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日銀のコロナ後政策、渡りに船の「グリーンオペ」構想

(更新)

世界の中央銀行首脳が参加した国際決済銀行(BIS)の国際会議が日銀内で話題だ。6月4日までの3日間、気候変動をテーマに黒田東彦総裁もオンライン出席した会議で注目を集めたのはドイツ連銀のワイトマン総裁だった。金融政策の中立性を重視する観点から中銀の過度な気候変動対応に否定的だった立場を一転、欧州中央銀行(ECB)の政策対応に理解を示した。

「日銀は対応の検討を続け、必要なステップを進める」。黒田総裁もまた、各国中銀と歩調を合わせるように気候変動対応に前向きな姿勢を示してみせた。ドイツ連銀の変節に日銀内では「想定以上に国際的な議論が速まっている証拠だ」と驚きの声もあがる。欧州の中銀では金融システムの安定というプルーデンス政策の観点だけでなく、金融政策でも気候変動対応に乗り出す動きが広がってきた。中銀の政策運営は歴史的な転換期を迎えている。

実は、日銀にも妙案がある。日銀内外で注目されるのが、新型コロナウイルス対応で導入した資金繰り支援の後継政策で気候変動対応を絡めるアイデアだ。現在は金融政策の柱の一つとして、コロナ対応融資を手がける金融機関に有利な条件で貸し出しの原資を供給するオペ(公開市場操作)、いわゆる「コロナオペ」を実施している。

コロナオペは、あくまでもコロナ禍の緊急対応措置という位置づけだ。「永遠に講じていくわけではない」というのが日銀内の見解だが、同オペは日銀が事実上の副作用対策として3月の政策点検で創設を決めた貸出促進付利制度を支える柱にもなっている。仮にコロナオペがなくなれば、副作用対策の効果が薄まる懸念が出てくる。

貸出促進付利制度はコロナオペなどの利用実績に応じて、金融機関が日銀に預ける当座預金に上乗せ金利をつける仕組み。マイナス金利を深掘りした場合に金融機関の副作用を軽減する狙いがある。感染拡大から1年あまりでコロナオペの貸出残高は68兆円まで積み上がっており、制度の縮小は経営環境の厳しい地方銀行にとって金融緩和の副作用を強めかねない。

早晩、経済の正常化でコロナオペの残高が減れば「マイナス金利政策の影響を軽減する埋め合わせが必要になる」。日銀内ではこんな見方がささやかれている。

そこでコロナオペの後継に浮かぶのが気候変動対応に向けた「グリーンオペ」だ。金融機関に積極的なグリーン融資を促すため、新たな上乗せ金利を与えるといったインセンティブをつける案も想定される。日銀は成長分野への貸出支援制度で環境・エネルギー事業にも資金を出しているが、対象がグリーンかどうかは選別していない。

グリーンオペは日銀が金融緩和を続ける上でも大きな論点だ。日銀は金融政策の運営方針で資金供給量の拡大継続を明確に約束しており、コロナオペの後継政策を用意する議論はいずれ必要になる。

「行き詰まった金融政策から目をそらすのが狙いではないか」。国際的に気候変動をめぐる議論が白熱するなか、日銀として緩和継続の秘策にしたい思惑も透ける。

(南毅郎)

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