新しいNISAが実現に導く「継続は力なり」
積立王子への道(72)

ヤングこそ実践可能な長期積み立て投資
ヤングの君たちが今から将来における経済的自立を見据えて長期積み立て投資を実践しているのは実に素晴らしい。ちょっと前にはFIRE(Financial Independence, Retire Early=投資で経済的に自立して早期退職する生き方)ブームもあったし、来年から始まる「新NISA(少額投資非課税制度)」の制度拡充を機に「できるだけ多く投資しよう」と気合の入っている若者もいるかもしれないが、無理は禁物だ。
今回の改革の大きな特徴に非課税期間の無期限化がある。投資において何より重要なことは長く続けることであり、長く続ければ続けるほど複利パワーが働いて雪だるまのようにお金が加速度的に育つ。無期限化はそれを実現させるための改革なんだ。まさに「継続は力なり」さ。
期間は長く、額は無理なく
おシリが決まっていると期限内での成果を焦るばかりに、拠出額の方で無理をして身の丈に合わない金額を投じてしまいたくなる。そうなると日常生活にしわ寄せが及び、最終的に積み立て投資に挫折してしまいかねない。
そうした焦りは無期限化の実現で不要になる。非課税期間がエンドレスになると同時に1人当たり1800万円の「生涯非課税投資枠」が設定された。枠の使用期間も当然無期限だ。今のつみたてNISAは年間非課税投資枠が40万円で、翌年になると枠が消滅してしまうが、新制度ではその懸念はなくなる。自分の無理のない範囲で拠出可能な金額をベースに、人生プランに沿って生涯非課税枠を使った投資を完成させればいい。
若者は半世紀投資も計画できる
例えば20歳から積み立て投資を始めたとしよう。将来70代まで仕事を続けることを前提にするなら現役世代の間ずっと、つまり50年スパンの時間軸で積み立て拠出を考えることができるわけだ。70歳までざっと50年間で1800万円の累積積み立て投資を計画するなら、無理して多額を拠出する必要はない。若い時は所得が少ないが年齢を経るに従い所得は増えていくものだ。年代ごとに積立金額を増やしていき、最終的に生涯投資枠の投資を完了させる――。こんな計画的な活用が図れる。
「なる早投資枠完成」もあり得る
一方、長期資産形成においてより大きな将来成果を欲するなら、なる早で生涯枠の投資を完了させるに越したことはない。仮に30歳から始めて45歳までに1800万円を投資完了させ、そこからはずっと生涯枠をフル活用するとする。その場合、つみたてNISAの年間非課税限度額120万円をフル投資、つまり毎月10万円の積み立てによって15年間で生涯枠投資が完成する。長期投資に回す元本を早期に積み上げられれば、そこからの複利雪だるま効果は一段と大きく期待できる。
毎月積み立ては邪念からの防波堤になる
いずれにしても、現状ではどちらか片方しか選べない一般NISAとつみたてNISAが新制度では一本化される。一般NISAは「成長投資枠」に改名されるが、積立王子たるボクとしてはあくまでつみたてNISAの追加枠と捉えて、丸ごと1800万円の生涯枠を計画的な積み立て投資で活用していくことを強くお勧めしたい。成長投資枠で欲張って大きな金額を一括投資してしまうと、その日から相場が気になって精神衛生上よろしくない上、値動きが長期投資の継続を妨げる障害となりがちなのだ。毎月積み立て投資はそうした邪念に対する強力な防衛機能を果たしてくれる。

積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。