スゴ腕が年末に向けて狙う投資対象 3つの共通項
下げ相場になっても勝つ投資戦略(1)

インフレとそれに伴う米国の利上げ、終わりの見えないロシアのウクライナ侵攻など、今の株式市場には数多くの不安材料がある。2022年に米国株が下落し続けたこともあり、今後の投資をどうするかを悩んでいる人も多いはず。
そこで、年末年始から23年春にかけての株式市場が下げ相場になったとしても勝つための戦略を、緊急取材で探った。戦略を教えてくれたのは、まず1億円を超える資産を築き、22年の難しい株式市場もうまく乗り切って利益を上げたスゴ腕個人投資家たちだ。
上昇トレンドの銘柄を狙う人、逆に株価が下げて割安になったところを狙う人など、話を聞いたスゴ腕投資家たちが得意とする手法はバラバラだ。しかし、年末から23年春にかけての相場を楽観しておらず、厳しい相場を前提に戦略を決めている点では共通している。興味深いのは、彼らが注目する投資対象に3つの共通項があったことだ。
(1)IPO狙いは初値売りのためだけにあらず
一つ目がIPO(新規株式公開)だ。といっても、「ブックビルディング(需要申告)に当選してからの初値売り」を低リスクなイベント投資として重視するだけではない。長期投資の対象とする銘柄も、IPO銘柄の中から選ぶと効率的。そう考えている人が多かったのだ。
「IPO銘柄には伸び盛りの企業が集まり、上場後の大化け確率が高いと感じる」。そう語るのは、力強い上昇トレンドに乗った銘柄を徐々に買い増していく「新高値ブレイク投資」を得意とする個人投資家のDUKE。さん(ハンドルネーム)だ。22年も既に1億円超の利益を上げているDUKE。さんは、「IPOの中から、さらにチャートの強い銘柄を選ぶのは効率的」と語る。
成長性が高いのに株価が割安な「割安成長株」への投資で2億5000万円を超える資産を築いた会社員投資家、弐億貯男さん(ハンドルネーム)も、銘柄探しの「母集団」としてIPO銘柄を重視している。「成長性の高い企業が集まるが、まだ知名度が低く、割安に放置されたままの銘柄も少なくない」。上場後のIPO銘柄を一通り見て、株価指標が割安なものを探すと、効率よく割安成長株が見つかるというのだ。
(2)「極端な割安株」なら下げ相場にも強い
2つ目は「極端な割安株」。株価指標で見て極端に割安な銘柄なら、下値不安は小さいとして狙うスゴ腕投資家が多い。資産2億円の兼業投資家、JACKさん(ハンドルネーム)は、「ここから相場全体が厳しくなれば、むしろバーゲンセールの銘柄が増えるチャンスだ。既に、配当と優待利回りの合計で10%に迫るような銘柄もある。そうした銘柄はやはり、日経平均が大きく下がる時期も下値は堅いはず」
統計的なアノマリー(経験則)に基づく投資で億を超える資産を築いたまつのすけさん(ハンドルネーム)も割安株を重視する。「歴史的に見て、この銘柄がこれ以上に下がったことはない」などという経験則を無数に調べて把握し、この基準に照らせば勝率が高いタイミングで売買するのがまつのすけさんの投資法だ。
例えば22年に成功した銘柄の一つがソフトバンクグループ。22年3月、投資先企業の損失などを理由に大きく下落し、PBR(株価純資産倍率)がコロナ禍初期の20年3月を下回る0.7倍以下まで下げていた。「同社のPBR0.7倍は歴史的にも大底と言えて、22年がコロナショックの時より悪い環境とも思えなかった」ために買い。狙い通り、その後1年未満で株価は回復し、利益確定に成功した。

(3)低リスクなイベント投資を逃さない
3つめとして、低リスクな「イベント投資」の機会を重視するのもスゴ腕投資家の共通項だった。IPOのブックビルディングへの応募や、TOB(株式公開買い付け)、立会外分配といった、トレードの勝率が高い特殊なチャンスを丹念に探して拾っている人が多い。イベント投資は、1回当たりの利益は少ない場合も多いが、リスクの低さを重視していると言う(スゴ腕たちの注目する銘柄や詳細な戦略は、11月21日発売の日経マネー23年1月号に掲載)。
(臼田正彦)
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2022/10/21)
価格 : 750円(税込み)
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