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男性も育休取りやすく 休んでも収入は8割確保

2022年 マネーの世界の変化予想(3)

2022年、マネーとライフの世界で大きな変化がひとつあります。「男性の育児休業」について、より積極的に取得を促していくための法改正があります。

女性は共働きと子育てを両立 男性はどうか

平成の30年間はしばしば「失われた」と形容されますが、社会の変化が確実に起きた期間でもあります。ひとつは「女性が男性とともに働く社会」が実現したことです。それによって「共働き夫婦が中心となる社会」が誕生しました。

昭和の時代は男性が家族全員を養う収入をひとりで稼ぐ「片働き」世帯が共働き世帯の2倍ありましたが、これがほぼ同数となり、完全に逆転したのが平成の30年間でした。今では共働き世帯は片働き世帯の2倍あり、子育てしながら共働きというのがスタンダードになっています。

しかし、「ワンオペ育児」という言葉が象徴しているように、女性は仕事もがんばりながら家事・育児の多くも背負っているという問題があります。男性の家事・育児時間は増加傾向にあるものの、女性には及びません。

男性(というより男性中心の企業社会)は共働きと子育ての両立について、まだ頑張りが不足しているように思えます。

男性の育休を「取得するもの」と捉える時代へ

2022年4月、改正育児・介護休業法が施行されます。男性の育休について、もともと取得は可能であったものの利用率があまりにも低いことを踏まえ、段階的な見直しをかけていくものです。

まず、4月からは育休を取得しやすい環境整備が行われます。育児休業(後述する産後パパ育休を含む)について企業は、「研修を実施する」「相談窓口等を設置する」「社員の事例をとりまとめ共有する」「育休取得促進の方針を策定し示す」といった取り組みを行います。

「取得する本人」だけではなく「上司や職場環境」にも変化を促していくことが重要なポイントです。本人が取得したくても上司がネガティブでは取得率の向上が期待できないからです。

環境整備にあわせて、妊娠・出産(本人および配偶者)の申し出があった社員に対して個別に制度の周知を行い、利用の意向確認を行うことが会社には求められます。もちろん「男だし、取得しないよな?」のような意向確認は許されません。

制度を周知する際には、仕組みだけではなく育児休業給付金や社会保険料についても説明するよう求められます。やはり、男性が育児休業を取得するかどうかの判断には収入の問題が大きく影響しますから、「基本的には問題ないよ」という情報を提供することはとても重要です。

休業前の給与水準の67%を給付

育児休業給付金とは雇用保険制度の給付のひとつで、男女問わず育児休業で仕事を休んだ場合に支給されます。休業前の給与水準の67%相当が支給額となります(給付の条件については総務担当者などとよく確認をしてください)。

育児休業期間中は、社会保険料負担は免除されます。厚生年金保険料や健康保険料は大きな負担ですが、この支払いは本人も会社も全額免除されます。もちろん健康保険の給付(病気になったときなど)は受けられますし、将来の年金にもマイナスはありません(保険料を納めたものとしてデータが記録される)。

ちなみに育児休業給付金は非課税です。社会保険料と税金のどちらも天引きされないため、手取り換算だと休業前の約8割相当の収入が確保されるという試算を厚生労働省が示しています。100%といかないのは残念ですが、かなり手厚い給付ということがわかります。

そのほか、有期雇用労働者であっても育休を取得できるよう法整備が行われます。

男性の育休取得の機会が広がる

22年の法改正は秋にもあります。10月から、産後パパ育休(出生時育児休業)という制度が創設されます。

これは通常の育休とは別に、子どもが生まれた直後の8週間以内なら4週間まで取得できるものです。分割して2回取得することも可能です。現在、男性が取得できる育休は原則一度きりでしたので、子どもの誕生時に育休を取得すると「妻が復職する時期にも休みを取りたい」「保育園入園の数週間は休みを取りたい」という希望を通常の有給でやりくりしていました。

今回の産後パパ育休と通常の育休は別々に取得できるので、複数回に分けて育休を取得することができるようになります。さらに、通常の育児休業の分割取得の仕組みもスタートするため、産後パパ育休に加えて最大4回に分けて育休をとれるようになります。

これにより「子どもの誕生直後の妻が大変な時期」「妻の復職直後で余裕がない時期」「妻が体調を崩したので一時的に休みたい時期」のように男性が子育てと家事に積極的に関わっていくことができるようになると期待されます。

出産に立ち会うことだけが男性の育休ではありません。今回の改正により、夫婦の生活や働き方を踏まえた柔軟な育休活用が可能となります。

こちらも、もう一つの課題は本人だけではなく、職場全体の理解や応援の体制づくりとなります。自分の会社は男性育休に好意的かどうかは、子どもが生まれる前からよく見ておきましょう。もし「男性が育休? バカじゃないの?」というような雰囲気の会社なら、男性は転職してしまったほうがいいかもしれません(そういう古い価値観の会社は、長い目で見て成長性も低そうです)。

ちなみに、育休の取得状況の公表が義務づけられるため(23年4月から、従業員数1000人超の会社が対象)、子育て支援にブラックな会社は社会的な低評価を受けることになります。

形だけの男性育休から一歩先のステージへ

国全体の少子化対策を考えると、人口のボリュームゾーンであった団塊ジュニア層の出産適齢期は過ぎているかもしれません。生涯未婚率の上昇傾向も続いています。それでも、これから子育てと仕事の両立を考えていく世代にとって、男性も育休が取得しやすい時代になることはとてもいいことです。

これから結婚・子育てを控えた男性にはぜひ育休の取得をしてほしいと思います。あるいは男性の短時間勤務だってあっていいと思います。

育児休業給付の制度は、雇用保険をベースとしており、会社員だけが利用できる仕組みです。私はひとりオフィスの経営者なので(社員ゼロでも!)、どんなにイクメンしていても1円も雇用保険の給付が受けられません。雇用保険から育児休業給付を受け、社会保険料は免除され、給付金は非課税となるすばらしい仕組みを用いてしっかり育児と家事に参加してみてください。

そして、会社の経営者や上司の立場にある人たちは、時代の変化を受け止めて、若い部下の育休希望を受け入れてほしいと思います。

今までは「男性の育休取得率100%」と誇らしげに語る企業が目立っていましたが、これからはそれがむしろ当たり前になっていくべきです。そして、出産直後だけではなく、妻や子の環境に応じて複数回の育休取得も考えていくのがこれからの「男性育休」のステージとなっていくはずです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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