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米緩和縮小、新興国に利上げ迫る ブラジルなど30カ国超

(更新)

米国の金融緩和縮小が新興国に利上げを迫っている。8日はブラジルが政策金利を1.5%引き上げて9.25%とするなど、2021年後半に利上げを実施した国は30を超える。米金利の上昇は新興国からの資金流出を招きかねず、景気の回復が途上にある中でも通貨防衛に動かざるを得ない。物価高騰への対処も必要で、必要以上に金融を引き締めると世界経済のリスクになる。

ブラジル中央銀行は22年2月にも「同じ規模の調整を予測している」と表明した。政策金利が10%台に乗る可能性がある。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ経済を支えるため、20年には政策金利を2%まで引き下げていた。SMBC日興証券の集計では、7月以降に利上げに踏み切った国はパラグアイやチリ、ハンガリーをはじめ32カ国にのぼる。21年前半の16カ国から倍増した。21年後半の利下げは2カ国にとどまり、もっとも多かった20年前半(71カ国)から大きく減った。

新興国が利上げに走る最大の理由が、米国の金融正常化に向けた動きだ。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は8月末のジャクソンホール会議で、量的緩和の縮小(テーパリング)について「年内開始が適当」との見解を示した。FRBはすでにテーパリングに着手済みで、来週14~15日の連邦公開市場委員会(FOMC)では終了時期を前倒しするとの観測が強い。

市場では「22年3月にもテーパリングを終え、年内に複数回の利上げが既定路線」との見方が一般的だ。現時点では米長期金利の上昇は限定的だが、実際に金利が上がり始めればドルに資金が集中しかねない。

新興国は物価の急騰にも直面している。鶏肉27.34%、卵20.05%、ワイン7.77%――。ブラジル有力紙フォリャ・ジ・サンパウロは11月末、クリスマスによく使われる食品の1年間の値上がり率をグラフにした記事を掲載した。干ばつと通貨安による輸入物価上昇が重なる。10月の消費者物価指数は前年同月比で10.67%上昇した。5年9カ月ぶりの高い上昇率だった。

「今の価格で大家族に十分なトルティーヤが買えるかしら」。メキシコシティで働くレティシア・バリニョさん(60)は足元のインフレについて不満を漏らす。メキシコ経済省によると、メキシコシティのトルティーヤの価格は12月上旬に1キログラムあたり18ペソ(約100円)と4月の14ペソに比べて3割近く上がった。干ばつの影響で原料となるトウモロコシの価格が上昇したほか、ガソリン価格の上昇で輸送コストも上がっている。地元紙は年末には場所によって1キログラムあたり30ペソに達する可能性があると報じている。

やっかいなのは景気が低迷する中でインフレが進んでいることだ。ブラジルは4~6月、7~9月と2四半期連続のマイナス成長となった。それでもインフレに対処するため、景気に逆風となる利上げを進めざるをえなくなっている。メキシコも11月前半の消費者物価指数の上昇率は7.05%と過去20年間で最も高い水準を記録。メキシコ銀行(中央銀行)は11月の金融政策決定会合で4会合連続の利上げを決めた。

新興国は先進国と比べ、財政余力が乏しい国が多いうえ、コロナワクチンの接種が遅れるなど、経済再生の不確実性が高い。20年は先進国の強力な財政出動や金融緩和が世界経済を支えてきたが、高インフレで前提が揺らいでいる。新興国景気が悪化すれば、先進国経済にも悪影響は跳ね返りかねず、世界経済のコロナ禍からの回復は新たな試練に直面している。

(宮本英威、清水孝輔、後藤達也)

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