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急落の裏で実用性高まる仮想通貨 メタバース上の活用も

紙幣や硬貨に取って代わる? お金の未来最前線(中)

デジタルマネーの最新トレンドを探るシリーズの2回目は暗号資産(仮想通貨)を取り上げる。米国の金融引き締めやロシアによるウクライナ侵攻を受けて、足元でビットコインなど仮想通貨の価格変動リスクが高まっている。一方、世界では仮想通貨を決済手段や法定通貨にする動きも出ている。ビットコイン以外の通貨にも注目だ。

足元で仮想通貨のビットコインが不安定な値動きを見せている。投資家が悲観に傾き、持ち高を落とす動きが出ているからだ。一方、世界では仮想通貨の利用が拡大。ビットコインを法定通貨として採用する国も現れ始めた。金融機関やインターネット企業の一部では、仮想通貨事業への参入が相次ぎ、「仮想通貨は投機対象」という常識は変わり始めている。

ビットコイン相場は世界的な金融緩和によるカネ余りを背景に上昇し、2021年11月には1ビットコイン=6万8000ドル台の最高値を付けた。だがその後は、米国による金融引き締めやロシアによるウクライナ侵攻を受けて、投資家の間でボラティリティー(変動率)の高い資産の持ち高を落とす動きが強まり急落した。

暗号資産の交換業を手掛ける楽天ウォレットの松田康生シニアアナリストはビットコインの先行きについて、「米連邦準備理事会(FRB)は金融引き締めによりインフレを抑制し、景気をソフトランディング(軟着陸)させようとするが、インフレを止めるためにはハードランディング(硬着陸)が不可避だ」と指摘。一度底入れする可能性に言及する。

ビットコイン価格のメインシナリオについては、年末に3万ドル(約390万円)を付けると予想。その後は大きく値を戻し、4年に1度、ビットコイン業界を支えるマイナー(採掘者)の報酬が半減する「半減期」の翌年25年には、10万ドル(約1300万円)を付けるとみている。半減期は、新規の供給量が減ることで需給の引き締まりなどが意識されやすい。

決済や法定通貨に応用

そんな中、国内外では仮想通貨を利用する動きが相次いでいる。米ゴールドマン・サックスは3月、米金融大手で初となるビットコイン関連のデリバティブ(金融派生商品)の相対取引を実施。国内では同月、岡三証券グループが対面証券で初めて仮想通貨のCFD(差金決済取引)の取り扱いを開始した。米決済大手ペイパル・ホールディングスでは既に、仮想通貨が決済に使われ始めている。

また、中米エルサルバドルが、21年9月からビットコインを法定通貨の一つとしたことは記憶に新しい。22年4月には、中央アフリカの議会でビットコインを法定通貨とする法案が可決された。法定通貨化の2カ国目だ。

アフリカでは仮想通貨が個人や企業の間での送金や決済などで使われ、利用者数は急増。暗号資産交換業のFXコインの大西知生社長は、「仮想通貨は、次世代通貨の有力候補の一つだ」とみている。

メタバースへの参入も

もう一つ、仮想通貨の活用期待が高まっているのは「メタバース」だ。メタバースとはインターネット上の仮想空間を意味する。オンライン上に創り出されたこの3DCGの仮想世界でユーザーは、あたかもネットワークの中にいるかのようにアプリケーションを動作できる。21年10月末に、米国の旧フェイスブックが「メタ・プラットフォームズ」に社名を変更し、メタバースの領域に100億ドル(約1兆3000億円)を投じる方針を示したことがきっかけで、一気に認知度が高まった。

代表例が「ディセントラランド(Decentraland)」や「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」などのプラットフォームだ。これらは暗号資産イーサリアムのブロックチェーン技術を基盤に作られたゲームで、ユーザーはメタバース上に自身のアバター(分身)を投影し、その中で自由に行動することができる。

例えば仮想空間上の土地である「LAND」を購入・レンタルすることで、コンテストやイベントを開催したり、アイテムを作成し、売買したりすることができるという具合だ。LANDやアイテムはNFT(非代替性トークン)として所有権が明確化されており、希少性が高い。これらの取引の決済に独自の仮想通貨が使われる。ディセントラランドがMANA、ザ・サンドボックスがSANDだ。

海外ではイタリアの高級ブランド、グッチや独スポーツ用品のアディダス、国内では東京・渋谷でファッションビル「SHIBUYA109」を運営するSHIBUYA109エンタテイメントなどがLANDを相次いで購入したことが話題となった。地球上に存在しない、仮想空間上の土地でありながら、億円単位の値段で売買されるといった異様な盛り上がりが足元で見られている。

仮想通貨の成長余地に期待

日本メタバース協会の代表理事でもあるFXコインの大西氏は、「今後、より多様で大規模な経済活動がメタバース上で行われるようになるとみられ、価値の移転手段として仮想通貨の重要性は増していきそうだ」と分析する。

仮想通貨はブロックチェーン(分散型台帳)技術を用いて、その取引が記録される。代表的なビットコインをはじめとして、国家や企業のサーバーに中央管理されずに利用者同士が情報や経済価値をやり取りする分散型のウェブ3(ウェブ3.0)型サービスが多い。

「大手プラットフォーム企業が主導する現在のインターネット(ウェブ2.0)の世界は今後、ウェブ3に置き換わっていく」(大西氏)。メタバースがもたらす仮想通貨の成長余地に期待が高まりそうだ。

(井沢ひとみ)

[日経マネー2022年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年7月号 ウクライナ危機後も続く ニューノーマル相場に勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/5/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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