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検査・考査を一体運用 地方に広がる監視の目

桜が咲き始めた3月中旬、日銀内には安堵の空気が広がっていた。金融庁と議論を重ねてきた検査・考査の一体運用で、2021年度以降の方針がまとまったからだ。担当する金融機構局の幹部は「前向きな内容に落ち着いて良かった」と語る。

金融庁検査と日銀考査の連携強化の議論は自民党の提言に背中を押される形で加速した。「金融庁と日銀の縦割り打破」という題名で、同党金融調査会などが20年10月に政府へ提言した。かねて二重行政と言われてきた検査と考査の重複を省き、金融機関の負担を減らすと同時に効率的な調査につなげるのが狙いだ。

日銀と金融庁は同年11月に専門組織を立ち上げて検討を重ねてきた。今回の話が政治サイドから持ち上がったとき、日銀内には「組織の見直し論にまで発展するのか」と身構える声もあった。考査も検査も金融機関への調査という点では同じだからだ。

銀行法に基づく監督権限を持つ金融庁の検査に対し、日銀の考査はあくまで金融機関との契約に基づく。資産査定が中心という違いはあるが、本気で一体運用しようとすれば双方の部局の統合も選択肢になり得る。実際は組織改編には踏み込まず、各業務で連携を深めるという穏当な結果に落ち着いた。

21年度からは早速、メガバンクなど大手行への日銀考査の時期を柔軟に見直すほか、報告資料の一元化や削減に取り組む。自民党の「脱・縦割り」の提言に沿った内容だが、目を引くのが地域金融機関への対応だ。

日銀と金融庁で検査・考査の実施状況や計画、リスク認識などの情報を共有し、作業も分担することにした。ある金融庁幹部は「地方銀行や信用金庫で日銀も金融庁もきちんと行けていないところが一定数ある」と明かす。

近年、金融庁はテーマを絞った検査に重点を置くが、数の多い地域金融機関すべてはカバーできない。連携強化でマンパワーを補い合えば、より網羅的な金融機関経営の監視につながるというわけだ。

金融当局には苦い教訓がある。投資用不動産向けの不正融資問題で揺れたスルガ銀行に対する14年と18年の考査で、同行は虚偽の情報を提出するなどの違反行為をしていた。「検査・考査を網羅的に進めることで、隠れた問題があぶりだされるのでは」。金融庁や日銀には、監視の目がより広く行き渡ることへの期待感と、それによって様々な問題が浮き彫りになることへの警戒感が入り交じる。

コロナ禍の影響が残り、金融機関の検査・考査も当面はオンラインでの対応が中心になる。不良債権予備軍の積み上がりなど金融機関の経営を揺るがすリスクは蓄積しつつある。脱・縦割りの成果は早々に問われることになる。

(南毅郎)

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