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ECB、南欧など国債急落に抑止策 臨時理事会で決定

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【ベルリン=南毅郎】欧州中央銀行(ECB)は15日、金融市場の動向を議論する臨時の理事会を開き、南欧などの国債価格急落の抑止策を決めた。ECBが9日の理事会で7月に11年ぶりの利上げに踏み切る方針を示して以降、イタリアなどの南欧諸国の国債利回りが急上昇(価格は急落)しており、市場の安定に向けた対応策が急務になっていた。

理事会後に公表した声明文では「パンデミックがユーロ圏経済に脆弱性を残している」と明記した。新型コロナウイルス禍で南欧を中心に景気回復が鈍く、足元の市場の急変が利上げの支障になるとみているもようだ。

具体的には新型コロナ危機対応で導入した資産購入の特別枠を使う。少なくとも2024年末までは、コロナ対応で購入した保有資産の総額は減らさず、債券の償還があれば再投資する。この際、特定国の国債を厚めに買うなどの対応をとるとみられる。欧州域内の分断を避けるための措置を講じる方針も示した。

ECBは9日の理事会で、インフレを抑制するため7月中に0.25%の利上げに踏み切る方針を示し、9月には0.5%の大幅利上げも示唆している。

米連邦準備理事会(FRB)は15日まで開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅利上げに踏み切る見込み。主要中央銀行の相次ぐ利上げで国債市場では金利上昇圧力が高まっていた。

特に欧州では、スペインやイタリアなど南欧諸国の国債利回りの上昇が目立っている。相対的に財政状況が盤石でないため、投資家の売りが出やすい状況だ。金利の上昇は資金調達コストの上昇などを通じて景気を冷やすため、ECBは利上げを進めると同時に急速な金利上昇にも歯止めをかけたい考えだ。

臨時会合の開催が伝わった15日朝方の欧州市場では、イタリアの10年物国債の利回りが一時4%を割り込んだ。前日には4.2%と13年10月以来、8年8カ月ぶりの高水準を付けていた。ドイツ国債も1.7%と8年5カ月ぶりの水準だが、南欧諸国を中心に急ピッチで利回りが上昇し金利の域内格差が広がっている。外国為替市場ではユーロ相場が上昇し、1ユーロ=1.05ドル前後と前日よりユーロ高・ドル安に振れた。

ECBのラガルド総裁は9日の記者会見で「ユーロ圏全域への金融政策の波及を妨げる分断がないようにする必要がある」との考えを示していた。市場からも「最大のリスクはイタリアを中心とした債務持続性を巡る懸念の再燃だ」(米ゴールドマン・サックス)として不安視する声が出ている。

ECBは新型コロナウイルス禍の20年4月にも臨時の理事会を開き、銀行に資金供給する際に必要な担保の基準を緩めた経緯がある。新型コロナの感染拡大でイタリア国債の格下げ懸念が浮上していた時期で、金融システムの動揺を予防的に封じ込める狙いがあった。

一般的な中央銀行と異なり欧州各国の景気や物価に広く配慮が必要なため、ECBは政策運営で難しいかじ取りを迫られる。急速な市場環境の変化が金融機関の経営に悪影響を及ぼす恐れもあり、ウクライナ危機が長引くなかインフレ抑制だけでなく金融システムの安定にも目配りが必要になっている。

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