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仕組み債、情報開示に課題 日証協が販売ルール発表

日本証券業協会は15日、リスクが高く複雑な仕組み債に関する新しい販売ルールを発表した。退職金の大半を使わせるなど不適切な事例があった反省から、資産に余裕があり投資経験もある富裕層に絞るなど対象を厳しくする。説明責任を重くする一方、顧客負担の開示などはルールに入れず、情報開示に課題は残る。

新ルールは意見募集を経て7月に施行する。商品説明資料には「複雑な仕組み債」であり、「投資初心者向けの商品でない」ことを明記する。高金利や高格付けを強調して顧客の誤解を招くような販売もしないように促す。

一定額以上の金融資産を持ち、投資経験や金融知識のある人を販売対象として限定する。「一定」の範囲は金融機関がそれぞれの判断で決める。例えば、東海東京証券は現状で仕組み債の販売先を原則として金融資産1億円以上の富裕層に絞っている。保有する金融資産に対してリスクの高い金融商品の占める割合を一定以下にすることも条件にする。

仕組み債の取り扱いを始めたり、商品数を増やしたりする場合、代表取締役らによるトップの関与を求める。日証協の森田敏夫会長は「リスクの高い商品は顧客影響が大きい。販売するかどうかを含めてトップが積極的に関わるべきだ」と話す。

仕組み債の販売状況を金融庁が問題視したことを受けて、銀行や証券会社はすでに自社判断で販売を制限している。仕組み債は広く一般投資家に販売する公募型と、富裕層や機関投資家に限定する私募型がある。公募型は野村証券などの大手証券や銀行が取り扱いを停止した。

私募型はプロがリスクを判断する機関投資家や資産に余裕のある富裕層に絞るなどして販売を続けるところもある。ある中堅証券では「こちらから仕組み債の営業はせず、顧客から要望があった場合だけ対応する」という。

三井住友銀行は2022年7月から仕組み債の販売や勧誘を全面的に停止した。みずほフィナンシャルグループはみずほ証券のみで仕組み債を扱ってきた。「顧客本位の業務運営の観点から改善すべき点があれば適時検討する」(みずほ証券)という。

仕組み債は顧客の負担するコストが見えにくい点が問題とされてきた。販売時の手数料は発生しないが、実質的なコストを販売価格に上乗せして販売するケースが多い。金融庁によると、個別株の値動きに連動する他社株転換債(EB債)の実質コストは8〜10%になる。販売価格を100とすると、仕組み債の実質的な価値は90〜92で、残りの8〜10は手数料として金融機関が得ている計算になり、顧客は割高な価格で仕組み債を買っていることになる。

金融庁は金融機関が仕組み債をつくる際にかかる「組成コスト」を開示して、顧客負担が見えるよう働きかけてきた。日証協は自主規制ルールでなく、販売会社が任意で作成する「重要情報シート」で開示するよう検討を進める。

「コストはできる限り開示するのが重要だ」(日証協の森田会長)とするが、仕組み債をつくっているのが海外の金融機関ということもあり足取りは重い。投資家保護には適切な情報開示は欠かせず、改善していく努力は欠かせない。

(湯浅兼輔)

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