イエレン氏、CPI後の市場激動には懐疑的
週末もNY市場関係者の間では10月消費者物価指数(CPI)の発表後のドル急落、株急騰の持続性について様々な議論が交わされた。特に米連邦準備理事会(FRB)高官発言と並び注目度が高かったのが、イエレン財務長官発言だ。同氏はインドネシアで開催される20カ国・地域(G20)会議に向かう途中でインドに立ち寄り、そこで記者団の質問に答えるかたちで10月CPIの上昇減速に言及している。
「インフレ基調の転換点か否かは分からない。(10月CPIは)1つのデータポイントにすぎない。私は1つのデータだけで深読みはしない」
「消費者物価データが予測より低めに出たことは、高めに出るより好ましい」
「家賃は高止まりにもかかわらず、特にコアの数字が予測よりかなり低かった」
「家賃は落ち着いてきてはいるものの、コアインフレ率に上昇圧力をかける状況は続くであろう。今後、既存の家賃契約が期限で更新されると、現在の高い家賃水準に調整されるからだ」
「サプライサイドのインフレが落ち着けば、コアインフレ率も減速するが、私は1カ月のデータで過度の読み込みはしない」
12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで、もう一回の雇用統計とCPI発表が控えている。
イエレン氏は労働経済学者で前FRB議長だが、現職は民主党政権の財務長官だ。バイデン大統領の経済政策がインフレ抑制最優先ゆえ、イエレン氏もドル安が輸入物価上昇要因となることは軽視できまい。
さらに米財務省は10日に発表した為替報告書で、日本を依然「為替監視リスト」に載せている。これまで今回の日本の為替介入に容認姿勢を示唆してきたが、今後、再度ドル高・円安に振れると寛容的な態度が変化する可能性もある。
今回のCPIショックの震源地となった米国債券市場で米国債利回りが一日で30ベーシスポイント(bp)前後も急落するという異常事態が発生したことも注目されている。
その背景として量的引き締め(QT)により、FRBという米国債最大の買い手がいなくなったことで、米国債市場の流動性が急減してボラティリティーが激しくなったことが懸念されるのだ。
今回のCPI発表が10日木曜日。11日金曜日は米国ベテランズ・デーにより債券市場が休場なので、米国債売りポジションが3連休前に急速に巻き戻された可能性もある。14日のニューヨーク市場の出方が当面の方向性を探る意味で重要である。

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