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老後「家賃」2000万円問題 リタイアまでに家を買う理由

家を借りる・家を買う(3)

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写真はイメージ=PIXTA

今月のLife is MONEYでは、人生の大きな支出のひとつである「住宅のお金」について考えています。先週、先々週と「賃貸生活」を考えてきましたが、そろそろ「家を買う」という選択と向き合っていきましょう。

でも、なんとなく「家は買わなくちゃいけないもの」と考えてはいないでしょうか。まず考えるべきは家を買うべき理由を人生とお金の面から整理することです。

ずっと賃貸派で暮らすことのメリット、デメリット

賃貸暮らしにはいくつかのメリットがあります。最大のメリットは「気軽に住み替えられる」ということです。年収の増減、特に下がったとき「家賃の低いところに住み替える」という選択肢があるのは賃貸だけです。

家族構成の変化によりもう1部屋ほしくなった、ということも賃貸ならすぐ実現できます。3人家族にぴったりの家を買ったものの、子どもが増えるという「うれしい誤算」はしばしば起きます。賃貸は広い部屋に住み替えが気楽にできます。

隣人との不和や設備の経年劣化など、住み替えを選択せざるを得ない要素もあります。ゴミ屋敷、騒音、過剰な監視など、持ち家で生じた隣人トラブルは深刻な問題になります。賃貸ならリセットができるわけです。

一方で、デメリットもあります。それはやはり「永遠に家賃を払い続ける」ということです。老後に働けなくなり、収入は減少、年金生活をしているとき、確実に発生する家賃というコストは無視できません。

公的年金に「家賃手当」は含まれていない

老後に働くことが難しい年齢になったら、公的年金を受けることができます。公的年金は終身にわたって支給される老後の大きな支えですが、この水準をひもといてみると、日常生活のやりくりをできる水準ではあっても、「家賃手当」相当の額は含まれていないことが分かります。

会社員の場合、一定の要件で「家賃手当」「住宅手当」といった名目で給与にいくらか上乗せしてくれることがあります。これは労働法上の義務ではありませんが、割と多くの企業で設定されていて、47.2%の実施率(厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」)という数字もあります。

賃金が低い若年層のみ支給する(中高齢者は対象外)、賃貸契約がある場合支給する(実家暮らしなどは対象外)、職場に近いエリアに住むことを条件に支給する、など各社の判断により支払われますが、家計の大きな助けとなります。

しかし、公的年金には「家賃手当」も「住宅手当」もありません。賃貸かどうかは年金支給額に反映されないのです。これは、賃貸暮らしの場合、年金生活が一気に苦しくなることを意味します。

「ついのすみか」は「老後の家賃2000万円」の代わり

生涯賃貸派を選択した場合、家賃は生き続ける限り必ず発生する固定費用になります。そして人生は100年時代と呼ばれるほどに長生きするものとなりました。

老後の家賃が公的年金に含まれていないとするなら、「老後の家賃」をしっかりためてからリタイアする必要があります。

たとえば、65歳で引退、90歳まで暮らすと仮定し、月6万円のシンプルな部屋に住むとします。65歳で用意すべき家賃総額はなんと1800万円です。ここには更新料や家賃保証料などは含まれていませんので、2000万円程度は考えておいたほうがいいでしょう。「老後の家賃2000万円問題」というわけです。

数字が「老後2000万円」とほぼ同じですが、これは年金で足りない教養娯楽費、交際費のためのものですから、別ものです。つまり、「老後に2000万円」+「老後の家賃2000万円」を確保してリタイアしないといけないことになります。

言い換えれば、持ち家の取得はそれくらいの財産価値があるということです。どうやら「家を買う」理由のひとつは老後の「ついのすみか」確保にありそうです。

リタイアまでに家を買う決断

老後の生活を考えると家賃はもっと不確かなものです。私たちはどれくらい長生きするか分かりません。先ほどの例も100歳まで生きることを考えれば「老後の家賃2520万円問題」に増加します。物価上昇などのあおりを受け、家賃が引き上げられるかもしれません。

考えてみると、国策のように住宅ローン減税が行われているわけですが、これは「国民に持ち家を取得してリタイアしてもらうため」の政策だと考えれば納得がいきます。そして、年金に家賃額が含まれていないことのつじつまも合います。

私たちは少なくとも「リタイア時」には家を手に入れておくことが望ましいと思われます。

もちろん、「相続」で家を手に入れることもあるでしょうが、兄弟姉妹があれば、親の1つの家は誰か1家族しか住めません。それぞれ自分の家庭の条件を見ながら、「ついのすみか」を確保していく必要があります。

おひとりさまであっても、結婚している人であっても、40代あるいはその前後で「家を買う」ということを真剣に考えなければいけません。

そして、家を買うということは「人生最大の借金」、つまり住宅ローンと向き合うことでもあります。次回は住宅ローンについて考えてみます。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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