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「45歳定年」も怖くない 自分への投資はコスパよし

「学び」とお金(2)

今月のテーマは「学び」と「お金」の関係です。今週はここしばらくの間、大きな話題となっている「45歳定年」というトピックを絡めながら考えてみたいと思います。

騒動起こした「45歳定年論」

サントリーホールディングス(HD)の新浪剛史社長が「45歳定年制にして個人が会社に頼らない姿勢が必要だ」と提案したことで、「45歳定年」という言葉が独り歩きを始め騒動になりました。ネットでも議論が続いています。

法律論でいえば、そもそも会社が「45歳定年」を実施することは不可能です。日本の法令では60歳より若い年齢を強制的な退職年齢と設定することは認められていないからです。

新浪社長自らが釈明をしていますが、定年年齢の法改正を希望しているわけではなく、45歳という年齢は長い人生におけるビジネスキャリアのほぼ中盤のタイミングにあるため、一人ひとりが残りのビジネスキャリアのありかたについて考えるべきタイミングである、と問いかけたわけです。

そもそもサントリーHDは65歳定年制を採用しており、むしろ高齢期雇用に先駆的です。また、以前から自由選択定年制ということで、早期退職に対するペナルティー(退職金のカット)を行わないアプローチを採用しているそうです。これは日本の退職金制度としてはむしろ異端的な取り組みです。

つまり、長く働くこともできる一方で、早く辞める道にも門戸を開いてきたのが同社の取り組みです。社員を軽んじる会社と批判する多くのネットの言論は当たらないように思います。

私はむしろ、「学び」とキャリアがどうつながっていくかを問いかけるよいきっかけと捉えたいと考えます。

45歳で独立しても稼げる自信はあるか

私自身の話になりますが、30歳で独立開業をすることになりました(自分としては希望していなかったタイミングでしたが)。独立してみると会社員であったときに稼いでいた年収を維持するのがいかに大変かということを痛感しました。

何より大きいのは、自分の給与以外の諸経費も稼がなければいけないこと(オフィス賃料からパソコン代、交通費も自己負担)、安定的に売り上げを立て続けるのが難しいこと(月10万円を売り上げる月もあれば月100万円の月もある)、の2点です。ボーナスを自分に支給することも大変です。

独立開業は、自分に毎月10万円の給料を払うことすら苦労するところからスタートです。

会社の看板(ブランド)で商売することができず、自分の身一つで評価を受けて仕事をもらわなければならない苦労もあります。大企業で働いた人ほど、自分のバリュー以上に会社のブランドの大きさを痛感することになります。

あなたは、45歳まで積みあげてきた自分の年収を、身一つで稼ぐ自信はあるでしょうか。あるいは、今よりももっと高い収入をもらう価値のある人材に成長していく自信はあるでしょうか。

もし、それが難しいと感じるのならその理由を見極め、欠けているスキルや知識を学ぶ必要があるかもしれません。

45歳までに自分のキャリアパスを形作るのが「学び」

45歳以降の働き方はいくつかあります。

同じ会社で管理職になる道があります。そのためには今までとは異なる知識・スキルが必要になります。専門職で高い評価を受ける選択肢もあるでしょう。この場合は突き抜けたレベルの専門性獲得が必要です。

あるいは同じ会社で管理職や役員になる道は選ばず、働き続けることもできます。まじめに働く限り、会社はむやみにクビにすることはできません。しかし20~30歳代の後輩と同じ仕事、同じ責任で働く限り、あなたの年収も彼らと同等にとどまることになります。

違う会社に転職をする道もまだあります。転職の限界は30歳といわれていたような時代は過去のこと。能力を評価してもらうことさえできれば違う会社でチャレンジすることもできます。面接であなたという人材を高く評価してもらう力があれば年収もアップするかもしれません。

独立する道もあります。すべての売り上げが自分のものとなる代わりに、営業から総務の仕事までひとりで行い、すべての責任を抱えます。起業する仲間がいればそれも選択肢です。

いずれにせよ、あなたが進みたいと思う道に見合うだけのあなたの能力が必要です。これは一朝一夕につくものではありません。45歳になって慌てて学ぶのではなく、それまでの時間をどう学び過ごしてきたかが問われます。

20代・30代は「お金をかけて知識を買う」意識を

マネープランというと節約の重要性や投資などの資産運用スキルが語られがちです。しかし、あなたの人生を通じて考えると「学びにお金をかける」という選択もまたマネープランの収支を大きく変化させる要素です。

特に若いうちの能力開発は、思った以上に効果をもたらすことがあります。学びに投じたお金が何十倍、あるいは100倍以上のリターンを生み出すことがあるからです。

20代の後半で20万円の資格取得費用を払ったとします。そのときはかなりキツい支出かもしれません。しかし、転職をしたとき年50万円の年収増の価値を生み出したとすれば、その後の生涯賃金ベースでいえば、1500万円以上の価値を生み出すこともあります。十分に元が取れます。

お金の「運用」として考えると、自分という資本の価値を高めるお金は、コストパフォーマンスが高いわけです。マネープラン的にはこれは無駄な支出ではなく価値ある「投資」といえます。

「45歳定年」を怖がる人は、ぜひ学びにお金を使ってみましょう。うまくいけば、業務に関連する資格であれば会社が学びにかかる費用を補助してくれたり、研修機会そのものを提供してくれたりすることもあります。資格給の対象となり、給与アップに直結することもあります。

私たちは、「45歳定年」という言葉を聞くとつい身構えてしまいますが、自分の未来を見据えることで自分はどう学んでいくかを考える危機感やビジョンを手に入れることができるのではないでしょうか。

さて、来週は近年注目されている学びのキーワード「リカレント教育」「リスキリング(再教育)」について個人の目線から考えてみたいと思います。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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