/

新人の季節に思う 人も仕事も一期一会(佐々木明子)

テレビ東京アナウンサー・佐々木明子のニュースな日々

入社2年目に訪れたチャンス

この春、30年勤続表彰を受けた。何とも長く勤めたものだ。しかも「WBS(ワールドビジネスサテライト)」を担当するとは、人生何が起こるか分からない。

ラクロスに夢中になった大学生時代、某テレビ局の取材を受け、「傷だらけ泥だらけの激しいスポーツだ」と説明したのに、放送内容は「おしゃれなお嬢様スポーツ」。事実と違うと憤慨し、自分が本当の姿を伝えたいとアナウンサー試験を受けた。

「元気があって可能性を感じる」とアナウンス部の女性幹部が強く推してくれたそうで、晴れて入社となったが、アナウンス技術は未熟。あまりの下手さに「この子を採ったのは失敗だわ」と先輩に言い放たれた。

そんな入社2年目の時、皇太子さま(現天皇陛下)と雅子さまの御成婚パレードを報じる特番があり、リポーターとして5人ほど女性アナを出すよう報道から要請があった。「佐々木は心配」「報道なんてまだ無理だろう。ましてや大事な特番だ」。誰もが反対したそうだが、人が足りずGOサインが出た。

「どうせ担当するなら自分でネタを探してみよう」と、自分で商店街を一軒一軒訪ね歩いてみることにした。ある居酒屋で「パレードの日はどうしていますか?」と聞けば、大きなスルメイカを焼いて当日無料で沿道の人たちに振る舞う予定だという。何てすてきな話だろう。

大きなイカを一匹お借りして、当日中継で披露した。さらにパレードに向けて勉強したりと、自分で取材し自分の言葉で伝える楽しさを初めて知った"報道特番デビュー"の日だった。今思うとこの中継が、私の報道人生を決定づける重要な一日だった。

人生は出会いとタイミング

中継を終えて社に戻ると、「佐々木、あのリポートは良かった、本当に良かった。自分で考えたのか?」と、皆に囲まれ褒めちぎられた。現場にいた若い報道ディレクターは、「全部佐々木が自分で考えて仕込みました」、そう強調してくれたのだ。そのディレクターは今、WBSのデスクとして一緒に仕事をしている。

「報道も行けるんじゃない?」。あの時そう言ったデスクは、10年後、夕方のニュース番組のプロデューサーになり、スポーツ担当だった私を報道の世界に引っ張ってくれた。拍手をして迎えてくれたこわもての報道デスクは15年後、私を米ニューヨーク赴任に送り出してくれた。

人生は出会いとタイミングなのだと痛感する。どんなに不器用でも泥臭くてもいいから、どんな仕事にも一生懸命向き合えば見ていてくれる人がいる、と後輩にも言い続けている。人も仕事も一期一会である。

最近のMy News「久しぶりに怒られて『お礼』」

若い頃はよく怒られたものだが、この年になると、誰も何も言わなくなる。というか、言ってくれなくなる。先日、中堅のディレクターが「あっこさん、あのVTR後のコメントはちょっと違うと思います」と言ってきてくれた時は、うれしくてお礼を言ってしまった。その後、やっぱりへこみましたが……。

「佐々木明子のニュースな日々」は、国内外の経済やマーケットの動きを伝えるテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターを務める佐々木明子さんが、金融・経済の最前線の動きや番組制作の裏話などをつづるコラムです。

日経マネー 2022年5月号 新年度の稼ぎ方&上がる株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/3/19)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン