~0.6%程度の提示も多い。銀行ごとに条件が異なるので比較検討しよう。この時バカにならないのが為替手数料だ。円をドルに替える時と運用後ドルから円に替える時の「往復」で1円ずつかかる例がいまだに多い。「預金金利が100倍以上!」と喜んでも手数料を勘案すると為替相場が2円以上円安にならないと割に合わない。ソニー銀行や住信SBIネット銀行など為替手数料がお得なネット銀行を吟味する必要がある。また外貨預金は預金保険制度(1金融機関あたり元本1000万円とその利息が保証される)の対象ではないことも知っておこう。

自分の「円高耐性」を知る

高金利と為替相場は表裏の関係。せっかくの高利回りがフイになる可能性のある為替の水準を大まかにつかんでおくのも、自分の「円高耐性」を問いかける意味で役に立つ。基本的な考え方はこうだ(税金、手数料は勘案せず)。

例えば1ドル=115円の時に利率1.5%の米国債を1万ドル購入したとする。10年後のリターンは元利合計で1万1500ドル。この時必要な円は115万円だった。これを米国債でなく利率0.1%の日本国債に振り向けていたとすると同じく10年後の元利合計は116万1500円。この価値が同じになる為替水準を計算すると116万1500円÷1万1500ドルで1ドル=101円。果たしてこれ以上の円高になっても耐えられるか? 頭の体操をしてみるのも悪くない。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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