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長期投資を起点に日本経済を動かそう

積立王子への道(34)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

日本は経済成長から取り残されてしまったんだ

高度成長期を終えた日本は1990年代後半からデフレに苦しむ。21世紀に入ってもずっと経済成長できない状態が続いている。長いこと経済が成長しないということがどんなに悲しいことか――。世界経済の規模は2000年の約34兆㌦から20年間で約84兆㌦へと拡大したのに対し、日本経済の規模はほぼ横ばいだ。世界の人々がこの間、平均で2.5倍近く豊かになったのに対し、日本人は置いてけぼりを食ったことになる。かつて世界有数の高水準を誇った日本の1人当たりの所得も、今では先進諸国下位レベルにまで下がり相対的に貧しくなったんだ。それもこれも「経済が成長しないから所得が増えない」という悪循環が続いたことに尽きる。

金融所得を起点に経済の歯車を回そう

一方で2人は既にコツコツと長期の積み立て投資で世界経済の成長を養分としながらお金を育てている。他の多くの日本の生活者も君たちのように長期投資に動いたとしたらどうだろう? 元気な世界経済の中で、元気に働くお金が育ち、そのリターンはやがては金融所得という形で自分に返ってくる。

所得が増えれば人は相応に消費する。消費が増えるに従って、製品やサービスを提供する国内産業界は活性化し、売り上げが増えて利益も回復するだろう。かくして国内企業の業績が成長を取り戻せば、従業員の給与も上がり、それはさらなる消費拡大へとつながる。消費以外に再び長期投資へと回るお金も増えるだろう。するとまたお金は育ち、金融所得として戻ってくる。それが再び消費に回り、長期投資に向かい……。かくして「給与+金融所得」がダブルで増えていく経済メカニズムが動き始めるんだ。

現預金1000兆円は経済再生の最強資産だ

発展途上の経済の場合、消費は盛んになっても金融資産のストックが積み上がるまでには間がある。だが日本は、とっくに高度経済成長を実現して先進国となって久しい。その過程で国民は膨大な預貯金をストックとして積み上げてきた。それが我々生活者が有する1000兆円規模の現預金、いわば眠れる資源だ。産業界が低迷し給与所得が増えない状況下でも、このストックを生かし長期投資マネーとして経済の中で働くお金に置き換われば新たに莫大な富の創出につながる。日本経済の再生を実現可能にする最強の資産なのだ。

キミたちのように自ら気付いて行動する人がどんどん増えていけば、生活者主導の長期国際分散投資が社会的ムーブメントになる。そうしたお金の循環によって育ったお金が、おのずと消費や再投資に向かい経済成長を支え、生活者の持続的な所得増加となって、日本経済に拡大再生産を繰り返す自律的なサイクルがビルトインされる未来が訪れる。

高度な成熟社会となった日本で、自分自身が仕事をすると同時に自分のお金にも元気に働いてもらうという行動文化が社会に定着すれば、今後もそれなりに豊かな国であり続けることができるのだよ。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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