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ワクチン格差を映す株価格差 長期投資家は目線を先に 

積立王子への道(36)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

日本は今まさに緊急事態だけど…

日本では緊急事態宣言が拡大・延長されたが事態は深刻だ。オリンピック開催で緊張感が緩み、人流抑制も政府の思惑通りには進まず、ダラダラ続く飲食業への規制も効果を発揮していない。

新型コロナウイルスの感染者数が急増する局面では日常の経済活動は大きく制約され、飲食業や旅行・レジャーなどサービス産業が関わる消費回復は望むべくもない。国際通貨基金(IMF)による直近の今年の世界経済見通しでは、欧米諸国の成長率予測が軒並み引き上げられる中、先進国では唯一日本だけが0.5%も引き下げられた。主因はワクチン接種の進捗度合いの差だと考えられる。

欧米経済は次の段階に入ったんだ

昨年に感染急増を経験した欧米では焦眉の急の策としてワクチン対策を進めた。英国がいち早く集団接種を始め、他国も続いた。その結果、変異ウイルスが拡大する中でも劇的に死者・重症者数が減り、医療体制が大きく持ち直したんだ。

つまり欧米ではワクチン普及を機に、いたずらに感染を恐れていた当初段階からいわばインフルエンザと同じような「所与の存在」としてコロナウイルスを見る、次の段階に入った。文字通り「ウィズコロナ」の日常生活を前提とした経済環境に転換し始めてたわけだ。もちろんまだ変異ウイルスへの警戒感はくすぶっているが、生活者が平常スタイルに戻るなか個人消費も盛り上がっており、主要上場企業の4~6月期業績は内需系も含め大半が市場予想を超える好調さを見せている。

株価は経済を先取りして動く

一方の日本は……。オリンピック開催国にもかかわらずワクチン対策で後れを取り、高齢者以外には十分接種が進まなかった。今まさに医療体制が逼迫して死亡者数も増加傾向で、コロナは恐ろしい存在のままだ。若者世代まで2回のワクチン接種が広がるのは秋以降となると、ウィズコロナを日常のものにするのはまだ先のこと。もうしばらく経済には厳しい制約が加わることになる。

株式市場には、こうした日本と欧米の彼我の差に鑑み、将来を先取りして価格が動く特性があることを知っておこう。つまり株価が反映しているのは現在ではなく将来予測だ。足元の株価は今年から来年にかけての経済回復動向をいち早く織り込んで動こうとするから、成長期待の大きなマーケットでは価格が上昇基調となり、出遅れている経済に立脚した株式市場では株価が相対的に停滞する。まさに現状、米欧の株式市場が高値圏で安定推移する一方、日本株がさえないのはファンダメンタルズ(経済の基礎体力)の差が歴然と反映されているわけだ。日本だけでなく、ワクチン対応が遅れている国の株価は全般的に振るわない。

長期的メガトレンドの方がずっと大事だ

しかしながら、そのスピード差もやがては埋まり、コロナ感染が世界的に収束することもまた所与のものとすると、足元の株価差は短期的な事象に過ぎない。

長期投資家はIT革命の進展や脱炭素・クリーンエネルギー革命といった、アフターコロナ局面においてニューパラダイムとなるに違いない長期的な経済構造の大転換を見据えて、世界経済全体の長期に安定した成長軌道の中でお金をしっかり育てていくことの大切さを忘れないでほしい。

コロナ対応では日本経済は残念ながら後じんを拝したが、新たなグローバル競争のメガトレンドの中では充分に挽回できる機会もあるはずだ。ゆえに前回も説明した通り、日本も含めた世界全体をポートフォリオとして保有する国際分散投資の継続が何より重要になるのだよ。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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