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災害を機に今考える サバイバル資金の基本

知っ得・お金のトリセツ(59)

think!多様な観点からニュースを考える

「どこで災害が起きても不思議ではありません」――。降りやまない雨の中、ニュースで連呼される注意喚起フレーズは災害多発列島に生きる恐ろしさを印象づけた。誰もが無関係でいられない、もしもの時に知っておくべき「サバイバル資金」の基本のキを押さえておこう。

非常用バッグに最低3日分の現金を

何はともあれ非常用持ち出しバッグに入れておくべきなのが現金。普段の生活ではキャッシュレス化が進み現金を持ち歩かない人も増えたが、ライフラインさえおぼつかない被災地ではクレジットカードや電子マネー決済に頼ることは望めない。非常用食料備蓄のガイドラインと同様「最低3日、できれば1週間」をメドに家族が生活できる現金を準備しよう。子ども2人の4人家族なら10万円程度と結構な額になる。高額紙幣が使いにくい場面も想定すると、500円玉貯金をそのまま非常用バッグに入れるといったアイデアもあるが、500円硬貨は1枚7グラム強。10万円となると1.4キロとそこそこ重いので半額程度の活用が現実的だ。

預貯金は10~20万円 引き出せる措置あり

金融庁によると、東日本大震災で金融機関が営業再開までに要した時間はおよそ4日だった。長めにみてもその程度で自分の預金口座からの現金引き出しが可能になるとして、問題はキャッシュカードや預金通帳、印鑑だろう。これら貴重品は防災マニュアルの持ち出しチェックリストの常連。むろん持ち出せるに越したことはないが、実は必ずしも不可欠ではない。

大規模災害時には簡易な本人確認で引き出しが可能になる特例がある。日銀が被災地の銀行・証券・保険などの金融機関に対して弾力的な取り扱いを要請することで、多くの金融機関で1日10万円、ゆうちょ銀行では20万円まで通帳などがなくても引き出しが可能になる。ネット銀行の場合、コールセンターに連絡すれば原則、振り込み手数料なしで近くの銀行に送金してくれる。同様に保険会社や証券会社でも資産の現金化や資産を担保にした貸し出しが受けやすくなる。今回も早速、島根県に対して「令和3年8月11日からの大雨にかかる災害等に対する金融上の措置について」が発動されている。

この場合重要なのが本人確認に使える身分証明証だ。1枚で済む顔写真入りのものが望ましい。代表例がマイナンバーカード、運転免許証、パスポートの3つ。それ以外の健康保険証や年金手帳などはその他補助書類と組み合わせることで本人確認書類と見なされる。手続きをスムーズにするには口座番号も分かった方がいいので、番号が書かれた通帳のページをコピーして非常用バッグに入れておこう。

備えよ常に ~ 3カ月は必要なサバイバル生活費

「災害起点」で考えると頼りになるのはやはり預貯金、なかでも全国ネットを持つメガバンクやゆうちょだ。長引く低金利で残高が増えないばかりでなく、下手をするとATM利用などで「手数料倒れ」になる口座だが、1つは準備し一定の残高を保持しておきたい。

なにせ天災だけでなく新型コロナウイルス禍などで予期せぬ失職などもある時代だ。失業手当の振り込みはどんなに早くてもおよそ1カ月後、多くは約2カ月後と考えると、大体3カ月分は生活費を賄える資金をプールしておくべきだ。最近は投資を武器に早期退職を達成する「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」の流行もあって、ギリギリの生活費以外すべてを運用に回す人もいるようだが、サバイバル資金は別財布と心得よう。

再建支援金は最大300万円

万一、仮設住宅に入居する事態になれば家賃は必要ないがそれ以外の費用はかかる。水道光熱費や駐車場代などに加え、生活に必要なテレビや冷蔵庫、家具などの負担ものしかかる。入居期間は通常最長2年だ。損害の一部をカバーできるその他の公的な制度も知っておこう。

①被災者生活再建支援金

自治体レベルで適用対象と認定される必要があるが、災害で家が全半壊するような大きな被害を受けた場合、生活再建支援金が受け取れる。住宅の被害の程度に応じた「基礎支援金」と再建方法に応じた「加算支援金」の2種類があり、合計で最大300万円まで受け取れる。必ずしも住宅資金とする必要はないので生活費としても利用できる。300万円は多額だが、一方で東日本大震災のデータでは全壊住宅の新築費用は平均約2500万円。多額の持ち出しが必要なのは変わらない。

②災害救助法に基づく応急修理

半壊などの住宅に対しては修理の「現物給付」という支援もある。屋根や居室、トイレなど生活に欠かせない箇所の必要最小限の応急手当てといった位置づけだ。1世帯あたりの上限は現在60万円弱。

③災害弔慰金

不幸にして家族に死者が出た時は災害弔慰金の対象になる。上限額の範囲内で自治体ごとに支給額を決める。上限は生計維持者の場合500万円、それ以外のメンバーは250万円だ。

いずれの場合も自治体が窓口となり、罹災(りさい)証明書が必要な場合が多い。被害に遭ったらまずはスマホなどで写真を残しておくと後々役に立つことが多いようだ。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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