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会社が運用してくれる 企業年金という「安心」

今から考えたい「退職金」(3)

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新社会人は会社の企業年金制度をまず確認してみよう

今月は若いうちから「退職金」に関心を持ってみよう、というテーマです。

あなたの老後を支える大事な資産形成枠のひとつである会社の退職金制度を知ることで、「この会社、いい会社じゃないか!」と思うかもしれません。それは働きがいや仕事のやる気にもつながってきます。

「いい会社」と思えるひとつの要素は、企業年金があることです。

企業年金という「外部保全」

2000年前後のITバブル崩壊、2008年のリーマン・ショックの直後、企業年金の運用は大きく低迷しました(といっても市場全体が下落したので企業年金にとって避けるのは難しいことでした)。

当時、目標額に対する積み立て不足が数十%となった企業年金制度は不安視されたものですが、私からみれば「70~80%は外部保全されているいい制度」でした。

実は退職一時金制度に「資産の外部積み立て保全」の義務はありません。「100%積み立て不足」という会社もしばしばです。こうした会社では、予期せぬ倒産時には満額がもらえないこともあります。

しかし、法で定められた企業年金制度を持つ場合、計画的に企業外部へ積み立てを行うことが求められます。そして、そこに積み立てられたお金は、会社のビジネスのために用いることができず、社員の将来の支払いにのみ用いられます。

企業年金があるということは、社員の老後財産の受給権が相当の割合で確保されているということなのです。

会社が代わりに運用してくれる確定給付型

現在、会社員の約950万人以上をカバーしているのが確定給付型の企業年金制度です。簡単にいえば、会社が積み立て、管理、運用、給付まで責任を負っている仕組みです。運用低迷時の積み立て不足は会社が穴埋めをする義務を負っています。

会社に運用を委ねるといっても、私たちの将来の企業年金がもらえない心配はあまりありません。

まず、リスク管理を行った分散投資を行いますので、全額なくなるような心配はありません。今の企業年金のほとんどは、株価の回復などを受けて積み立て不足もありません。むしろ、超過収益を確保しているほうが多くなっています。

また、高いリスクを取って高利回りを目指すよりは、中程度のリスクを取りつつ収益確保を目指す企業年金が主流です。リーマン・ショック級の下げ相場がやってきても、影響は限定的になるようリスク管理されています。

会社に準備をしてもらっている企業年金額を確認しておきたいところです。確定給付企業年金でどれくらいもらえるかは、社内規定があるので確認してみましょう。退職金と同様、水準は各社各様だからです。見込み額が分かると、個人の老後資産計画も立てやすくなります。

自分で運用し成果は丸取りの確定拠出年金

もう一つの企業年金制度は、750万人が加入している企業型の確定拠出年金(DC)です。個人型確定拠出年金(iDeCo)が5月末の段階で200万人に達したとみられ、ニュースとなりましたが、実は企業型のほうはその3倍以上の加入者数があります。

こちらは確定給付型と反対に会社が責任を負うのは掛け金の拠出までで、資産運用はひとりひとりの判断で行われる制度です。運用結果はひとりひとり異なってきますが、それがそのまま、自分自身の老後資金となる仕組みです(厳密には制度のマネジメントの責任が会社にあり、適切な制度運営が求められる)。

iDeCoではその税制優遇が注目されていますが、企業型DCも同様のメリットが用意されています(会社が出す掛け金は会社が、個人が追加拠出したマッチング拠出掛け金は個人が、それぞれ控除対象となる。運用期間中の運用益も非課税)。

自己責任といっても、基本的な投資方法については会社が「継続投資教育」という研修機会を提供します。金融機関のウェブサイトでEラーニングのコンテンツが提供されていることもあるのでぜひアクセスしてみてください。

なお、確定拠出年金については個人に付与されたIDとパスワードで、ネット銀行やネット証券の残高をみるように、自分の資産額を1円単位で確認することができます。これもアクセスできるようにしておきましょう。

自分の加入している制度、金額を知る

日本では確定給付型と確定拠出型という、異なる特徴を持つ制度が企業年金制度の両翼となって会社員の老後を支えています。自分が加入しているのはどちらの制度か(あるいは両方か)、ぜひ社内制度を調べてみてください。

一般に、会社は「退職金・企業年金制度の社内PR」に無関心です。ですから、自分でチェックする必要がありますが、知れば知るほど制度の価値が分かってくるはずです。

興味がない、という人は「会社に1000万円の積立定期預金を代わりにやってもらっているかもしれない」と考えて調べてみましょう。そう思えば無関心ではいられないはずです。

そして、「(老後2000万円)-(退職金・企業年金のモデル額)」のような計算をしてみましょう。それがあなたの自助努力に求められる資産形成の目安です。自力で2000万円ためると思うと思考停止してしまいますが、会社の制度を理解することができれば、iDeCoやつみたてNISA(積み立て型の少額投資非課税制度)を使って老後に備えるイメージも現実的なものとなってくるのです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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