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泡立つ市場、「いつか来た道」を警戒

毎年春は日米欧の中央銀行が金融システムの点検結果を公表する季節にあたる。日銀は4月20日、米連邦準備理事会(FRB)は5月6日に報告書を出し、欧州中央銀行(ECB)は来週にも公表する。日銀内外では、FRBが株式や低格付け債などリスク資産市場の過熱ぶりに対する警戒モードを引き上げたと話題になっている。

FRBの報告書では、投資家のリスク選好の強まりが経済の実態や過去に照らして高い資産価格を生み出し、その反動で価格の急落を招きうると警鐘を鳴らした。米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で大手金融機関に巨額の損失が生じた経緯にも言及。「海外当局の報告書でここまで個別の話に触れるのは異例」(日銀幹部)という。

FRBのパウエル議長の発言も警戒感の高まりを裏付ける。「株式市場のフロス(細かい泡)を反映している」。4月下旬の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見。米ゲームストップ株の乱高下などについて見解を問われたパウエル氏はこう答えた。現在の資産価格上昇がバブルのようにはじけて市場の大混乱を招く恐れは小さいが、今後の膨張には注意が必要といったニュアンスだ。

日銀内には、市場の現状を「フロッシー(泡立っている)」と表現する海外当局者が増えていると気にする向きもある。かつての苦い記憶を呼び覚ますからだ。

もともとフロスという言葉はFRBのグリーンスパン元議長が2000年代半ばに活況を呈した米住宅市場を言い表す際に使ったことで知られる。やがて巨大な住宅バブルがはじけ、リーマン・ショックに至って世界の金融市場を凍り付かせた。バブルではなくフロスという言葉の広がりが、かえって「同じ轍(てつ)を踏んでいないか」という不安を生む。

悩ましいのは、市場の過熱を警戒する局面に入っても金融政策を引き締める選択肢は取りづらい点にある。

FRBは足元で過熱感の出てきた物価上昇は一時的とみて、雇用の最大化のため金融緩和を続ける姿勢を崩していない。日本はなおデフレ懸念がくすぶり、日銀はなおさら緩和をやめられない状況にある。

金融システムの安定は資本規制などのプルーデンス政策で対応するというのが日米中銀に共通する考え方だが、「それで本当に(バブル生成と崩壊を防ぐ)効果があるかは分からない」(日銀幹部)。

日銀は11、12日と株価が連日大幅に下がるなかでも上場投資信託(ETF)を買わなかった。3月の政策変更で株高局面では極力買わない方針に変えたためだが、背後には自ら株式を買い増してバブルを助長することは避けたいとの思いも透ける。緩和継続による物価の押し上げと金融システム安定の二兎(にと)を追う日銀の政策はますます矛盾をはらんだものになりつつある。

(斉藤雄太)

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