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バブル高値買う個人投資家の米国株シフト(澤上篤人)

「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信創業者

若者が米国株に引かれる理由

個人投資家、とりわけ若い人たちの間で、米国株への投資が人気を集めているとか。アマゾン・ドット・コムやアップルといった急成長企業の株価が好パフォーマンスを演じているのと比べると、日本株はどうしても見劣りしてしまう。それもあって、米国株へのシフトは、さもありなんというところだろう。

確かにGAFAMといわれる、グーグルの持ち株会社アルファベット、アップル、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾン、マイクロソフトの株価上昇ぶりはすさまじい。もちろん、それだけの業績向上が株高の裏付けとなってはいるが。

そうは言うものの、個人投資家の米国株シフトは、2021年に加速した米国株高にあおられている面も否定はできまい。実際、日本株と米国株のパフォーマンスを比較すると、米国株の方が圧倒している。それで「どうせ投資するなら米国株で行くべし」ということなんだろう。これは、よくある高値追い掛け型の投資行動である。値動きのいい銘柄に引きつけられて、投資対象を次から次へと変更していく投資家が陥りやすく、株式相場の魔力とも言える。

それに加えて、日本経済の先行き悲観論が高まっている。若い投資家たちは将来の可能性から見ても、今や日本株市場を捨てて米国株に飛び移るのが賢明としているのだろう。老婆心ながら、お大事にと注意を促したい。

バブルの高値を買いに行くのか

筆者から見れば、米国株はバブル高もいいところ。そこを買いに行くなんて、クワバラクワバラの投資行動である。

日本株も含め、今は新規に買うどころか、バブルからは遠く離れておくべき局面である。われわれ長期投資家からすると、バブル高していると思える保有株は一刻も早く売って現金にしておく。あるいは、バブル買いとは縁のない銘柄群を中心としたポートフォリオに切り換えておきたい。

そもそも現在進行中のカネ余りバブル高は、前代未聞といわれる大幅な金融緩和と、これでもかこれでもかの資金供給による産物である。行き場を求めたマネーが集中して、世界の債券ならびに株式市場はバブル高を演じている。

それが債券市場であれば、満期まで保有したところで絶対にプラスとならないマイナス金利の国債に、17兆ドルもの運用資金が流れ込むといったバブルを演出している。株式市場で言えば、GAFAMを中心に何十年先までもの利益を先取りした株高なのに、まだ買えるとする投資家であふれ返っているのだ。

それもこれも、先進国中心に世界中でマネーが大量にダブついているからだ。異常なまでの金融緩和が収まっていけば、バブル買い熱はおのずと鎮静化していく。現に、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長もテーパリング(量的緩和の段階的縮小)の加速と、22年中に3回の利上げを示唆している。これらは、バブル株価にとっては間違いなくマイナス材料となる。

ともあれ、株高の現状にあおられて投資を積極化させるのは、わざわざ高値づかみしに行くようなもの。日頃から株式投資はリスクが大きいと言っている人たちが、こんな高値でリスクを取りに行くなんて、すごい皮肉である。

インフレ警戒も冷や水に

もっとも、株価が大きく下げて景気を冷やすことはFRBとしても避けたい。22年には中間選挙もあるし、米国の政治家たちからすれば好調な株価を何とか維持したいところだろう。しかしパウエル議長の発言にもあるように、インフレ警戒も怠れない。それでなくても、インフレの気配は世界中あちこちで、くすぶり始めているのだから。

何しろ、これだけ大量に資金を供給してきたのだ。市中には、いつインフレの火が燃え広がってもおかしくないほど有り余ったマネーが徘徊している。コロナ感染防止もあって、世界の供給体制が分断されてしまった。

これまではグローバル化の流れで低賃金・低価格化の流れが世界経済を支えてきた。今やそれがズタズタとなり、世界経済のあちこちでコスト上昇の圧力が高まってきている。そこへ地政学的リスクも加わり、世界的に見ても供給ネックが深刻化している。そう、典型的なボトルネックインフレに発展する可能性が高いのだ。

そうなると、エネルギー価格や諸物価の高騰から、市場金利の上昇という問題も浮上してくる。こちらからも、バブル崩壊の火の手が燃え広がってくるわけだ。

澤上篤人(さわかみ・あつと)
1973年ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテ・ジャパン代表取締役を務めた後、96年にあえてサラリーマン世帯を顧客対象とする、さわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。
日経マネー 2022年2月号 2022年の稼ぎ方&上がる株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2021/12/21)
価格 : 750円(税込み)
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