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ストレスを受ける現代人 本の力が支えに(佐々木明子)

テレビ東京アナウンサー・佐々木明子のニュースな日々

書店が減っている。理由はもちろんスマートフォンの普及。何でもサッと調べられるし、サブスクリプション(継続課金)で動画やゲームが見放題、遊び放題。「人間の時間」の争奪戦の時代、本よりも刺激的なものは山ほどある。

でも私は、やはり本が好きである。幼い頃から大好きで、父は本ならばいくらでも買ってくれた。実家の私の部屋の本棚は、大好きな星新一の著作や「ムツゴロウ」シリーズは全巻そろっているし、夏目漱石からパール・バックまで和洋折衷、所狭しと並ぶ。ほこりをかぶったページをめくると、鮮やかに物語がよみがえってくる。

戦争を体感させる圧倒的な描写

最近は仕事柄、世界経済の行方や投資戦術、為替の仕組みといったビジネス本を手にすることが多い。そんな中、番組の「ウクライナ関連の本が今売れている」という特集で、インタビューを担当することになった。相手はデビュー作が「2022年本屋大賞」を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』の作者、逢坂冬馬さん。作品は第2次世界大戦時の独ソ戦が舞台で、旧ソ連の女性狙撃兵の視点から見る戦争の悲惨さは、日々報じる現場そのまま。今、ウクライナで起きていることに酷似していた。

夕食後に手に取って読み始め、あまりのリアルさに現実と重ね合わせながら読みふけり、気が付けば夜が明け始めていた。こんなに作品に入り込んだのは久しぶりだ。描写の緻密さに圧倒されながら、インタビューに臨んだ。

作者は驚くほどに憔悴していた。まさかこんなタイミングで戦争が起きるとは思っていなかった、現場で侵略やむごい人権侵害が起きているであろうことが分かるからこそ夜も眠れない、と受賞を素直に喜べない姿がそこにあった。

しかし読者はきっと、この本をきっかけにロシアのウクライナ侵攻をより身近に感じ、戦争とは何なのか、なぜ起きるのか、そして今ある平和はどうやって創られたのか、といったことに関心を寄せるに違いない。そこから民主主義とは、政治とは、経済とは――。このように理解が広がるのであれば、まさに大賞受賞にふさわしい作品であって、逢坂さんには受賞を心から喜んでもらいたいと思う。

池上彰さんに聞いた本の魅力

池上彰さんに本の魅力を聞いたことがある。「本は人生の逃げ場、つらい時は逃げ込みなさい」。池上さんはそう言った。「いろんなことを教えてくれる自分だけの世界だから」。ストレスを受ける現代人こそ、本の力が支えになる。最近の大型書店はアミューズメントパークのようで、カフェやグッズ販売もある。行動規制が解除された今、週末は静かな書店で過ごす"逆張り"も良いかもしれない。

最近のMy News「新人アナの研修でつまずいたのは?」

アナウンス部では、新人の女性アナウンサー2人が無事に配属となった。「毎日が刺激的です」と言って目を輝かせながら、まるでスポンジのようにどんどん技術を吸収していく。一方で、「だから、ほら、あの人、なんて名前だっけ?」と、研修中に人の名前が出て来ない自分に泣けてくるのだった。

「佐々木明子のニュースな日々」は、国内外の経済やマーケットの動きを伝えるテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターを務める佐々木明子さんが、金融・経済の最前線の動きや番組制作の裏話などをつづるコラムです。

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