確定申告「駆け込み還付」は不要 仕組み知り混雑避ける
知っ得・お金のトリセツ(110)

あす3月15日は確定申告の最終日。「早めに済ますべきだった……」。泣きながら夏休みの宿題を最終日に片付けた日を思い出す大人も多いだろう。パソコンやスマートフォン経由で家でも作業できる国税電子申告・納税システム(e-Tax)なら日付が変わるギリギリでも申告可能だが、当然アクセスが殺到してシステムに負荷がかかることも考えられる。実際去年はこの時期に断続的に接続障害が発生。今年も2月19日に一度同様の事象が見られた。「対応して能力増強を進めており問題ない」(国税庁)とはいうものの、万一の時にイライラしないためにもここからの「駆け込み申告」はできる限り避けタイミングを分散したいものだ。
一年中可能な還付申告は慌てない
まず分散候補の筆頭は還付申告。所得税の確定申告は足りない税金を納める「納付」と、払いすぎた税金が戻る「還付」とに大別できるが、還付申告は15日の締め切りとは無関係に一年中可能だ。代表例が会社で年末調整を済ませた普通のサラリーマンがお得を求めて医療費控除や、ふるさと納税の寄付金控除を申告するケース。必要書類さえそろえば昨年2022年分の申告は今年の年明けすぐから作業が可能だった。おシリも5年後まで長〜い申告チャンスが与えられている。誤解している人もまだ多いが、このギリギリのタイミングで「ひー、間に合わない」と駆け込む必要は全くない。ゆっくり落ち着いて今週末にでも取り組めばいい。
メドは住民税額決定の前
とはいえ、いったん確定申告の期間が終わってしまうとデータが居住自治体に回り、還付を反映しない数字を基に6月以降に支払いが始まる住民税額が決定されるので、あまりのんびりするのも好ましくない。もちろん多めに決められた住民税は事後的に還付申告を反映して計算し直してくれるが、ただでさえ多忙な自治体窓口に余計な負荷を掛けるのは避けたい。さらに住民税額をベースに自己負担が決まる行政サービスの中には保育料のように原則過去分まで遡って変更されないものもあるので要注意だ。
3月15日までなら何度でも提出可能
既に一度申告した後、間違いが発覚した場合はどうするか? 医療費控除で発生しやすい事例だ。後から保険診療外の歯科治療など高額な領収書が発掘されたり、逆に本来対象外の美容系などをウッカリ算入したことに気づいた場合。「訂正申告」が必要になるが、そこは優れものの電子申告。確定申告の期限である15日までであれば、何度提出しても最後に出てきたものを採用してくれる仕組み。便利だ。この場合は分散を呼びかける記事の趣旨には反するが、期限内駆け込みのメリットがあるかもしれない。
しかし、ここでハタと悩んだ。最近のe-Taxの処理スピード向上は目覚ましく、2〜3週間で還付金が振り込まれることもある。2月のスタート直後に申告した場合、既に還付金が口座に振り込まれていることもあり得る。
16日以降は呼び方が変わる
その場合も15日までであれば単なるやり直しでOK。日をまたいで16日になると確定申告のやり直しではなく「更正の請求」(税金が戻る場合)もしくは「修正申告」(税金を払う場合)という作業が必要になる。差し引きの結果、お金が戻るか・出て行くかで呼び方が異なるわけだ。何やら難しそうな響きだがやり方は実は確定申告と大差ない。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から簡単に行える。やはり還付の場合は焦って駆け込む必要はなさそうだ。ただ、通常5年分遡れる更正の請求のなかにも住民税との関係を考えると要注意のケースがある。住宅ローン控除や上場株式などの譲渡損失の3年間繰越控除などだ。該当する人は念のために駆け込む手もある。
納税は期限内にやるのが筋
一方、本来払うべき税金に比べて少なく納めている状態になっている場合は期限内に申告を済ませるのが筋だ。決められた期限を守らない締め切り破りに対しては「無申告加算税」や「過少申告加算税」、利子に相当する「延滞税」といった各種ペナルティーが準備されている。
無申告加算税は期限後1カ月以内に申告すれば過去5年に同じ過ちがない等々、条件を満たした場合には減免措置があるものの、1日でも1週間でも遅れには自動的に課される。延滞税の税率計算は年ごとに違い、2022年分は2カ月後まで年2.4%、それ以降は年8.7%の利子が日割り計算で発生する。数字でみるとなかなかの高率だが、納付すべき税額(1万円未満端数切り捨て)と日数の変数なので、普通の納税者がちょっと遅れたぐらいでは恐ろしい額にはならない。国税庁のページ(https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai_r04nen_kigengo.htm)から計算可能。仮に10万円の税金を年末まで延滞したケースで延滞税は1900円とはじき出される。だからといって遅れていいと言っているわけではもちろんないが、仕組みを知っておくことは有用だ。

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