/

資産2.6億円の会社員投資家 少子高齢化の関連株に照準

10倍株を狙え 大化け株の発掘術(1)

金融引き締めに伴う景気後退懸念に金融システム不安が加わり、株式市場は大きく調整した。その動揺はまだ収まっていない。だが、相場に連れ安して有望株も大きく値下がりする局面は、大化け株の卵を仕込むチャンスでもある。株価が買値の10倍以上に値上がりする「10倍株」――。その候補を発掘するノウハウを5回の短期集中連載で紹介する。初回は、10倍株で資産を増やして目標の2億円を突破した会社員投資家の実践例を詳しく見ていく。

「少子高齢化の関連銘柄で10倍株を狙っている」

こう話すのは、会社員投資家の弐億貯男さん(におく・ためお、ハンドルネーム・40代男性)だ。このスゴ腕の個人投資家は、ページビューが毎月100万弱に上る人気投資ブロガーでもある。2003年に投資を始め、19年にハンドルネームの由来でもある「運用資産2億円」を達成した。現在の運用資産は約2億6000万円まで拡大した。

弐億さんがこれまでに10倍株を達成した銘柄は、介護付き有料老人ホームを運営するチャーム・ケア・コーポレーション。12年の上場後から14年にかけて、複数回にわたり買い付けを行った。16〜19年の株価上昇局面で売却し、最大18倍高、平均10倍高で利益を確定した。

弐億さんが銘柄選定の基準とするのはPER(株価収益率)と売上高成長率だ。「PERは分かりやすい株価指標なので、愛用している。業界ごとに異なるが、15倍未満を目安に同業他社と比較しながら割安成長株を選んでいる。売上高成長率はできれば20%超が好ましい」(弐億さん)

またチャーム・ケアは、新規出店で費用が圧迫されて利益予想が低く出ていたことも、購入に至った理由の一つだ。

「先行投資が落ち着けば会計上の費用が減り、売上高成長率を上回る利益成長率が期待できる」(弐億さん)。決算短信の見た目の数字ではなく、常に将来の伸びしろを予測した買い方を心掛けている。

上場して間もない銘柄に着眼

弐億さんはチャーム・ケアを上場直後に購入した。様々な投資法を試行錯誤する中で、上場して間もない「セカンダリー株」の中に、割安に放置された有望株が眠っていると気付いたからだ。

「各社とも成長戦略をアピールして上場してくるため、全上場銘柄の中から探すより、成長株が見つかりやすい。新規株式公開(IPO)株の多くは上場直後に人気化した後、株価が下がる傾向にある。投資家が見向きをしなくなった頃合いが投資のベストタイミング」

ただし上場ゴールの銘柄もあるため、購入の際は注意が必要だ。弐億さんは、投資対象を「最初の四半期決算を過ぎた後、業績の堅調さに反して公開価格割れなど株価が割安に放置されている株」に限定。その中から、上場時の目論見書や決算短信、決算説明資料、決算会見などを分析し、実際に購入する銘柄を割り出している。

介護や葬儀関連株が狙い目

「チャーム・ケアの2匹目のどじょうを狙いたい」と言う弐億さん。狙うは少子高齢化の関連銘柄だ。「PERが割高なAI(人工知能)関連などと比較して、少子高齢化関連は不人気株とされてきた。団塊の世代が75歳以上となる『2025年問題』も控えている。成長市場という意味では、介護や葬儀関連株は長く持ち続けていたら大きく伸びそうだ」

例えば、きずなホールディングス。少人数での「家族葬」を手掛ける同社は、弐億さんの主力株の一つだ。

「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、家族以外の知人が多く参列する『一般葬』から、親族などに限った『家族葬』が増えている。20年に上場した同社は時流に合ったビジネスを展開している上、中期経営計画で葬儀会館の出店計画を開示しており、成長イメージが湧きやすい」

また、ストックビジネスを展開している株も有望視している。「気候によって売れ行きが変動する衣料品などと異なり、長期契約を締結しているビジネスは売り上げの予想がつきやすく、安定的に伸びると期待できる」(弐億さん)からだ。こうした銘柄には例えば、マンションや賃貸ビルの不動産管理を手掛ける長栄などが当てはまる。

「性善説を信じているので、決算説明資料の数字を基に、売り上げや利益を予想している。想定通りにいかない場合を鑑みて、常に10〜20銘柄に分散投資もしている。仮に少しの含み損が出ても、成長期待が崩れるような悪材料がなければ、持ち続けることが多い」

金利上昇で成長株が売られやすい足元の株式相場は、「有望株も連れ安になっているため、投資タイミングとしてはよさそう」。初めから10倍高を狙わず、「少しずつ利益確定を重ねながら、平均で10倍高を目指すのがよい」と続ける。

東証上場の4社に1社は10倍高


「経済の低成長が続いている日本の株式市場で10倍株を見つけるなんて、無理難題だろう」
こう感じる読者も少なくないだろう。だが驚くなかれ、実は日本株市場は10倍株の宝庫だ。2008年9月に起きたリーマン・ショック。その後の最安値を起点に10倍以上に上昇した銘柄数を調べると、東京証券取引所に上場している銘柄の4社に1社が当てはまった。
では、現在の相場で10倍株の卵を見つけるカギは何か。3月20日に発売した日経マネーの2023年5月号の巻頭特集「2つ取れれば資産1億円も! 特選10倍株」では、4つのキーポイントに着目して10倍株になる可能性を秘めた有望銘柄を探った。
キーポイントの1つ目は有力テーマだ。証券会社のストラテジストや株式アナリストといった銘柄分析のプロたちが「大化けが期待できる」と声をそろえるのが、「超高齢化社会」「宇宙ビジネス」「再生可能エネルギー」の3つのテーマだ。
2つ目は業種。今回は大化け株の候補が多く潜む半導体に注目した。同業界には、ニッチな分野に強みを持つ、高収益の企業が多く隠れている。製造工程ごとに有望株を深掘りした。
3つ目は成熟産業で業績を伸ばしている銘柄だ。10倍株の卵は不動産や物流といったオールドエコノミー業種にも眠っている。上昇局面で出遅れがちとされやすい業界の中に、ストック型ビジネスへの転換などを経て伸びている企業が多いからである。
4つ目はIPO(新規株式公開)。IPOで上場したばかりの銘柄にも、有望株は隠れている。スゴ腕の個人投資家による査定を通して有望株を吟味した。併せて参考にしてほしい。

(井沢ひとみ)

[日経マネー2023年5月号の記事を再構成]

日経マネー 2023年5月号 2つ取れれば資産1億円も! 特選10倍株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2023/3/20)
価格 : 800円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

資産形成に役立つ情報を届ける月刊誌『日経マネー』との連動企画。株式投資をはじめとした資産運用、マネープランの立て方、新しい金融サービスやお得情報まで、今すぐ役立つ旬のマネー情報を掲載します。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません