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ふるさと納税で災害支援 返礼品なしワンクリックで完結

知っ得・お金のトリセツ(56)

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ふるさと納税の仲介サイト「ふるさとチョイス」を通じた被災地への寄付が広がっている

土砂災害にあった静岡県熱海市に対し全国から支援の寄付金が集まっている。使われているのは、通常なら返礼品のお得さが人気のふるさと納税の仕組みだ。12日時点で大手サイトを通じた寄付は約1.7億円に達している。

返礼品合戦から進化 ようやく本領発揮?

2008年に始まったふるさと納税は大まかに言って自分が納める住民税の一部を居住地から別の自治体に移す仕組み。一般的には寄付先からお礼として届く特産品の魅力がけん引して普及した制度だが、災害時の寄付に対しては返礼品はないのが普通。それでも広がる支援の輪は被災地支援の枠組みとしてのふるさと納税の有効性を示している。

コロナ禍では医療従事者や需要減で打撃を受けた農林漁業者などへの寄付も目立った。返礼品を巡る訴訟など、とかく批判も多かったふるさと納税だが、今年はようやく本来の助け合いシステムとして機能し始めた「元年」と記憶されることになるかもしれない。総務省は来月にも20年度分のふるさと納税のデータを発表する予定だが、昨年の寄付金額はこれまでの過去最高(5127億円、18年度)を大きく上回る見通しだ。

ほとんどワンクリックで寄付終了

発足当初は自治体自らが窓口となり静かに始まったふるさと納税だが、やがてネット上に専門の民間サイトが次々立ち上がったことで利便性が一気に増した。電子商取引(EC)を手掛ける業者のサイトの場合、ほとんどお買い物感覚で手続きが済む。通常は季節ごとの旬の食品などの人気ランキングや、寄付額に対する返礼品額の割合を示す「還元率」ランキングから寄付先を選んだりするが、災害時には専用サイトが素早く立ち上がるのでそこから寄付を行う。

被害を受けた対象の自治体名が並び、返礼品がないことや寄付の証明書が届くのに時間がかかることなどが書かれている。金額は1000円以上など少額からでクレジットカード決済も可能だ。必要なアクションは金額を埋めて「OK」を押すだけなので、もともと個人情報を登録しているサイトであれば5分もかからず完結する。

自治体間の助け合いも広がる

「代理寄付」の制度も広がってきた。被害を受けた当該自治体の代わりに別の自治体が事務作業の肩代わりを目的に名乗りを上げる制度だ。お金は被災地に入る一方、発送が必要な「寄付金受領証明書発行」など面倒な事務作業は代理の自治体が手掛けるので被災地は復興に専念できる。熱海市の場合、茨城県境町や岐阜県下呂市などを通じて寄付することができる。16年の熊本地震をきっかけに広がった動きだが、助けられた側が復興後は助ける側になるなど、いい循環も回り始めている。 

支払いは今、「取り返す」のは来年以降

ふるさと納税は通常「自己負担2000円でもらえる特産品の分だけお得」と説明されることが多い。原資は自分がいずれにしても支払わないといけない住民税だから、キャッシュアウトは寄付金控除の下限適用額2000円だけで済む。それに対し、普通に買えばそんな額で手に入らないような特産品が送られてくる。

要注意なのが「控除上限額」だ。寄付はいくらしてもいいが、それに対して受けられる税控除には上限がある。自分が支払う住民税の所得割部分の2割以内だ。総務省のポータルサイトに粗々の目安が載っているが、例えば年収500万円の独身・もしくは共働きの人の目安は6万円程度。それ以内であれば自己負担は2000円で済むが、仮に10万円など寄付しても差額の約4万円は純粋な寄付となり税金で取り戻すことはできない。

限度内であってもいったんはキャッシュアウトする。クレジットカード決済で寄付した場合、通常の買い物と同様、翌月以降に口座から引き落とされるが、自己負担2000円以外の部分を取り返すのは翌年の6月以降に支払う住民税の減額という形になる(確定申告をする場合は一部所得税から還付されるが、合計金額は同じ)。

もろもろ注意点はあるが、ワンクリックで済むふるさと納税の仕組みは機動的な寄付に最適。普段は返礼品目的でもいいが、災害時は助け合いの精神に立ち返る好機でもある。例えば自分で毎年のふるさと納税予定額の一定割合を「災害寄付予算枠」として管理する――。そんな使い方があってもいい。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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