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私にも5万円給付? 知っておきたい住民税非課税の基本

知っ得・お金のトリセツ(94)

政府は物価高への追加対策として低所得世帯への5万円給付を決めた。対象となるのは「住民税非課税世帯」。今年の6月以降、本来なら住んでいる地元自治体に支払うべき住民税がゼロに減免されている世帯を指す。「自分も十分苦しい」「かなりの低所得」と思う人もいるだろうが、気持ちと税金計算上の厳密な線引きは別物。「頑張って残業したばかりに……」。わずかな年収差で5万円もらえるかもらえないか、明暗がハッキリ分かれるのがこの世界。新型コロナウイルス禍以降、給付金の議論と絡みめっきり登場頻度が増した住民税非課税という枠組みの影響は多方面に及ぶ。仕組みを知っておこう。 

ズレてて、厳しい住民税

個人の稼ぎにかかる代表的な税金は2つ。所得税(国税)と住民税(地方税)だ。対象となる稼ぎは同じ額でも、計算方法と支払時期が異なる。所得税は「稼ぎながら払う」前払いだから、去年分は去年に支払い済み。一方の住民税は1月1日現在の住民票がある自治体に対し今年6月から来年5月にかけて後払いで支払う。住民税が今、非課税ということは去年の稼ぎが少なかったことを意味する。「最近ガックリ収入が減った」人はいくら今、苦しくても支払う住民税は減らないし給付金ももらえない。これが住民税のズレだ。

さらに住民税は厳しい。税金は計算する際、扶養家族がいるなど「そういう事情なら大変でしょう」と個々人の状況を勘案し、その部分については税金をかけない「控除枠」があるが、それが住民税は所得税に比べて小さい。例えば専業主婦(夫)に対する配偶者控除は所得税では最大38万円差し引けるが住民税は同33万円に下がる。この差が積み重なった結果、所得税を支払わずに済む人でも住民税は払わないといけない場合がある。「103万円の壁」と「100万円の壁」として知られる。

「103万円の壁」と「100万円の壁」

所得税の103万円の壁はパート主婦(夫)などが「税金を払わずに済む稼ぎ」として意識する人も多いだろう。税金は収入から経費を差し引いた「所得」にかかる。パートの給与収入が103万円以下であれば、給与所得控除55万円と基礎控除48万円の合算内に収まり、計算時の差し引き所得がゼロになる理屈だ。

住民税ではその壁が一段低いから要注意。居住地によって違いはあるが東京23区など大都市の場合、単身者が収入から差し引ける額は45万円なので給与所得控除55万円と合わせて100万円を超えると住民税がかかってくる。「100万円の壁」だ。養っている家族がいる場合、人数に応じて控除枠は広がる。例えば配偶者と子ども1人の3人家族なら136万円といった具合。この計算式から一歩でもはみ出ると課税額が生じるのが税金の仕組み。税率は一律10%だが、額の多寡というよりも住民税がくせものなのは、関係各所への「波及効果」が大きい点にある。

無視できない「住民税非課税メリット」

代表例が自治体が運営主体である国民健康保険料や保育施設の保育料、介護サービスに関する費用などだ。住民税非課税世帯に与えられている恩恵、すなわち減免措置は数多い。大学などの入学金や授業料しかり、医療費しかり。例えば毎月の医療費が高額になった場合の自己負担限度額は4万円以上も違ってくる(70歳未満の場合)。

当然「枠内」にとどまりたいインセンティブは強い。なるべく壁を低くして課税ベースを広げようとする努力もむなしく住民税非課税世帯は多く、今回の5万円の給付対象はおよそ1600万世帯と見込まれる。日本全体の3割近くだ。背景に高齢化と小世帯化という大きなうねりがある上に、今回のように頻繁に給付金支給対象になるのであれば、わずかな収入増と引き換えに多くのメリットを放棄する選択は経済的合理性がない。住民税非課税を一大勢力にしないためにも、本当に必要な人に必要な支援を届ける知恵が必要だ。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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