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頑迷な日銀と株式市場の粘り腰(澤上篤人)

「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信創業者

日銀は7月下旬の金融政策決定会合でも、大規模な金融緩和策の維持を決めた。

6月の消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2.2%の上昇となった。上昇率は3カ月連続で2%を超え、日銀の黒田東彦総裁が2013年3月の就任当初から掲げてきた2%のインフレ目標は達成された。

また、世界的にインフレ圧力は高まっており、日米金利差の拡大による円安の進行は輸入物価を押し上げる。エネルギーや資源、そして食料の大半を海外からの輸入に依存している日本にとって、海外のインフレ進行と円安は国富の流出に直結する。それでも、黒田総裁は金融緩和を堅持するという。別の報道によると、「金利が上がると中小企業の経営を圧迫する」とも黒田氏は発言していた。

物価高と金利上昇という刃

どうして、そこまで金融緩和に固執するのだろう? 黒田総裁は一貫して「金融緩和こそが日本経済のデフレ脱却と成長率を高める施策」と世に訴えてきた。確かに日本経済のデフレ現象は影を潜めた。しかし、経済成長率は一向に高まらない。アベノミクスと金融緩和をセットにして、成長路線とやらをひた走ってきたが、日本経済は相変わらず低調のままだ。

そろそろ、日本も米欧も金融緩和の是非を一度検証してみてはどうだろうか。日米欧とも金融緩和でマネーを大量に供給しさえすれば経済は好転すると呪文のように唱えてきた。だが、ほとんど成果は上がっていない。一部の高所得者層の金融所得だけは著しく増加した。一方で大多数の人々の低所得化が進んだ。米国などでは中産階級の没落が憂慮されている。

ここにきて、世界的なインフレ圧力の台頭で米欧とも利上げを余儀なくされている。唯一日銀だけが利上げに抵抗しているが、さてどこまで頑張れるものだろうか。

インフレは実体経済からの警鐘であり、それを鎮めようとする利上げは、これまでの金融緩和政策を土台から崩していくものだ。

実体経済からの警鐘? そう、エネルギー・資源・食料などの価格上昇をもたらしているコストプッシュ型のインフレも、じわじわと高まる賃上げ圧力も、実体経済から湧き上がってきたものだ。そのインフレ圧力を抑えようとする利上げは、先進国が中心となって進めてきた金融緩和の否定である。

前回でも書いたように、コストプッシュ型インフレは根が深く案外と長引くもの。それに対する利上げも長引く。ということは、先進国が中心となって進めてきた金融緩和もそろそろ崩れだすのだろう。それは、世界の金融緩和バブルの崩壊につながっていくはずだ。

案外としぶとい株式市場

世界の株式市場は、米国市場を中心に昨年の秋ぐらいから明らかに変調を来している。大きく下げては戻すを繰り返しているが、高値は徐々に切り下がってきている。それでも、投資家たちはいまだにカネ余りバブル高の余韻を引きずっているようだ。

米国では米連邦準備理事会(FRB)が、6月に続き7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも政策金利を0.75%引き上げた。今年に入ってからの利上げ幅は2.25%に達したが、投資家たちはほとんど無視している。普通は金利が上がると企業の収益動向にはマイナスということで、投資家は警戒するものなのだが。

こうした株式市場のしぶとさの一要因として、機関投資家の動向が挙げられよう。今や世界の機関投資家の大半が毎年の成績を追いかけることをもって運用としている。マーケットにどっぷり浸ってひたすら値上がり益を狙う。あるいは、売買の値ザヤをいかに積み上げていくかで、高度な運用テクニックやディーリング手法を駆使している。

よくいわれるように、彼らは「音楽が鳴っている間は、ダンスを踊り続けなければならない」立場にある。独自の投資判断で利益を確定して、相場を降りることは許されない。仮に、「そろそろ売っておこう」と上昇相場から離脱するとしよう。その後も上昇相場が続くと、競争相手との成績に差がついてしまう。それは致命的であり、運用者は何としてもそれを避けねばならない。

かくして、いずれの機関投資家もマーケットにずっと追随していく。その現象が今起きているのだろう。金利も上昇してきたし、「もうそろそろ」と思っても、誰も自分から売りに入れない。それでいて、何らかの突発事故で株式市場が大崩れするや、大慌てで総売りに転じる。昨今の株式市場はそんな状況下にあるのだろう。

澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年にあえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。
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