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日銀の地銀支援、異例の修正 コロナで支払い急増の誤算

日銀は16日、経費削減などに取り組む地域金融機関への支援策の見直しを決めた。新型コロナウイルス禍に伴う融資の急増で「補助金」が増えすぎるのを防ぐため、地銀などへの支払額を抑える新たな上限を2022年度にかけて導入する。制度決定から1年での軌道修正は極めて異例で、地域金融をめぐる政策運営の難しさを映し出す。

支援策は、地方銀行や信用金庫などが経営改善に取り組めば日銀に預ける当座預金の金利を年0.1%上乗せする。具体的には①収益力の向上や経費削減②合併や他行の連結子会社化――のいずれかを満たせば日銀が上乗せ金利を支払う。人口減少や低金利環境の長期化に加え、日銀のマイナス金利政策で苦しむ地銀などへの「埋め合わせ」という意味合いがある。

多くの地銀は店舗の統廃合などで経費削減を急いでいる。日本経済研究センターの試算によると、経費削減を条件に上乗せ金利を受け取る地方銀行は全体の8割に達する見通し。長年、上昇を続けてきた地銀の経費率は一転、足元で低下するなど支援策を呼び水にした構造改革が進みつつある。

日銀の誤算はコロナ禍が想定より長引いたことだ。支援策の導入を決めたのは1年前の20年11月。日銀はコロナ対応融資を手がける金融機関に有利な条件で貸し出し原資を供給する特別オペ(公開市場操作)を実施しているが、当時の期限は21年3月末だった。

ところが、国内外で感染拡大は収束せず日銀はその後もコロナ対応の特別オペを2度にわたり延長した。金融機関の貸し出しが増え続けた結果、銀行などの当座預金も急増した。足元の当預残高は140兆円程度と、19年度末から2倍に急膨張している。上乗せ金利は当座預金残高から計算するため、預金が増えれば日銀の支払額も増える。

地銀や信金などすべての地域金融機関が支援の対象になる場合、上乗せ金利の総額は最大で1400億円規模に膨らむ可能性もある。過度な支払いを抑えるため、日銀は上乗せ金利に上限を設ける。支払額を計算する際、22年度からは原則としてコロナ禍で急増した分を省く制度に見直す。

具体的には計算対象の当座預金残高について19年度を基準に年5%程度の増加にとどめる方針だ。21年度は今秋までの当座預金の実績に応じて上乗せ金利を支払う経過措置を設ける。年度途中での制度変更となるため、金融機関の決算見通しに与える影響を軽減する。

日銀は当初、20年春の導入をめざして検討を進めていたがコロナ禍で延期。地銀再編を促す菅義偉政権が発足すると足並みをそろえるように同年11月に導入を決めたが、当座預金に滞留するお金にペナルティーを課すマイナス金利政策を続ける一方で、滞留資金が多いほど上乗せ金利を多く得られる支援策は矛盾するとして日銀内でも異論があった。

こうした事情を反映し、わざわざ金融政策決定会合ではなく通常会合で導入を決めた経緯があり、今回の見直しも16日の通常会合で決めた。過度な支払いは地域金融機関への過保護と映りかねないだけでなく、日銀から政府への国庫納付金が減る恐れもある。

欧米でインフレ観測が高まるなかでも国内の物価上昇の勢いは鈍く、黒田東彦総裁はマイナス金利政策を含む強力な金融緩和を続ける構えだ。低金利政策を維持しつつ、金融機関の健全性をいかに確保するか。日銀の使命である「物価の安定」と「金融システムの安定」の両立に向けて政策運営の難しさが改めて浮き彫りになっている。(南毅郎)

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