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FIREを成功に導く大事なスキル それは節約

日本版FIREを考える(3)

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写真はイメ-ジ=PIXTA

マネーの世界で今年、ホットワードとなったFIRE(Financial Independence, Retire Early)について考えています。経済的独立を果たし、早期リタイアの実現を目指す。このFIREを「真夏の夜の夢」に終わらせず、現実のものとすることはできるでしょうか。

カギはキャリア形成と節約のセット

先週、FIREは運用だけではなく、キャリアアップをしっかり見つめ直すことが第一歩だと説明しました。しかし、高年収を獲得したからといってFIREに達するわけではありません。むしろ、どんなに多く稼いだとしても「節約」を意識しない限りFIREどころか60歳まで働き続けることになります。

「いいちこ」(三和酒類)という庶民的価格帯の麦焼酎があります。年収が低いときにこれを愛飲していた人が、年収が2倍、3倍とキャリアアップしたとき、そのまま同じお酒を飲むでしょうか。

多くの人は高いお値段のお酒にシフトしていきます。あるいは外食をして飲むようになります。もちろん「せんべろ」(1000円で酔えるような立ち飲み)ではなく、食事代も高いお店です。

こういう人は「年収増=支出増」となるので、年収が増えても一向に貯蓄額が増えません。これはこれで高いビジネススキルの成果を実現した成果として生活の質的向上を手に入れているわけで、間違いとはいえないのですが、FIREには近づきません。

FIREを目指せるタイプの人は、年収1000万円になっても、量販店で「いいちこ」を買って自宅飲みをするタイプです。

年収の半分以上をためる覚悟を

「今の楽しみ」のためにお金を使わず、「将来の安心と楽しみ」のために経済的に備えるのがFIREの基本的な考え方です。実はこれ、資産形成やマネープランニングの基本的な考え方とも一致します。

行動ファイナンスでは「近視眼的損失回避」と呼んだりしますが、老後の豊かさのために「今月の1万円の消費を我慢する」というのはなかなか難しく、しばしば将来への備えはおろそかになります。最悪なのは「前借り」をしてしまうキャッシングなどです。

FIREチャレンジをする人の素晴らしいところは、早期リタイアという壮大な夢をあきらめず、節約をして資産形成に励むことです。しかも徹底的に節約をし、資産形成を加速させようとします。

22歳からスタートして45歳で早期リタイアをしたいとすれば、23年間の稼ぎから20年分以上の生活費をためなければいけないわけですから「1年稼いで、1年分以上の生活資金をためる」覚悟が必要になります。

それこそ年収の半分以上をためるようなチャレンジが必要になってきます。

どこまで削るか 自分と一度向き合う

本連載でも何度か節約をテーマとしていますが、多くの場合「家計を赤字にしないこと」「一定の貯蓄をして中長期的なマネープランに備えること」という観点から、高くても貯蓄率は25%くらいをイメージしていました。

実際にやってみると、普通の生活をしながら25%をためることはそう簡単ではありません。50%以上を目指すのは生半可な目標ではできないことが分かります。

ここは、自分と(家族があれば家族とも)しっかり向き合ってどこまで追い込めるか考えてみることが必要です。目の前の20年間、徹底的にシンプルライフにしていてもなお目指すのであれば、揺るぎなき決意のもと徹底的な節約を行うことになります。

現実の生活もある程度充足したいと考えるのであれば、実現可能な貯蓄率を見極め、またそのペースで達成しうる早期リタイアの年齢を設定していきます。例えば、貯蓄率25%は老後の備えとして励むが、40代リタイアは無理に追わず55歳を目標とする、といった感じです。

年収増と徹底的な節約の合わせ技

そう考えてみると、キャリアアップと節約との合わせ技を抜きにFIREに向けた資産形成は語れないことが分かります。

どんなに貯蓄率が高くても、年収が200万円台では、毎年の資産形成はハイペースにはなりません。やはり高年収を目指す努力が必要です。

一方で、年収を高めたときに、貯蓄率を下げないこと、むしろ貯蓄率を上げていくぐらいの自覚を持つ必要があります。ここは意識を高める必要があり「年収が増えても生活水準は現状維持」とするくらいが理想的FIREチャレンジです。

キャリアアップと徹底的な節約の合わせ技は頑張れば頑張るほど効果が生じてきます。ただし、削りすぎて無味乾燥な人生とならないような「ほどほどの支出」も意識したほうがいいでしょう。

例えば動画見放題のサブスクリプションサービスに課金したり、使い勝手の悪くなったタブレットを買い替えたりするくらいは、ムダな支出ではないはずです。コストは意識しつつ、趣味にもお金を使っていいのです。毎年400万円ペースでためていても、毎日が無感動で味気ないというのなら、たとえFIREを実現しても無感動な日々になってしまいます。

拙著「日本版FIRE超入門」でも、FIREチャレンジと現実の生活とのバランスを取ることの重要性を指摘しています。あなたのFIREを目指すための節約、どこまで取り組むか考えてみてください。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp

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