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金利上昇時の「貯蓄から投資」、はじめの一歩は?

知っ得・お金のトリセツ(103)

「永遠のゼロ」とも呼ばれた日本の超低金利時代。最大の敗者といえば貯蓄超過である家計セクターだろう。預貯金の利子収入を中心に家計を素通りした「得べかりし利益」は数十兆円に上るともされる。岸田文雄首相肝煎りの資産所得倍増プランに乗って再び「貯蓄から投資」が叫ばれるタイミングで巡ってきた金利上昇局面。2023年は金利の復活とともに家計が覚醒する記念すべき年になるかもしれない。

長期金利は0.5%を突破

いち早く動き出したのが長期金利の代表、10年物国債だ。新発債の利回りは1月13日に一時0.545%と7年7カ月ぶりの水準に上昇した。日銀は通常の政策金利である短期金利に加えて、本来は市場参加者の売買で水準が決まる長期金利も対象に「ピン留め」する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を展開中だが、その限界を試す動きが激しくなっている。22年12月には長期金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%程度から0.5%程度に「倍増」させたが、一段の引き上げを見越して10年物金利に上昇圧力が強まっている。

「金利なんてない」の常識に変化

先行した10年物国債の動きは、時差を伴っていずれ他の預金金利や貸出金利へと波及するのがセオリーだ。既に長期の住宅ローン金利や企業向け貸し出しで一部参照される長期プライムレートが上昇した。1年までの預金金利が連動するのは短期金利ではあるが、もともと0.001%に張り付くメガバンクに比べ、低コストを武器に200倍の水準を提示するネット銀行もあった。この機に一段と魅力的な商品を出してくる可能性もある。

「金利なんてどうせないもの」という〝常識〟が変わり始めれば、より高い金利を追い求めるイールドハンティングの動きがジワリ家計に広がるはず。家計部門の現預金1000兆円のわずか1%でも動けば10兆円の巨額だ。

債券投資という選択肢

どこにおカネを移すか? 投資というと思い浮かびがちなのが個別銘柄などへの株式投資だが、一足飛びにハイリスク・ハイリターンの株式投資を始めずとも債券投資という選択肢もある。あらかじめ満期と利率が決まっているのが基本形で、発行体が破綻しない限り、満期まで持てば元本と利払いが約束される。株式と比べリスクの小さい投資初心者向けの金融商品だ。た・だ・し――。

これからのような金利上昇局面では中途売却すると損失を被るので要注意だ。金利と債券価格は逆方向に動く。金利が上がれば債券価格は下落する。後からより利率の良い債券が発行されれば、手元の利率の低い債券は人気薄で価格を下げないと買い手が見つからないのが道理だ。

個人向けにあの手、この手のセールスポイント

そんな債券の原理原則から逸脱した個人にとって有利な債券があるのをご存じだろうか? 国が特に家計の懐を当てにして発行する「個人向け国債」だ。買ってもらいやすいようにあの手この手でハードルを下げている。期間3年と5年の固定金利ものと期間10年の変動金利ものを取りそろえ、いずれも最低1万円から1万円単位で購入できる。発行後1年たてばいつでも中途換金が可能で、国が額面で引き取ってくれるので元本割れリスクがない。

さらに変動10年の場合は半年ごとにその時の金利水準を反映して適用利率が見直される。当初の利率は通常の10年物国債の0.66倍と低い発射台になる半面、金利が上昇すればそれに応じて自動的に受取利子が増える。万一、逆に市場金利が低下しても最低利率0.05%という保証金利もついており、これを割り込むことはない。

7年半ぶりの水準に上昇

2月発行の最新の変動10年の利率が6日に決まったが、これが0.33%。1カ月前のものから一気に倍増し、2015年以来7年半ぶりの高水準になった。この水準で100万円分買うと半年後にもらえる利子は1650円。ここから税金20.315%が差し引かれるが手取りでも1315円で1年間では2630円になる。まだまだコンマ以下の金利とはいえ0.001%の普通預金の利息8円弱とは明らかに世界が違う。

さらに金融機関によってはキャンペーンでキャッシュバックを行うところもある。例えば野村証券や大和証券では購入額100万円で1000円、1000万円で1万4000円が受け取れる。これを含めた実質利回りは一段と上がる。貯蓄から投資のはじめの一歩として知っておくべき金融商品だ。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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