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長期投資で企業を応援するということ(澤上篤人)

「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信創業者

我々、本格派の長期投資家が株式投資をするに当たっての企業選別は、世の一般的なものとは大きく違う。

一般的に株式投資というと、値上がりが見込める銘柄をいち早く発掘しようとする。この会社は将来伸びる可能性が高いとか、業績向上が期待できるとかで、価格の上昇が見込める銘柄を選択することが鍵となる。

そういった銘柄発掘に参考となるような情報を、『日経マネー』などの雑誌は、これでもかと提供してくれる。「この銘柄が本命だ」といった特集も毎月組まれている。

機関投資家も、最近は多くがインデックス(株価指数)の先物などに運用をシフトしているが、いまだ個別株投資をしているところは、やはり値上がり期待が企業リサーチの中心テーマである。まあ機関投資家らしく、企業が将来発展する可能性などを分析してはいるが、狙うは株価の上昇だ。

そんなわけで、個人投資家も機関投資家の個別株投資も、株式市場で人気化するであろう投資テーマや企業を、うの目たかの目で探し求める。株価が大きく上昇してくれるのであれば、どんな業種やビジネスでも構わない。株価上昇がすべて、勝てば官軍だ。

そういうことだから、株式市場では時として後々、社会問題となるような企業でも「儲かりそうだ」と大騒ぎする。それでもって、社会のひんしゅくを買うこともしばしばである。

一方、我々本格派の長期投資家は、投資する対象企業の選別には、自分の人生観や社会意識を反映させる。「儲かればどんな企業でも構わない」ではない。

そもそも投資というものは、将来をつくるためにお金に働いてもらうことである。将来社会を築いていくという以上は、どんな将来にしていきたいかの夢や思いがあって当たり前。そして、その夢をかなえていこうと強く意志を働かさねばならない。「こんな将来を」と願えば、おのずと投資先企業は選別される。思い描く夢に向かって、同じような方向性で頑張る企業を応援したくなる。それが本格派の長期投資家の銘柄選別だ。

夢を共有できる企業を選ぶ

我々は間違っても、株価が上がりそうだからとの観点で銘柄を選んだりしない。あくまでも、将来社会への夢や思いを共有できる企業かどうかで厳しく銘柄を選別する。そして、そういった企業をとことん応援することをもって、長期の株式投資としている。

きれいごとにすぎる? 甘っちょろい? 切った張ったが株式投資の世界、夢だとか思いだとか笑止千万だよ!

どうぞ、好きに言ってくれだ。投資は結果の世界。甘っちょろいとか言ってくれたが、我々本格派の長期投資家が出している成果を見てみろだ。それも10年、20年と積み上げてきた成果だ。ひたすらマーケットを追いかける世の投資家たちと、比べてみればいい。

本物の長期投資のすごみ

投資は結果がすべてと書いたが、要は「安く買って、高く売る」に尽きる。安い時に買って、高くなってから売れば、投資収益など放っておいてもついてくる。

安い時? そう、暴落相場なら安いに決まっている。そこで買いに行けば安く買える。皆が売り逃げに走る暴落相場を、平気な顔して買い仕込むのが長期の株式投資家の真骨頂なのだ。

暴落相場を買いに行く? そうさ、将来への夢を共有できる企業の株式がボロボロの安値にまで叩き売られているのだ。「こんな立派な企業なのに冗談じゃない。だったら、徹底的に応援してやるわい」と断固たる買いに入るわけだ。

だから、選別する銘柄も最近までのGAFAとかテスラとか、株式市場で大人気となった企業などではない。むしろ日々の生活に身近なビジネスを展開する、10年先、20年先もずっと頑張ってほしいと思えるような企業群だ。

いつの暴落相場も時間がたてば収まっていく。そして経済情勢や投資環境が良くなるにつれて、株式市場も上値を追い始める。そのあたりからは、儲けたいと目をギラギラさせている一般投資家の出番だ。いってみれば、にわか応援団が大挙して買い群がってくる。

そういった、にわか応援団が買い出動してきたら、我々は薄く薄く売り上がっていく。暴落相場の安いところを買い仕込んでおいたから結構な投資収益となる。儲けよう儲けようとガツガツしなくても、売却益は転がり込んでくる。

投下資金が増えて戻ってくる。それが投資リターンというものだ。株式投資なんてそれだけのこと。投資は難しいとかリスクが多いとかの嘆き節はどこにもない。

澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年あえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。

[日経マネー2023年5月号の記事を再構成]

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著者 : 日経マネー
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