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ピーター・リンチ流の有望株選び IR取材で情報引き出す

株式投資のレジェンドに学ぶ必勝テク(4)

編集部 株式界のレジェンドから投資の必勝テクニックを学ぶこの連載。前回は「テンバガー(10倍株)投資の教祖」といわれる、ピーター・リンチが登場しました。米資産運用大手のフィデリティで活躍したリンチの投資法は、「意識的に自分の仕事や近所の店舗を見て回り、観察する」というものでした。

みきまるさん(以下、みきまる) リンチ流の投資法で私がテンバガーを達成した銘柄の一つは、外食中堅の物語コーポレーションです。同社の「丸源ラーメン」で看板商品の「熟成醤油ラーメン肉そば」を食べた時に、「これだけうまいならいける!」と感じたのを覚えています。

私は定期的にお店を訪れていますが、いつも店内はにぎわっており、提供が速く、店員の接客態度も良いです。あと、お手洗いが奇麗なのもポイントが高い。「自分が消費者として色々な体験をする中で『感銘を受けるサービス』を提供していると感じること」は銘柄選びで重要だと思います。

IRは極上の情報源 

編集部 リンチは他にどんな投資法を実践してきたのでしょうか?

みきまる 「投資家向け広報(IR)への電話」です。リンチの名言で「私は10回の電話の取材のうちで1回くらいは何か普通ではないものを見つける」というものがあります。IR担当者からダイレクトに得られる「情報の鮮度と質」は極めて高い価値があり、テンバガーを見つけるきっかけになるからです。

編集部 IRは個人投資家一人ひとりの電話質問にきちんと対応してくださるものなのですね。

みきまる 私の経験上、ひどい対応を受けたことは基本的にありません。失礼な対応をされた企業の株価は結果として下がることが多いので、そういう意味でも電話取材は非常に役に立つと思います。

編集部 過去にはどんな企業に電話取材をされたのですか?

みきまる 成功例は、2014年に投資した近鉄グループのバス会社、三重交通グループホールディングスです。当時、同社は旧名古屋証券取引所1部に上場していたのですが、100株優待の新設や立会外分売を始めたため、「これは旧東京証券取引所1部への指定替えが目的では」と考えました。指定替えの条件を満たすため、優待新設や分売で株主数や流通株式数を増やそうとしているとみたのです。条件をクリアし指定替えが発表されれば、株価は上昇する傾向があったため、IRに疑問をぶつけてみました。

女性担当者は初め、「指定替え目的ではありません」と答えました。ただ、そうでないならこのタイミングで流動性向上施策を打ち出すはずがない。疑問を解消すべく質問を重ねたところ、「答えられるわけないでしょ!」と急に声を荒らげられました。

そこで角度を変えて、「今回の施策を受けて東証1部指定基準は全て満たしていると思うのですが、その私の理解に間違いはないでしょうか?」と尋ねたところ、しばしの沈黙の後、蚊の鳴くような声で「……そうです」と。もちろんはっきり指定替え目的と言われたわけではありませんが、これはそうなのだと思い、電話しながら株を購入し始め、結果的に大きな利益を上げることができました。

編集部 電話で問い合わせたからこそ知り得た情報ですね。

みきまる 電話は相手の感情が伝わりますからね。ただ、もちろんそのためには先方に失礼がないよう、しっかり下準備をしなければいけません。「この投資家は何を言っているんだ」というレベルでは絶対いけない。相当な勉強は必至で、自分へのプレッシャーになります。

あと私は、電話する時は必ず「御社のライバルはどこですか?」と聞きます。皆、同業他社を意識していますから、答えた企業が優良銘柄であるケースもあります。

編集部 IR担当者の回答が、投資の大きなヒントになるんですね。

みきまる 担当者が席を外していた場合もそう。「折り返しますので、お電話番号を教えてください」と言う企業とガチャ切りする企業がありますが、株価が伸びる会社は大体前者です。

態度からも読み取れる

みきまる 応対の態度から読み取れたケースの一つは、10年くらい前に投資した結婚式場運営のアイ・ケイ・ケイホールディングス。担当男性は「弊社くらいお客様のことを考えている会社はありません」と自信満々でした。そういう会社は伸びるケースが多いです。逆に婦人服製造販売のクロスプラスは当時、業績悪化に関する質問に対して「業界全部悪いよ。逆にどこか良い企業ある?」とため息をつきながら答えました。電話するメリットは良い会社を見つけることより、投資対象から外す銘柄を見つけることにあるのかもしれません。

編集部 なるほど。電話取材で気を付けるべきことはありますか?

みきまる 私の場合、電話をし過ぎてトーク術が上がってしまい、返答が予測できてしまうようになりました。普段ならば業績の下方修正を発表しそうだと判断できる局面で、電話をしたことで情が湧いて投資してしまったこともあります。

あとは、株式を多く保有している場合は必ず伝えた方がよいです。実際私も、大株主で買い増しを考えていると伝えた瞬間、先方の態度が一変したケースがあります。

編集部 ありきたりな返答しかしなかったり、電話番号を記載せずに問い合わせフォームからしか連絡できなかったりする企業への対応はどうですか?

みきまる 最近はメール対応だけの企業も多いですが、それでも伸びる企業は1日で返答が来ます。遅い企業は1週間後、クックパッドは返答すら来ませんでした。ここからも、株主に対する姿勢が伝わってきます。

リンチはまた、株式理論についても語っています。たくさんの銘柄を「大きいいけす」に保有し、自信が持てる銘柄を買い増して昇格させる。相場が下がりそうだからといって現金化するのはマーケットタイミング理論にのっとると、負けるもとです。1銘柄だけで勝負するのは避けるべきです。

みきまるさん(ハンドルネーム)
優待株で割安な銘柄を選別し長期保有する「優待バリュー株投資」を実践し、数億円の資産を築いた兼業投資家。ブログ「みきまるの優待バリュー株日誌」は、優待族のバイブルとして大人気。

[日経マネー2023年1月号の記事を再構成]

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